極 短かった二人だけの新婚時代、松喬さんの外の顔しか見ていなかった私は「結婚したん 失敗と思ってる?」と聞いた事があります。
私の知ってる松喬さんは、いつもお喋りで、楽しく笑わせてくれる人なのに
その日
新聞を隅から隅まで 難しい顔をしながら読んでる姿に『私と一緒にいても楽しくなさそう?結婚したのを失敗したと思ってる?』
すると
「これが素の自分で、楽なんや」と言いました。
『そうなんだ』
『いや それだけ・・・』
確かに 超二枚目の部分もありますが、
新聞をじっくり読むのは、
素の自分だけじゃなく
きっとネタ集めだったと私は、思います。
なぜなら
マッサージチェアーでテレビのチャンネルをカチャカチャ回しながら見るのも
夜遅くまで飲みに行って
その場のお客様と会話するのも
全て舞台に反映されていました。
超 新婚時代は、僅か数ヶ月。その後お弟子さんが、次々と入門し
子供もできると途端に賑やかな暮らしになりました。
そして
日曜日の夕方といえば、
家族一門全員で
毎週「笑点」を見ては
松喬さんは、
笑点メンバーより面白い話をしていましたね。
その後は、「サザエさん」「ちびまるこちゃん」「7時のニュース」と続きます。
一つのテレビを見ながら皆んなで食卓を囲んだあの頃の生活。
当時は、当たり前の日常でした。
が、今思えばなんて贅沢な暮らしだったんでしょう。
笑い声が、溢れていて、
温もりのある暮らし
そんなある日の日常が、今は、私の貴重な宝物です。
今回は、六代目松喬十八番の一つ 「おごろもち盗人」を59歳の舞台でお楽しみ下さい。
六代目 笑福亭 松喬
落語公式チャンネル
「おごろもち盗人」
平成22年3月19日
天満天神 繁昌亭
第39回東西三人会より