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ボイスドラマ「ともだち」

K's Books 1 4 days ago
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『ともだち』は、友情と信念が交差するサスペンスドラマです。 高校時代、互いを支え合い、競い合いながら青春を駆け抜けた二人の少女——エミリとミア。 しかし、異なる道を進んだ彼女たちは、運命のいたずらによって、敵対する立場へと追い込まれていきます。 環境保護という大義のもとに立ち上がったミア、 国際社会の秩序を守るために戦うエミリ。 彼女たちの友情は、理想と現実の狭間でどんな選択をするのか。 本作では、環境問題や国際情勢のリアルな側面にも触れつつ、 「ともだち」とは何か、 「信念を貫く」ということが何を意味するのかを問いかけています。 友情は、どこまで続くのか? もし、親友と対立する日が来たら——あなたなら、どうしますか?(CV:桑木栄美里) ※エイミー(AMI)はフランス語で「ともだち」、ピリカはアイヌ語で「美しい、可愛い娘」 【ストーリー】 ■SE/陸上のトラックを走ってくる音〜観客の声援 「エミリ、お願い!」 「ミア、まかせて!」 高校最後の400mリレー走。 アンカーの私は、第3走者のミアからバトンを受け取る。 スタートで出遅れたが、ミアが巻き返して2位で私につないだバトン。 「エミリ、がんばって!」 ■SE/大歓声 「やったぁ!」 勝った・・・ 卒業前の大会を優勝で飾れたのはミアのおかげ。 いや、私とミアの友情だ。 ミアと私は、陸上部の長距離ランナー。 トラックの上で3年間、競い合ってきた。 私たちは、顔も身長もよく似ている。 まるで、鏡に写した分身のように。 負けず嫌いの性格も、好きなスイーツも同じ。 学校でも私生活でも、いつも一緒に過ごす、大親友だった。 私の名前は、「美」が「栄える」と書いて、エミリ。 ミアの名前は、「美」と「愛らしさ」を併せ持つ。 名前にも通じるところがあるのが嬉しい。 だが、卒業後は別の道を歩く。 ミアは北海道の大学へ行き、獣医になる勉強を。 私は沖縄の大学へ行って、国際社会を動かすスペシャリストを目指す。 2人とも大好きな高山を離れるのは辛かったけど、 お互いの志を、お互いにリスペクトしていた。 「エミリ、はなればなれになってもずうっと友だちだよ!」 「あたりまえじゃない、ミア。たとえ会わなくたって一生友だちだから!」 やがて季節が変わると、私たちはそれぞれの大学へ旅立っていった。 ■SE/飛行機の離陸音 私の前を5回目の冬が通り過ぎていく。 大学を卒業するまで、私は一度も高山へ帰らなかった。 それでも、ミアとの関係は変わらない。 毎週のようにLINEで近況を報告し合った。 だから彼女の活躍も手に取るように理解できる。 卒業後、私が就職した場所は、アメリカ。 大きな声では言えないが、在学中にスカウトされて、CIAに入職したのだ。 とはいえ、CIA(米国中央情報局)の職員になるのは簡単ではない。 まず、四年制大学を卒業すること。 私が学んだ大学は、5年一貫制の博士課程を持つ。クリア。 修士号の取得を検討すること。 同じくクリア。 母国語以外に複数の外国語をマスターすること。 私は高校時代から外国人観光客向けに4か国語で通訳をしていた。クリア。 CIAの業務に関連した経験を積むこと。 私ではなくCIAの方からオファーされたのだから、クリア。 最後の難関は、アメリカの市民権を持っていること。 これも、CIAから現地採用職員という形にしてもらって、クリア。 ということで、私はいまアメリカのラングレーに住んでいる。 仕事は、主に環境テロ対策。 ミッションは機密だが、私が大学のときに作ったAIプログラムを動かしている。 私のAIプログラムが探り当てた、もっとも過激な環境テロリスト集団。 彼らは、街の環境を守る、という名目で実際には破壊活動をおこなう。 すでに何人もの犠牲者も出ている。 リーダーはわかっているが、奴は決して表舞台には出てこない。 代わりに最前線で活動するテロリストは「ピリカ」。 最近よく耳にする名前だ。 国籍も性別も不明。 この「ピリカ」が、いま最も重要なターゲットになっている。 今回わかった、彼らの目標は、なんと、日本。 ということで、ミッションリーダーは私になった。 私は日本人であることを悟られないように、コードネームを与えられる。 「AMI=エイミー」 フランス語で「友だち」という意味だ。 一刻も早く、環境破壊が問題になっているエリアを探り当てないといけない。 海洋廃棄物で汚されている浜。 開発で生態系が破壊されている街。 化石燃料エネルギーで大気が汚染されている都市。 どこだ。 推理が行き詰まっているところへ、アラートが入った。 「ピリカ」に関する貴重な情報だ。 国籍は日本、性別は女性。 !? なぜだかわからないが、意味不明な悪寒が走る。 そもそも、「ピリカ」という言葉の意味は? アイヌ語で「美しい」「可愛い」・・・ 環境テロリストに似つかわしくないな。 いや、むしろ、皮肉で名付けたのか。 「美しくて」「可愛い」・・・ 「美」「愛」・・・ そんな・・・まさか。 私は、先週届いたミアからのLINEを読み返す。 「エミリ、元気? 今度久しぶりに高山へ帰るよ。 槍ヶ岳の澄んだ空気。 奥飛騨温泉の透明なお湯。 宮川に泳ぐ錦鯉。 みんな変わってないといいなあ」 絵文字つきで、ミアらしい文章が並ぶ。 そうか、ミアもずうっと北海道から帰ってないんだ。 北海道・・・ まさか・・・まさか・・・ 私はいてもたってもいられず、帰国の準備をする。 とにかく、高山へ。 CIAの専用ジェットを予約した。 ■SE/飛行機の離陸音 中部国際空港セントレアからは高速で高山へ。 景色が白い山に変わってくる頃、タイヤがパンクした。 狙撃? そんなはずないよね。 私が高山へ行くことなんて、誰も知らないんだから。 違う。 1人だけ知っている人間がいる。 昨日ミアにあてたLINE。 「ミアも元気?私も近いうちに高山へ帰るから」 「ホント!?超絶久しぶりに会えるかもだね!楽しみ〜」 違う。違う。 ミアには日程なんて教えていないし、 第一、環境テロ組織が高山を狙うなんて考えられない。 それに、ミアはピリカじゃない! ■SE/サイレンサーの銃声 え?いまのなに? ドライバーは銃弾が防弾ガラスに当たったという。 ちょっと待って。 奴らの目的は高山なの!? どうして!? そうか・・・ もしかして・・・ タブレットにインストールした私のAIプログラムを起動する。 やっぱり・・・ 高山がターゲットエリアなわけじゃないんだ。 高山に環境関係の政府要人が秘密裏に来訪している。 実際に政府を動かしている官僚トップだ。 ■SE/ブレーキの音 奴らの目的に気づいたとき、 私が乗ったクルマは、3台のミニバンに取り囲まれていた。 ここはもう高山市内。 テロリストたちは私たちを手際よくミニバンに移動させ、目隠しをした。 視界が開けたのは、どこかの地下室。 時間的に考えても高山市内なのは間違いないだろう。 私と、CIAの仲間、そしてその横に政府要人とSPが椅子に縛られている。 目の前には狐の面をかぶった環境テロリストたちが並ぶ。 その数4人。 彼らは一斉に面をはずした。 黒人。ヒスパニック系。白人。そして・・・ 「ミア!?」 「残念ながら、ミアじゃなくて、ピリカだよ」 「ピリカ・・・」 「久しぶりだね、エミリ。いや、エイミー」 「・・・」 「こんな形で再会したくなかったけど、これも運命なのかも」 「どうして・・・」 「高校卒業のときにお互い誓ったじゃない。 あなたは国際社会を動かすスペシャリスト、私は獣医になるって。 だからなったのよ」 「え・・・」 「地球のお医者さんに」 「そんな・・・」 「北海道でアイヌの人にいろいろ教えてもらったわ。 彼らは自然と一緒に生きているから」 「それでピリカ・・・」 「私はアイヌの生活を守るために環境活動をしたの。 そのとき、このグループにスカウトされたのよ」 「ピリカ、いや、ミア・・・こんなこと、もうやめようよ」 「やめないわ。やめたらこの美しい街も、高山の自然もいつか消えちゃう」 かたわらで、CIAの仲間が私に目配せをする。 これ以上しゃべるな、と。 そう、テロリストが自身の素性を語るとき、その相手には死が待っている。 死を覚悟したとき、地下室の扉がこじあけられ、武装した集団がなだれ込んできた。 こいつらは!? ピリカがうろたている。 「なんで!?私が指揮をとるんじゃないの!?」 「ミア!」 「だましたのね!」 ミアの仲間、3人が次々と銃弾に倒れた。 私はミアと政府要人をかばって応戦する。 CIAだもの。当然、銃は持っている。 「ミア、ふせて!」 私は柱の影から銃を撃つ。 残りは? あと3人。 予備のカートリッジはない。こっちが不利だ。 ■SE/サイレンサーの銃声 CIAの仲間が凶弾に倒れた。 同時に私の銃も彼らを撃つ。 あと2人。 一息つく間もなく、私の頬を銃弾がかすめた。 ミアの手をひき、陸上で鍛えた足で柱の影に走り込む。 ふりむきざまに、 ■SE/サイレンサーの銃声 よし、あと1人。 そう思った瞬間、後ろに回り込まれる。 あっと思ったときには銃口が背中に突きつけられた。 私は両手をあげる。 ゆっくり振り返ると、環境テロのリーダーが不敵に笑みを浮かべていた。 日本へ来ていたのか。 リーダーはピリカの名を呼び、ミアを自分の方へ呼び寄せる。 「ミア、最初からそのつもりだったの?」 リーダーの指が引き金に力を入れる。 その瞬間、ミアは私をかばってリーダーに体当たりした。 体勢を崩したリーダーはそのままミアを撃つ。 「ミア!」 私は、最後の弾をリーダーに撃ち込む。 その生死を確認してから、ミアを抱き抱える。 「ミア!しっかりして!」 「やっぱり・・・アンカーはエミリだね・・・」 「もうしゃべっちゃダメ!」 「エミリ、最後のバトン。渡すわ」 「しゃべるなって言ってるでしょ!」 「アイヌも・・・沖縄も・・・救ってよ・・・」 「わかったから!」 「エミリと過ごした時間、夢だったのかな・・・」 「夢なんかじゃない!」 そして、ミアの鼓動が消えた。 柱の影で腰を抜かしていた政府要人とSPは立ち上がって外へ逃げ出す。 その後ろ姿を見ながら、ミアを抱きかかえる。 「ミア、バトンはしっかり受け取ったわ・・・」 私はミアの顔にハンカチをかけて、地下室をあとにした。

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