福岡市中央区の福岡城跡で公開されている「幻の天守閣」。ライトアップによる期間限定の試みですが、この天守閣を実際に復元しようという議論が地元の財界を中心に活発化しています。そもそも福岡城に天守閣はあったのか、そして再建する必要はあるのか意見が分かれています。
観光PRのための「幻の天守閣」天守閣の復元めぐり議論活発に
暗がりに煌々と輝くのは、福岡城の天守台の上にパイプを組み立てて作ったイルミネーション、「幻の天守閣」です。福岡市が福岡城の観光PRのため、約6250万円の事業費をかけて今年初めて行ったもので、5月31日まで見ることができます。
そもそも福岡城の天守閣はあった?見解が分かれる
そもそも福岡城に天守閣はあったのか、研究者の間でも意見が分かれています。
1646年に福岡藩が幕府に提出した「福博惣絵図」には、「天守台」としか書かれておらず、天守閣が存在していたことを直接的に示す史料は見つかっていません。
その一方で「天守閣はあった」と主張する歴史学者もいます。九州大学 丸山雍成名誉教授「福岡城の天守閣は江戸時代・慶長から元和まではあった。元和に壊した」天守閣があったとされる根拠の一つが、福岡藩の初代藩主・黒田長政が家臣に宛てて書いた手紙。今も残る書状で、福岡城の天守閣の欄干が腐ったことを報告していることが確認できます。このほか、「黒田長政が天守を取り壊すと語った」と記された史料など、天守閣の存在をうかがわせるものが複数見つかっています。
九州大学 丸山雍成名誉教授「当時の史料でお城のことを触れているのに天守閣がどうしてなかったのかということを証明するほうが苦しい」
天守閣「復元」に向け議論を始める財界
天守閣の「復元」に向けて、福岡商工会議所は今年3月から有識者などを集めて懇談会を開催しています。今後、市民にアンケートをとるなどして、議論を活発化させたい考えです。福岡城天守の復元的整備を考える懇談会 谷川浩道顧問「心のより所というのは郷土愛、誇りを生み出す大きな契機になる。福岡は城跡がありながら、ずっと空き地のままになっている。広大な敷地をいつまでも空き地にしといていいのだろうかと」
全国で再建された天守閣いくつかの種類
昭和以降に再建された天守閣には、いくつかの種類があります。
・史料に基づいて建てられた「復元天守」
・小倉城のように史料が少なく、正確に復元されていない「復興天守」
・唐津城のように、もともと天守閣がなかった城や存在が確認できないまま建てた「模擬天守」です。
文化庁はこれまで、「復元天守」について絵図や写真などの精度の高い史料がなければ、認めていませんでした。
しかし、2020年に基準を緩和し、外観や構造の一部が分からなかった場合でも、それを明示すれば、「復元」に準じる「復元的整備」として、再建を認めることにしたのです。
史料が足りず復元は難しい
ただ、城の整備に詳しい専門家は、福岡城の天守閣の復元は、「史料が足りず非常に難しい」と話します。
名古屋市立大学 千田嘉博教授「細かな設計がどうなっていたかを示す史料は現状見つかっていない。いくら復元的整備でも現状では到達するまでの学術的な史料を積み重ねることができていない」
また、仮に史料が見つかったとしても、福岡城跡は当時の石垣などが多く残り国の史跡となっているため、新たな建物を建てることは現状できないと言います。名古屋市立大学 千田嘉博教授「耐震強度を満たす基礎工事を行うと、本物の天守台を壊してしまうことが避けられない。天守台の地下構造を壊してはいけないという条件をクリアしようとすると現実的には建てることができない」
盛り上がる議論市民からは様々な反応が
福岡の市民は天守閣の復元についてどう思っているのでしょうか。
市民「別にいらないと思う。そんな新しいのをわざわざ作らなくていい」「あえてそこにお金を投入することはないかな」「あったらインバウンドとかいいんじゃないですか」再建には多くの課題がある福岡城の天守閣。「幻」のまま終わってしまうのか、今後の議論の行方が注目されます。
詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkb/1201757