【参考文献】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6684678/
白板症、紅板症 前癌病変の舌写真
https://first.lifesciencedb.jp/archives/6915
舌細胞の新陳代謝図
https://link.springer.com/article/10.1186/s12903-021-01574-4?fromPaywallRec=true
口内炎のレーザー治療のデメリット
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsot/32/2/32_29/_pdf/-char/ja
下顎の奥歯の幅の狭さと若年舌癌の発生者に関連あり
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koubyou1952/62/4/62_4_532/_pdf/-char/ja
動物実験で舌への刺激が悪性度の増加に寄与する
#耳鼻科 #新発田市 #富田耳鼻科クリニック
0:00 タイトル
0:40 結論
1:02 ①期間
1:36 ②痛み
2:15 ③場所
2:59 ④硬さ
3:27 ⑤見た目
4:50 注意点⑥レーザー禁
5:20 注意点⑦複数の医療機関受診
6:22 予防法⑧禁酒禁煙⑨口腔ケア
7:18 ⑩歯並びケア
8:37 まとめ
9:23 おまけ
新潟県新発田市で耳鼻科医をやっている富田と申します。
今日は口内炎と舌癌の見分け方についてお話します。
いつも同じ場所に口内炎ができる、口内炎ができてもなかなか治らない。
このような方にぜひ見てほしい内容です
この動画では、口内炎と舌癌の違いについてわかりやすく説明します。
口内炎がよくできる方は、「いつものこと」として気にせず放置してしまうことが多いです。
でも、もしそれが舌癌だったら大変ですよね。
舌癌の初期は痛みが少なく、日常生活にあまり影響を与えないため、気づかずに放置してしまうことがあります。
しかし、進行すると大きな問題になります。
舌癌を見分けるポイントは5つあります。
その5つは、期間、痛み、場所、硬さ、色と形です。
まず
1つ目は期間です。
口内炎は2週間で治りますが、舌癌は治りません。
舌の粘膜細胞は、常に新陳代謝がおこっています。
舌の粘膜の深いところで細胞が作られ、表面にいくにしたがい古い細胞となります。
古い細胞は、最終的に皮膚の垢のように、表面から死んで剥がれ落ちます。
この細胞が深部で作られ、表面で死ぬまでのサイクルが2週間なのです。
つまり口内炎などの炎症は2週間で新しい細胞になり、治るのです。
舌の炎症や傷が2週以上変化しない場合は要注意です。
2つ目に痛みです。
初期の舌癌は痛くないことが多いです。
むしろ炎症の口内炎の方が痛みを伴います。
癌といえば痛いというイメージがあると思います。
しかしこれは進行した場合です。
癌の痛みは、大きくなった癌細胞が深部の神経に触れて感じます。
また癌細胞の周囲に炎症がおこると、痛み物質がでて痛みを感じます。
そのため粘膜の表面にだけ癌が留まっている場合は、神経に触れず痛くないのです。
表面だけの癌細胞は、周りにも炎症がなく、口内炎と異なり痛みが無いのです。
そのため痛くなったときは進行している可能性が高くなります。
3つ目はできる場所です
舌癌は舌の側面や下側に多くできます。
舌の上側にはほとんどできません。
頬の粘膜と舌の下側から口腔底の部分にもできやすいです。
理由は、それらの場所が、歯の刺激と摩擦を受けやすいからです。
舌の辺縁や頬の粘膜は、歯と頻繁に接触します。
おしゃべりをしたり、食事中に食べ物を噛んでいる時などです。
繰り返し、歯と舌や頬の粘膜がこすれることによって、細胞が痛みやすくなります。
慢性的な損傷や炎症は、細胞を変異させ、癌を発生させるのです。
歯にあたる舌の辺縁、特に舌の奥の脇の異常には注意しましょう。
4つ目は硬さです.
舌癌は硬くなることが多いです。
癌細胞が増えていくと、細胞と細胞の間に繊維のような組織が増えてきて硬くなります。
さらに、大きく深くなると、筋肉に食い込み、癌の部分の動きが悪くなります。
早期のがん細胞であっても、細胞の性質が口内炎とは異なります。
そのため触ってみた時の硬さは、癌を見分けるのにとても重要です。
口の中で気になる部分を触って見て下さい
5つ目は、見た目の色や形についてです。
色や形に違和感がある場合は、注意してください。
でもこの違和感を一言で表すのは非常に難しいです。
専門医の私でも、早期のものは、パッと見ただけで癌だと判断することは出来ません。
つまり癌に特徴的な見た目はないのです。
それでも普段の舌の色と違うものに気を付けましょう。
白いものは、舌の赤と異なりよくわかります。
白板症といって将来癌になるような病変もあります。
こちらの写真は、4年前の検査で癌細胞が、なかった白板症が、癌に変化したものです。
舌の赤さよりも、もっと赤い、赤すぎるのも注意が必要です。
紅板症といって半数以上が将来癌になる病変です。
表面が普段と違った色だなぁと感じる場合は癌を疑っても良いと思います
癌細胞は増殖するから、膨れてくるはずと考えるのは間違いです。
潰瘍といって、癌細胞が崩れ落ちてくると、逆に舌の表面が凹んできます。
この頬粘膜癌は、やや凹んだようになっています。
表面が平らではない、凸凹している場合も注意してください。
舌がんと口内炎を見分ける5つのポイントをお話ししました
ここまで動画を見て、やっぱり病院を受診しなきゃと思っている方はいませんか。
そこで病院受診時の注意点を2つだけお話しします。
万が一進行がんにならないために、必要なことです。
一つ目は、まず受診するのにオススメの病院は耳鼻科です。
歯医者さんでもよいですが、レーザー治療を行う歯医者さんだけはやめましょう。
なぜなら 口内炎か舌癌か分からないときはレーザー治療を避けるべきだからです。
レーザーは確かに抗がん剤治療中の薬剤性口内炎の症状改善に効果があることがわかっています。
一方でレーザーは、癌細胞を刺激して進行させるデメリットもあるのです。
口内炎とハッキリわかっていない状態ではレーザー治療を避けるべきです。
2つ目は、複数の医師に診てもらうことです。
一つの病院での診断が、不安な場合は、別な病院でも見てもらうべきです。
実際に舌癌患者さんを見たことがない医師や歯科医師がいるからです。
舌ガン、口腔がんになる人は年に1万人です。
開業の歯科医院は6.3万件、耳鼻科医院は3500件くらいです。
つまり開業の歯科医や耳鼻科医が外来で、舌癌患者さんに遭遇する割合は、1年に0.15人です。
10年以上していても数人程度しかありません。
実際に舌癌を見たことないDrが、舌の病変をみてもよくわからない、判断できないことも多いのです。
これまで言いましたように、見た目で早期がんと口内炎を見分けることは簡単ではありません。
一つの病院だけではなく別の病院でも見てもらうことが重要なのです。
別の医師の目で、再度口の中の病変を見てもらいましょう。
心配でしたら、細胞の検査をしてもらえる、大きな病院を紹介してくださいと医師に訴えるのも良いと思います。
口内炎がよくできるけど、癌にならないか心配だ。
そんな方へ、舌癌を予防する方法を最後にお話しします。
それは、タバコやアルコールを控えること、口腔ケアをよくすること、歯並びや歯の出っ張りを治しておくことです。
タバコやアルコールは舌癌に限らず、あらゆるがんのリスクファクターです。
口の中は特に直接、タバコやお酒の中に含まれる有毒な物質に触れますので影響がおおきいと言えます。
禁酒禁煙が舌癌の予防になります。
次に、歯磨きをしっかり行い、定期的に歯医者さんに通いましょう。
むし歯や歯周病の炎症が長く続くと、細胞にダメージを与え、がんができやすくなります。
歯医者さんに何年も行っていないと、入れ歯が合わなくなったり、部分入れ歯がずれてきたり、詰め物が取れてしまっても放置されます。
入れ歯や金具、かぶせ物のとれた歯が、舌やほっぺたにこすれて当たることになります。
これらの硬いものが口の中を、長い間刺激し続けることで、がんができる場合もあるのです。
口のケアをしていても、自分の歯が原因で舌に刺激を与え癌になることがあります。
表面が尖っている歯や、歯並びが悪く内側に倒れている歯です。
20代から30代の若い人で舌がんになる人は、自分の歯が原因です。
実際に、舌がんの患者さんの左右の奥歯の幅や下あごの幅を調べたところ、若い舌癌の患者さんは高齢の人より幅が狭いことがわかっています。
昔に比べて、固い繊維質な食べ物を口にしなくなり、よく噛んで食べる習慣も減っています。
その結果、顎が十分に発達せず、歯が正しく並ぶスペースが足りなくなっているのです。
特に、奥歯2本(第一大臼歯と第二大臼歯)が内側に倒れている人は注意が必要です。
舌の奥の部分は、厚く左右の動きが少ないため、簡単に歯とこすれるからです。
前の歯の歯並びよりも奥歯2本の歯並びが悪い人は、より舌がんになりやすいと言えます。
舌がんを予防するために、自分の指で下の歯の内側をなぞってみましょう。
歯の先端が尖っていないか、倒れ込んでいる歯が舌に当たっていないかを確認してください。
もし気になるようでしたら、歯並びや歯の出っ張りを治してもらいましょう。
このように舌がんの予防には、定期的に歯医者さんに行くことと、毎日の口のケアが大切です。
以上舌癌と口内炎を見分ける方法、手遅れにならないための注意点、予防法をおはなししました。
まとめます。
この動画を見終わったら、口を大きく開けて、ベロやベロの下側をよく見て色調に異常がないか確認してください
そして指を使ってベロを触って凸凹していないか、硬いところはないかを確認しましょう。
予防のためにも、上下の歯の内側を触ってみて下さい。
とがっている、つっかかる、周りより内側に倒れているところがないかを確認しましょう。
もし普段と違う気になる粘膜の部分があったら1から2週間ぐらい毎日チェックしてみてください
全く変化がないような場合は、耳鼻科を受診しましょう。
明らかな口内炎でなければレーザー治療はしないでください。
病院で何ともないと言われても、やはり不安だという場合は、迷わず2週以内に違う病院に行きましょう
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私は医学部の学生時代に実習で耳鼻科を回っていた時に、舌癌の腫瘍を取って、お腹の筋肉を舌に移植する10時間以上かかる手術の患者さんの担当になりました。
その患者さんが、治っていく姿をみて、私は耳鼻科を専門にすることを決めました。
実際、開業するまで、舌癌治療を年に10人以上してきましたし、たま移植の手術もすることもありました。
もちろん全員を治せたわけではありません。
なので早期発見早期治療が癌を治すには大事なことが身に染みています。
そこで、舌癌治療を離れた今は、開業医として早期発見のため口の中をよく見ています。
でも皆さんが病院を受診してくれないと、それもできません。
なので、舌癌の方全員が、早期に発見され治療が開始できるようにこの動画を作りました。
このチャンネルでは、みみ・はな・のどだけではなく、この動画のような、口の中の医療情報も発信していきます。
見逃したくない方は、ぜひチャンネル登録していただけると嬉しいです。
それではまたさようなら。