発電の熱をペレットの製造に使用、できたペレットで発電…木質バイオマス発電先進国のドイツに学ぶ“再生可能エネルギー”の循環
地域の豊かな自然を生かした脱炭素社会の実現に取り組む高知県梼原町。先日、町職員らが木質バイオマス発電の先進国、ドイツを訪れました。からふるでは同行取材し、特集でお伝えしています。今回は、「地域で循環する再生可能エネルギー」です。
この日、視察に訪れたのは、ミュンヘンから北に250キロほど離れた市、ヴンジーデルです。
(村山まや 記者)
「ここはペレット工場です。梼原町のおよそ20倍、年間およそ3万トンのペレットを生産しているそうなんですが、ドイツの中では規模の小さい工場だそうです」
梼原町内の工場で生産しているペレットは年間およそ1500トン。こちらに隣接するさらに大きな工場では、年間10万トンのペレットが製造されていることからも、ドイツではペレットの需要が大きいことがわかります。
原料となる”おが粉(こ)”は、周辺の製材所から持ち込まれたもので、木材として使えなかった端材(はざい)を砕いて乾燥させ、成形して作られます。
工場には、ペレットによる発電所が併設され、発電の際に発生する熱をおが粉の乾燥に使用。できたペレットで発電し、売電しています。
また、工場の屋根には太陽光発電も設置されていて、工場内の電力として使われています。発電の熱をペレットの製造に使用し、できたペレットで発電する…まさに、エネルギーの循環です。
(梼原町再生可能エネルギー推進協議会 森山健二 委員)
「近くに発電所もあって近くにペレットの工場もある。一連の動きを集約して大規模にやってるのがすごいなと思いました。日本とは完全に比べ物にならない規模でびっくりしているが梼原でやろうとしているのはこれをコンパクトにしたものなので参考にはなりました」
このほか、ドイツでは下水処理施設でも再生可能エネルギーが使われています。こちらの施設では、周辺の50の自治体から集まった一次処理された汚泥を、ペレット発電による熱とチップを燃やした熱で乾燥させ、セメント工場に燃料として売却しています。同じ施設の中で発電用のペレットも製造しています。
(バイオマス発電製造企業の担当者 クラウディウス・デッケルトさん)
「ここではあまり外から電気は買わない。全部ここで作っている」
(梼原町 環境整備課 石川智也 副課長)
「ここの電気もペレットの発電を…」
多い時には、1日に25トントラック10台分の汚泥を処理していて、地域に欠かせない施設となっています。
(村山記者)
「バイオマス発電による熱は、下水処理や工場といった施設で使われているだけではありません。こうした街でも、給湯や暖房の熱として利用されています」
発電の際に必ず出る、熱。寒さが厳しいドイツでは、重要なエネルギーの一つです。こちら、フェルブルクの旧市街地では、地下に熱を通す管が埋められていて、一般の住宅やレストラン、ホテルなど100軒ほどに熱を供給しています。
この仕組みを運営するのは地域のエネルギー会社。民間のホテルと、発電設備を製造する企業、地元自治体の3者で構成されています。発電施設は多くの人が利用するホテルと15メートルほどしか離れておらず、騒音やにおいが気にならない、地域に溶け込んだ仕組みだということがわかります。
熱供給の仕組みは、梼原町でも採用する予定です。温泉や温水プールがある太郎川(たろうがわ)地区に建設する木質バイオマス発電所から生まれた電気は、四国カルストの風力発電や、住宅などに設置された太陽光発電から生まれる電気と合わせて、町内の公共施設やホテルなどに送られます。同時に、バイオマス発電で発生する熱も、ホテルやレストランのほか、温水プールや温泉で活用する計画です。
今回の視察には、北海道三笠(みかさ)市の職員も同行していました。三笠市は、木質バイオマスや地域の石炭で水素を製造し、その際に発生するCO2を地下に固定するなどしてカーボンニュートラルな事業の実施を目指しています。
(北海道三笠市・産業開発課 音羽英明 課長)
「定住対策、空き家対策、再生可能エネルギーの利用といった面で非常に町が、町民の方も力を合わせてやってるなというイメージがすごくあるので、参考にさせてもらいながら我々もとりくんでいきたいし、せっかくご縁もいただいたので今後も連携させていただきながら我々の取り組みの紹介も含めて梼原町の取り組みも参考にしながらやっていきたい」
20年ほど前にFIT(フィット)=再生可能エネルギーの固定価格買取制度が本格化したことをきっかけに一気にエネルギー転換が進んだというドイツ。国ではなく民間企業がバイオマスでクリーンなエネルギーを生み出し、自分たちの施設や地域でそのエネルギーを循環させる取り組みが確立していることが見えてきました。
(バイオマス発電製造企業の担当者 クラウディウス・デッケルトさん)
「日本の再エネは国が主導になっていろいろ政策をしているイメージが強いが、個人、民間企業、ひとつの自治体からそういう動きがあるというのはまだ弱い部分がある。もう少し地元で使う電力を全部は無理でも一部だけでも地元で作りましょう、自分の山を守るというのは放置するのではなくなるべく使うことなんですね」
(Q.日本はドイツに追いつくことできるか)
「ドイツもまだまだ、例えば風力とかについては全然ほかの国にも負けているし、お互い刺激しあっていければと思う」