山口県山口市の徳地地域に、中学女子バレーのクラブチームを立ち上げた元教員がいます。ほとんどの生徒が地元を離れ、全員が寮生活をしています。
ひとつ屋根の下、バレーに情熱をささげる生徒と、見守る元教員を取材しました。
寮生活のバレー部、久々の帰省
学校を終え、バレー部の寮に戻る生徒たち。寮の駐車場には、迎えに来た家族の車が止まっていました。
迎えに来た母
「りんちゃーん?」
生徒
「はいはいはい!」
母
「帰れる?」
生徒
「今すぐ行きます!」
キャリーケースやかばん、布団を抱え、次々と車に積んでいきます。生徒たちにっては久々の帰省です。
記者
「実家は何県ですか?」
徳地中1年生
「香川県です」
徳地中2年生
「広島です。帰省は5か月ぶりですかね。おいしいものをいっぱい食べたりしたいなって思ってます」
徳地中2年生
「鳥取県から来ました。もっとバレーボールをうまくなりたいなと思って」
県外からも部員が集まる
部員25人全員が寮生活をしています。県外出身は13人。24人が、徳地以外から移り住みました。年末年始を除いて、帰省できるのはテスト期間中の週末だけです。
鳥取県から迎えに来た母
「たまにしか出会わないので、久しぶりに会うとすごい成長を感じますね。仲間がいっぱいいるので、そこは全然安心して預けてはいるんですけど」
山口市の徳地中女子バレー部。午後4時から8時まで日々練習に励んでいます。
中川忠俊さん
「アウトならアウトっていう表情をだせ」
指導するのは、3年前に定年退職した元教員の中川忠俊さんです。徳地出身で、自身も中学生の頃バレーを始めました。教員になってからは徳地中学校など5つの中学校で30年以上女子バレー部を指導。短期間で学校を異動することもあり、中学生がバレーに打ち込める環境作りを模索してきました。
中川さん
「今までここで培ってきたバレーボールの伝統を引き継いでいったほうが、今後また数年後には私また転勤したり退職したりありますので、それよりはここでずっと続けるほうが有効だろうということで」
2013年、教員時代に立ち上げた「山口徳地ジュニアバレーボールクラブ」。
部活動の地域移行に先駆けて、徳地中の生徒だけでなく市内外から生徒を受け入れ、中川さんが一貫して指導できる態勢を作りました。
中川さん
「将来どんな形になろうとも対応できるような態勢を作っていると。だから学校の部活動でもあるし、地域のクラブ活動でもあるし。ようはバレーがしたいっていう子がバレーができる環境を作ってやると」
スカウトは一切ありません。結成当初は、1チームを作るのにぎりぎりの人数でしたが、今では、バレーの上達を志し毎年10人近くの生徒が入部してきます。
中川さんの指導のモットーは「選手主導」。
練習中、多くを口にはしません。部員「周りの人が取っとるけ、そこ注意してやっていこう」選手1人1人が自ら考え、練習中気づいた事は学年に関係なく選手同士で注意し合います。
中川さん
「生活を含めて自立を主体においた生き方というか、バレーの練習も子どもの自立を考えた練習を今仕組みつつあります」
練習を終え、一足先に寮に戻る中川さん。実家を寮にしていて、妻とともに夕食の準備です。
中川さん
「メニューはだいたい私が食材を買うんです、適当に。それで女房が考えます。朝ご飯は私が作ります」
一度に炊く米は20合。この日はカツカレーにサラダ、ヨーグルトと栄養バランスを考えたメニューが並びます。冷蔵庫には、納豆や豆腐、卵が保存してありました。
中川さん
「これで1日分」
午後8時。寮に戻る選手たち「帰りました、奥さんこんばんは」
寮に帰ると、まずは食事です。選手の表情が和みます。
部員
「うーん。カレーのスパイスがほどよくておいしいです!」
夕食時の日課は、録画したその日の練習を見ることです。映像を見ながら、選手同士で反省点を共有します。キャプテンを務めるのは鳥取県出身の矢倉萌愛さんです。
キャプテン・矢倉萌愛さん
「ふだんずっと一緒にいるからこそ、3年生、2年生学年関係なく、チームワークができていると思います」
矢倉さんは、強豪チームで全国を目指したいと思いふるさとを離れました。
矢倉さん
「バレーでは苦しい事もみんなで分かちあえて、寮ではしっかりオンとオフがつけて、みんなで仲良く楽しくやっています」
夕食後は勉強です。1人1人が机に付き、そろって1時間勉強します。
午後10時半。寝室は2階です。午前7時からの朝練に備えます。
部員
「電気消します!!」
クラブを立ち上げて今年で10年。おととしは全国大会でベスト4。去年はベスト8と全国の強豪校になるまで成長しました。
有馬津奈手さん
「先生はいつも自分たちの事を思って、考えてくれるから、自分たちも結果を残そうと思います」
矢倉さん
「全国大会に行って、一戦一戦楽しみながら勝ち進んでいきたいと思います。日本一まで目指します」中川さんも、チームの成長を肌で感じています。
中川さん
「一緒に生活しているので、普通のチームよりもいろいろな事が徹底して、まだ十分できてないんだけども、何するんでもやることやること一つ一つ徹底することができる、そこがちょっと強みかなと思います」
バレーに打ち込める環境に加え、共同生活こそがチームの強みと話す中川さん。日本一の目標に向け、さらなる高みを目指します。
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