『嘘』（太宰治）は、1946年に発表された短編小説で、夫婦間のすれ違いや信頼関係の揺らぎをテーマに描いています。物語は、妻が何気なくついた小さな嘘がきっかけで、夫婦の関係が微妙に変化していく様子を描写しています。
【あらすじ】
主人公の「私」は、妻が家計のやりくりについて「小さな嘘」をついていることに気づきます。その嘘は特に悪意があるものではなく、夫の負担を軽くしようとする善意から出たものです。しかし、「私」はその嘘に敏感に反応し、妻への疑念を募らせます。
物語の中で、「私」は妻との会話や日常の中で、妻が本当は何を考えているのかを知ろうとしますが、どこか噛み合わず、かえって自分自身の疑念や不安を強めていきます。一方で、妻は夫の心情に気づかないまま、日常を淡々と過ごします。
『嘘』は、人間関係における「嘘」の存在とその影響を深く掘り下げています。「嘘」が必ずしも悪い結果を招くとは限らないことや、むしろ時に人間関係を円滑にする役割を果たすこともあることを示唆しています。しかし、相手の嘘をどう受け取るかによって、関係が壊れる可能性もあるという、複雑な心理が描かれています。
【太宰治】
太宰治（1909-1948）は、昭和時代を代表する日本の小説家で、本名は津島修治。青森県の裕福な地主の家に生まれ、幼い頃から文学に親しみました。東京帝国大学在学中に文壇デビューを果たし、その後、師と仰ぐ井伏鱒二の影響を受けます。
太宰の作品は、人間の弱さや孤独、自己矛盾をテーマにしたものが多く、特に「斜陽」や「人間失格」などは自身の苦悩や挫折を反映しています。また、ユーモアや皮肉を交えた独特の語り口で、戦後の混乱期に多くの読者の共感を得ました。
一方で、私生活では複数回の自殺未遂や複雑な人間関係など波乱万丈の人生を送りました。1948年、愛人とともに玉川上水で入水自殺し、39年の生涯を閉じました。その短い生涯と濃密な文学は、今なお多くの人々に影響を与えています。
【チャンネル】
中学生までに読んでおきたい青空文庫 令和版
@reiwa_aozora
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