1977年3月25日発売
イルカのソロ歌手として6枚目のシングルである。
30万枚を超える売り上げを記録し、イルカとしては『なごり雪』(1975年)に次ぐ2番目のヒット作となった。
作詞・作曲:伊勢正三
編曲:石川鷹彦、木田高介
イルカは1970年にグループデビュー、その後1974年にソロでデビューをした、70年代フォーク界を代表するシンガー。
小柄な身体に、大き目のオーバーオールがトレードマークのイルカには、キュートという言葉がぴったり。
でも一度歌い出すと「低い・ハスキー・しゃがれ」ではくくれない、落ち着いた声で別れを歌う。1975年の大ヒット『なごり雪』も別れの歌だった。
別れの似合う声というより、別れを歌っても、次があることを思わせる声。
物語の1ページ目はドアの前に立つ君の姿から始まる。僕の部屋を訪ねてきた君、その時から幸せな結末には決して終わらない物語が展開していく。
ドアに書かれた、「とても悲しい物語」。
この物語の主人公は僕だったんだね。
新しい出会い(物語の1ページ目)には、この先どんなに楽しいことがあるだろうと、期待するものだけど、僕との場合は違ったんだよと、言っている。
そもそも出会った時から今日の別れが決まっていたのだと。
それを伊勢正三が表現するとこうなるわけだ。
ぼくの部屋のドアに 書かれていたはずさ
”とても悲しい物語”だと
なんて文学的な比喩だろうか。
そもそも雨から始まって雨に終わる、二人の関係。
化粧している彼女は涙を流してはいないけれど、きっと心の中で泣いているだろう……。
という短編小説のような『雨の物語』。
どうして別れることになったのか、
それは聞き手が好きなように想像すればいいのだが、どのようにも膨らませることができる、素敵な詩だと思う。
#雨の物語
#吉高由里子