神宮外苑再開発では、木を伐る、伐らないという問題が注目されています。
樹齢の高い高木には役割があるので、簡単にこうした樹木を伐ることはあってはならないことですが、
その前提として考えていただきたいことがあり今回の提言となりました。
そしてこの問題は、明治神宮や都市部だけでなく流域全体で考えていく必要があります。
甲武信岳(こぶしだけ)を中心とした秩父山地から東京湾までを一つの“流域”という視点でみたときに、
明治神宮はこの流域の“扇の要(かなめ)”のような位置にあり、
明治神宮エリアのあり方が広域的に大きな影響を与えます。
奥山から都市部、そして海まで続く流域の “脈(みゃく)” 機能は、
人の体に例えると血管や神経網のようなもの。
この重要な脈機能が、開発によって分断や閉塞を起こし、
呼吸不全のような状態になっているのです。
自然は本来どういう息づきをし、連動して命の循環を成しているのか。
一木一草(いちもくいっそう)の植物たちが担っている循環の機能を
社会全体で一刻も早く見直したいのです。
全国各地の数百の現場実践・実績から見えてきた“脈(みゃく)”の機能の重要性を説き、
「大地の再生」技術を体系化しながら、40年以上活動を続けてきた矢野智徳による提言です。
明治神宮の内苑と外苑の成り立ち:
明治天皇崩御1912年(明治45年)のあと、京都の伏見桃山の陵墓とは別に、
国民の要望によって建設が決まった明治神宮御社殿とともに、
“永続する自然の森”を目指してつくられた人工の森林と、緑地帯。
「神宮の森」と呼ばれる内苑(造苑1915年〜1920年)と、
いま、約1000本の樹木伐採計画で問題になっている外苑(造苑1918年〜1926年)は
対でつくられました。
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矢野智徳(造園家、環境再生医、一般財団法人杜の財団 代表理事)
進行:中村陽子(特定非営利活動法人メダカのがっこう 理事長)
撮影・音響協力:ウエダタカユキ
【用語解説】
●グライ土壌…有機ガスの溜まる土壌層
●脈…水脈(天然水路網や人工水路網)、気脈(空気の通り道)、気水脈(空
気と水の通り道)、通気浸透水脈(地上と地下を気水脈が繋がり循環するよう
に施行した脈機能)などの総称
●安息状態…地上と地下の本来の空気と水の循環の状態
●しがらみ構造…地上の枝葉と根っこにある、安息状態を生み出すための自然
本来の構造
●赤道…人道
●青道…空気と水が共に循環する水脈
●結…人と人、人と自然が、協働し連携すること
●活着…さし木・移植などした植物が、根づいて生長し続けること
●細根…根系の先端部にある細い根
●発根…根が出ること
●グランドカバー…有機資材を用いて地面を覆うこと
●恒温(こうおん)機能…温度が一定に保たれる機能
【配信内容】
0:00 オープニング
4:10 大地の呼吸不全とは?
10:07 コンクリートで仕切られた大地の中で何が起きているか?
11:47 コンクリートに塞がれた場所で本来の循環機能を取り戻すには?
14:30 流域生態系の視点から、神宮外苑の樹木伐採問題をどのように捉えているか?
23:42 神宮外苑、内苑の傷み方の現状と流域全体に及ぶ原因
35:00 私たちは何をすればよいのか? 樹木の役割と機能とは?
48:30 結の復活ー井の頭公園での取り組み
56:00 能登震災後の水脈整備の取り組み
1:01:20 国立第二小学校樹木移植工事から見えてきた神宮外苑に繋がる可能性
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■一般財団法人杜の財団
https://morinozaidan.com/
■大地の再生 結の杜づくり
https://daichisaisei.net/
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