00:37 うつ病は脳内のセロトニン不足が原因
02:12 抗うつ薬
08:36 薬の名前
10:05 抗うつ薬の副作用
今日は「抗うつ薬のメカニズムおよび副作用」をテーマにお話しします。
この動画を見ると、抗うつ薬はどのようなものなのか、どのような副作用があるのかがわかります。
今現在、抗うつ薬を使っている方、これから抗うつ薬を使うことを検討されている方は、この動画を見ていただけたらと思います。
■うつ病は脳内のセロトニン不足が原因
抗うつ薬は主にうつ病で使われます。
他にも不安障害や強迫性障害でも使われますが、主にうつ病の治療で使われます。
うつ病は脳内のセロトニンが不足するから起きる病気だと言われています。
・過度なストレスによって脳が疲労を起こし、セロトニンが出なくなる。
・遺伝的な問題があり、年齢が来たからうつ病を発症し、セロトニンが不足した。
など諸説ありますが、基本的にはセロトニン不足による脳病と言われています。
もう少し詳しく言うと、セロトニンを主に使う脳の領域、脳の一部、活性領域が弱くなるということです。
そこの神経が細くなってしまいます。
ラーメンで言うと、ラーメンの消費量が減ったというより、ラーメン屋自体が少なくなったというイメージです。
でも、「ラーメン屋が減った」という言い方をすると紛らわしいので、「ラーメンが減った」というような言い方をしています。
つまり、セロトニンを作ったり使ったりしている神経細胞が減っているということです。
それを簡単に言うと「セロトニンの不足」ということになります。
■抗うつ薬
抗うつ薬は大きく4種類に分けられます。
・SSRI
代表的なものはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)です。
SSRIはセロトニンを増やして脳神経を増やす作用があり、それによってうつが良くなります。
また、抗不安効果が起きるので、不安障害の人や強迫性障害の症状が良くなったりもします。
セロトニンが放出されたあと、それを受け取る側があります。
受け取られずに漏れてしまったもの、使わなかったものは回収されるのですが、SSRIはその回収を止めます。回収しないことでセロトニンを増やすのです。
つまり先ほどのラーメンで言うと、ラーメン屋が少ない状況でラーメンを作るのですが、ラーメンをみんなが食べるわけではないので余ります。余ったものをいつも回収していたのですが、回収せずに置いておきます。コンビニ弁当の賞味期限を延ばすようなイメージです。
そうするとそのラーメンも食べられます。
みんなラーメンを食べているぞ!(セロトニンをたくさん取っているぞ)と言うことになり、それではラーメン屋を増やそう(セロトニンを作る神経細胞を増やそう)となります。
このように脳神経が増える、というメカニズムです。
SSRIを飲み始めると、まずセロトニンがぐっと増えます。
セロトニンが増えてくると、だんだん脳神経も増えてきます(枝が伸びていく)。
セロトニンが急激に増えるときに副作用があるのですが、この段階ではまだ抑うつ効果は弱く、その後に脳神経も増えていくと、安定してうつが良くなります。
ラーメンが一時的に増えたからといって、ラーメン市場は活性化しないですよね。
やはりラーメン屋が増えてこそのラーメン業界ではないでしょうか(笑)
・SNRI
SSRIがラーメンだとしたら、SNRIはチャーシュー麺のようなものです。
SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増やします。
セロトニンの再吸収を阻害し、ノルアドレナリンの再吸収も阻害します。そうすることで両方増えていきます。
<モノアミン仮説>
セロトニンにはこのような作用がある、ノルアドレナリンにはこのような作用があると昔は言われていました。最近はあまり言いませんが、セロトニンは衝動性を抑えるのがメインの働きとなる神経物質、ノルアドレナリンはエネルギー、興味・関心に関するところとされています。
ノルアドレナリンとドパミンは近いところにあり、ノルアドレナリンの回収口がドパミンの回収口でもあるので、実は前頭葉の辺りではドパミンも増えます。ドパミンは食欲や気力に関する領域と言われています。
あまり深く考えなくても良いのですが、とにかく増えれば良くなります。
・NaSSA
NaSSA(ナッサ)は作用が違うので「つけ麺」と言う感じです。
これもセロトニンやノルアドレナリンを増やす薬ですが、再回収を阻害するのではなく、α2受容体をブロックすることで増やします。
α2受容体というのは自律神経系に関係する受容体です。この神経の刺激をブロックすることで、結果的にセロトニンとノルアドレナリンが増えるということです。
・S-RIM
S-RIMは最近出たものです。これはセロトニンを増やす薬です。
SSRIのようにセロトニンの再吸収を阻害しますが、5-HT1A、5-HT1B、5-HT3、5-HT7の受容体を刺激したりブロックしたりします。
刺激することでセロトニンを増やしたり吐き気止めになったりするという、少しタイプの違う薬です。
合わせ技なので、ラーメン・チャーハンみたいなものです。
■薬の名前
具体的な薬の名前はこちらです。
<SSRI>
フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)
パロキセチン(商品名:パキシル)
セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)
<SNRI>
ミルナシプラン(商品名:トレドミン)
デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
ベンラファキシン(商品名:イフェクサー)
<NaSSA>
ミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)
<S-RIM>
ボルチオキセチン(商品名:トリンテリックス)
この中に皆さんがよく使われている抗うつ薬があると思います。
■副作用
作用もあれば副作用もあります。
抗うつ薬の副作用は、全般的にはイライラ(アクティベーション、ソワソワ)、自殺リスクを上げる(10代には使用注意)、躁転(躁うつ病の人に抗うつ薬を入れるとうつからぐっと躁に上がってしまう危険性がある)があります。
・SSRI
全般的な副作用に追加して、セロトニンが急激に増えるときに、吐き気、下痢、性機能障害が起きることがあります。
セロトニンの増え方が落ち着いてくると吐き気や下痢は落ち着いてきますが、性機能障害はなかなか取れないことが多いです。その場合は薬を変更することもあります。
・SNRI
チャーシューがいる派の人もいれば、いらない派の人もいるように、SNRIは効果は上がりますが副作用もそのぶん増えます。
尿閉、頭痛、頻脈・血圧上昇などのリスクが増える。
ちなみに、SNRIは痛み止めに使うこともあります。
・NaSSA
NaSSAはSSRIやSNRIのような副作用はありませんが、眠気や体重増加があり、鎮静がかかる感じがあります。
これが逆に良く、寝るときに使うことで良くなることもあります。
効果が一番強いのはNaSSAですが、副作用の頻度が多いのもNaSSAです。
NaSSAとSNRIを一緒に使うと、カリフォルニア・ロケットという増強療法となります。
・S-RIM
S-RIMは基本的にSSRIなので、副作用も同じように吐き気、下痢、性機能障害が多くなります。
ただ、従来のSSRIよりも副作用は少ない薬です。
今日は抗うつ薬のメカニズムおよび副作用について解説しました。
効果を実感するまでに時間がかかりますが、飲み続けることが大事です。
最初に副作用を感じる人が多いのでやめてしまう人も多いのですが、少し我慢して飲んでいただいて慣れてきたら、だんだん効果も感じられるようになってきます。
良い薬ですので、主治医とよく相談して使用を継続してみてください。
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抗うつ薬はいつまで飲むべきか、解説します。うつ病の再発防止
https://youtu.be/VlwZRleWbmQ
抗うつ薬の作用・副作用について解説します
https://youtu.be/A35D9S0Jaq4
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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版
#抗うつ薬 #副作用 #SSRI