2001年放送
「終生、青年客気の人」 文・高津流々斎
広岡達朗という人は不思議な人だ。行く先々でトラブルを起こす。では、いわゆるトラブル・メーカーのタイプかというと、そうではない。むしろ、反対に品行方正、練習熱心、野球に対する情熱ときたら、まず非の打ちどころがない優等生なのだ。
問題があるとすれば、あまりに強烈な野球に対する情熱の故に、自分も妥協しないかわりに、他人の妥協も許さない、その厳しさなのだ。
(中略)
「巨人打倒」の宿題を達成し終えたとき、広岡達朗は初めて成熟するのだろうか? 私は否と言いたい。彼は死ぬまで成熟はしない。良くも悪くもこの男は、終生、青年でありつづける運命にあるかのようである。
ーSports Graphic Number 71号