脳神経内科は、脳・脊髄・末梢神経および筋肉の内科的疾患の治療を行っています。脳卒中、認知症、てんかん、頭痛など多くの患者さんが悩まれている病気はもちろんのこと、いわゆる難病といわれる疾患も含め幅広く診療を展開しています。
今回は、難治性の疾患である自己免疫性神経筋疾患の最新治療についてご紹介します。
■自己免疫性神経筋疾患とは
自己免疫性神経筋疾患とは、本来、細菌やウィルスなどの病原体から自分自身を守るための免疫システムが、何らかの原因で自らを攻撃するようになり、様々な神経症状、あるいは筋症状をきたす病気です。多発性硬化症、視神経脊髄炎、重症筋無力症、ギランバレー症候群などが知られています。
これらのほとんどは治療が難しく、徐々に病態が悪化する進行性の病気であり、これまでは治療法がないと考えられてきました。しかし近年、検査機器の進歩や薬の開発に伴い、新しい診断や治療法が確立されてきました。
■自己免疫性神経筋疾患の治療
治療は、免疫の調整もしくは抑制が必要で、疾患により治療が異なります。
神経を覆う髄鞘と呼ばれる絶縁体の部分が変性または脱落してしまい、様々な症状を引き起こす多発性硬化症は、急性期にはステロイドパルス療法を行います。再発予防のためには6種類の免疫調整薬、分子標的薬が近年、続々と認可され治療に用いられています。
また、多発性硬化症の一部と思われていた視神経脊髄炎は、抗アクアポリン4という自己抗体が原因で発症することが分かってきました。そのため、急性期の治療では、血中の自己抗体を減らすための血漿交換療法を行い、再発予防にはステロイド剤の投与を行います。
重症筋無力症は、末梢神経と筋肉の継ぎ目である神経筋接合部において、筋肉側の受容体が自己抗体により攻撃され、筋力低下を引き起こす疾患です。これまでは、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤による対症療法しか、選択肢はありませんでしたが、近年では、ステロイド薬や免疫抑制剤の投与、血漿交換療法、ガンマグロブリン大量静注といった、免疫療法が確立されてきています。
(おわりに)
自己免疫性神経筋疾患は、早期に治療を行えば良い状態を保てるようになってきました。また、今後更に薬剤や治療法の開発が進むことも期待できます。これらの病気は根気強く付き合っていく必要があります。私たちは患者さん一人ひとりに寄り添った診療を日々、心掛けています。