“はたち”を迎える人が生まれた2003年には、サッカーワールドカップが日本と韓国で共同開催され、小泉純一郎氏が日本の総理大臣として初めて北朝鮮を訪問。プロ野球読売ジャイアンツの松井秀喜がメジャーリーグに移籍。教育の面では、公立の小・中・高校が完全週5日制の「ゆとり教育」がスタートした年でもあった。あれから20年、式典に参加した新成人は今どんなことを考えているのか?胸を内を探った。
◆親思いの心優しい「ド派手」新成人
成人年齢が18歳に引き下げられたことを受け、ほとんどの自治体が「成人式」の名称を「二十歳の記念式典」や「二十歳を祝う会」などに変更した。ただ式典の中身はどこもこれまでと同じようだ。
「混ざり合ってキャラメルスパイシー!俺らはクレイジー♪」
毎年、ド派手な衣装が話題となる福岡県北九州市。今年も一部の新成人が個性的で豪華けんらんな着物を披露した。
新成人「(Qこれなんですか)マイメロちゃんです。うさぎ年やけん、着けました!キラキラしてたいです」「真っ赤っかが好きなので赤で統一しました」「2人あわせて風神雷神みたいなもの」「筋が通った大人になりたい!」
ド派手な衣装を一手に引き受けているのがレンタル衣装店の「みやび」。今年も早朝から多くの若者が着付けを行った。中でもひと際目立っていたのが羽衣付きの赤い衣装に身を包んだ八田宗一郎さんだ。力を注いだのは、赤いモヒカンだという。
八田さん「だれよりも派手にしてくれとお願いして、こうなりました。(Qこの髪型で寝られる?)寝られないんですよね、枕を5つぐらい胸に押し当ててうつ伏せで寝ました」
◆セットした髪型は崩せない、5段重ねの枕を用意
睡眠時間を削ってまでこだわった晴れ着姿。八田さんには、式典の前に自分の姿をどうしても見せたい人がいた。20年間育ててくれた両親だ。3人きょうだいの末っ子として育った宗一郎さん。大人への節目となったこの日、感謝を込めた手紙を用意していた。
八田さん「うるさいとかうざいと思ったときもあったけど、心配してくれてありがとう。最近は釣りも行けてないし、暖かくなったら行こうね。今度2人で飲みに行こうね」
八田さんの口から語られる“感謝”の思いを聞きながら、両親の目には涙が浮かぶ。
八田さん「母さん、毎日仕事の時に弁当を作ってくれてありがとう、迷惑ばかりかけてごめんね。まだまだ未熟なオレだけど、頑張っていきます。自慢の父と母です。宗一郎より」
「大きくなったな!」顔をくしゃくしゃにしながら、父親は満面の笑みをうかべた。母親も「はじめて手紙をもらったから」と目頭を押さえた。
◆「食費が気になる」物価高を憂う新成人
民法の改正により去年、成人年齢が18歳に引き下げられたため今年度は18歳、19歳、そして20歳の人たちが新成人になる。ただ、受験や就職の負担などを考慮して、福岡県内のすべての市町村はこれまで通り20歳になる人だけを対象に式典を開催した。両親への感謝は、どの年も共通していそうだが、今年は“憂い”もトピックだ。はたちとしての決意をあらたにする中、若者が直面しているのが「物価高」だ。
北九州市の女性「自炊をしているんですが、食費とか気にしちゃう。なるべく安い物を買えるように近くのスーパーのチラシを見ています」
北九州市の男性「物価が上がり買いたい物も買えないので大変です。陸上の靴とか」
福岡市の女性「生活のためにバイトもしているので、物価が上がると困りますね。経済的な支援があれば一人暮らしの大学生にとってはありがたいです」
歴史的な物価高に加えて、学生生活や社会人になるタイミングで、新型コロナの影響を受け続けてきた「はたち」の若者たち。今後やりたいことや目標を尋ねた。
北九州市の女性「いっぱい旅行に行きたいです。コロナも収束してきているので海外に行きたいです」
北九州市の男性「将来の夢に向かって勉強を頑張りたいと思います。作業療法士になりたいです。そのほかは、お金をためて親孝行します。20年間育ててくれたので何かプレゼントできたらいいですね」
福岡市の女性「将来はバイヤーになりたくて、世界を股にかけられるように勉学に励みたいと思います」
感謝、夢、そして憂い。新成人から語られることはいつも世相を映している。