ハリウッド映画のスターたちがやって来るかもしれません。1本の映画をきっかけに、いま、小さな町が映画のロケ地として海外から注目されています。
日本の小さな町に魅了されたアメリカの映画監督
RKB 堺恭佑 記者
「のどかな田園風景が広がる、福岡県添田町。この田舎町に映画の都・ハリウッドが興味津々なんです」映画「武蔵~英彦山秘文~」。
江戸時代の剣豪・宮本武蔵とそのライバル・佐々木小次郎の知られざるストーリーを描いたフィクションです。メガホンをとったのは、添田町に住む映画監督マット・テイラーさん。
パートナーの吉松育美さんは映画をプロデュースし、武蔵の妻役で出演しています。
2人は添田町に魅了され、4年前にアメリカ・ロサンゼルスから移住して来ました。「武蔵」監督 マット・テイラーさん
「5年ぶりにロスに帰ったんですよ。ロックダウン以来。3日目でこっちに帰りたくてしょうがなかった。九州がいい。添田町がいい」添田町をこよなく愛するマットさんが撮った「武蔵」。
実はこの映画、作品を楽しんでもらうのとは別に、もう一つ、大きな目的がありました。
目的は「映画ロケの誘致」
「武蔵」プロデューサー 吉松育美さん
「海外の映画とかドラマとかのプロダクションを、この添田町と東峰村に誘致するための目的で作ったんです」
つまり、添田町に映画のロケを誘致するために作られたプロモーションムービーなのです。その「武蔵」が、なんと11月、アメリカ・ハリウッドの映画祭に出品。チャイニーズシアターで上映されました。
海外の反応は
「武蔵」プロデューサー 吉松育美さん
「反応どうかなって思ったんですけど、想像以上に質問とか、みんなけっこう前のめりでディスカッションが繰り広げられるのを見て、めちゃめちゃ手応えを感じました」「武蔵」監督 マット・テイラーさん
「九州という言葉はそもそもみんな知らない言葉なので、「九州」「福岡」「添田」「東峰村」とか、ちょっと新しい日本語の単語をみんなの頭の中に入れられたというのがうれしいんだよね」
映画の都でも好評だった「武蔵」ですが、あくまでロケーションPRのための映画。
予算は限られたものでした。
キャストは全員”住民”!?
吉松育美さん
「実はあそこに出ている方たちは地元の役者の経験もない人たちを起用して作った作品なんですよ」
キャストはすべて地元住民、吉松さん以外は役者経験のない素人です。映画「武蔵」より「こやつの最後の頼み、儂が引き受けよう」主人公・武蔵はジュエリーデザイナー。映画「武蔵」より「最後はわかっておるな。首を切れ」小倉藩主は整体師。武蔵役 堀越達也さん
「最初やっぱり緊張しましたよね。全く素人で、右も左もわからないんですけど、監督さんがよく指導してくださって、スムーズにできました」
Q スムーズに?
「僕としてはやったかなという感じで。夢のようですね。スクリーンに僕が登場するじゃないですか。自然と涙出ちゃいました。あの素晴らしい映画の世界に僕がいるっていうのが」
Q 役作りは?
「五輪書を購入して、武蔵さんってどういう心境だったのかなって、一応勉強しましたけど」小倉藩主役 金子優さん
「ドキドキですよね。もうカンペ頼りですよね。向こうでホワイトボード。でもそれ読むと読んだ感じになっちゃうし。LINEで送ってきてくれた台本を写したんです。小さくて老眼で見えないから自分で書き写して。これで施術する振りをしながら見てたんだよね」
Q 映画に出るようになったきっかけは?
「そこに座ってたら、マットさんが通り過ぎたんだと思います。それで、ちょうどいい白髪の親父がいるなと思ったと思うんですよ。だから自分からエキストラ募集とかに応募したわけじゃない」
ハリウッドの”大物”が町に!
そしてこの日、2人の外国人が添田町を訪れました。実はこの2人、超大物。世界の映画ロケーション組合の会長、ジョン・ラキッチさんと、ハリウッドのロケーション組合員でもあるマイケル・ウェスリーさん。
世界的大作のロケ地選定に大きな影響力を持つ映画業界のキーマンです。添田町へのロケ誘致を目指すマットさんたちにとっては、これ以上ない大一番。案内したのは、日本三大修験道のひとつ、霊峰・英彦山に鎮座する英彦山神宮です。
町が誇る修験道の霊場「まさに理想的!」
マット・テイラーさん
「これ見て。これ外せるんです。一番の財産ですよ」マットさん、参道の手すりが簡単に取り外せることをアピールします。マットさん、宮司に一行を紹介します。
マット・テイラーさん
「お世話になります。こちら、ハリウッドのロケーション組合の理事です」
英彦山神宮 高千穂秀敏 宮司
「あんまりピンとこんけどすごい」マット・テイラーさん
「きょうから世界の映画業界が英彦山神宮を発見することになる」英彦山神宮 高千穂秀敏 宮司
「よろしく」Q 宮司としても歓迎?
「全然違いますよ。マットから影響受けてウェルカムになった。県の事業とかああいうのは。僕だいたいインバウンドは受けてなかったんですよずっと。けれど熱弁が響いたわけです。熱い言葉に少しは寄り添っていかなければという思いだけ」英彦山の中腹にあるのが英彦山大権現。
四方の山を借景にして、広大な庭園が整備されていますが、地元の人にもあまり知られていない穴場です。ハリウッドのロケーション組合員 マイケル・ウェスリーさん
「美しい!」この日、一行は英彦山周辺の6か所を回りました。映画ロケーション組合会長 ジョン・ラキッチさん
「本当に感動したよ。きょう見せてもらったロケーションは素晴らしく、予想をはるかに超えてきた。感心しすぎて言葉も出ない。歴史ドラマからSF、ファンタジーまで、本当にたくさんのインスピレーションがわきました。そして石造りの建築、木々、森、大自然……どれも創造力を刺激する可能性に満ちている。クリエイティブなことをする場所を探している人にとって、まさに理想的な場所だと思う。『SHOGUN』はここで撮るべきだね」
”アジアのハリウッド”は近い?
ロケハンのアテンドは大成功。
大きな手応えを感じていたマットさんたちに、数日後、朗報が届きました。
さっそくハリウッド映画の一部の撮影が決まったといいます。「武蔵」プロデューサー 吉松育美さん
「急に連絡が来てですね。すぐこないだプロデューサーさんたちとぞろぞろっとこの場所に来てミーティングして、『いいね、ぜひ撮らせてください』ってことで。これからの大きな第一歩の小さなファーストステップかもしれないんですけども、ゆくゆくは大作を引っ張ってきたいな」マット・テイラーさん
「ここはアジアの第2ハリウッドになってもおかしくないですよ」
オール地元メイドの低予算の映画が起こした奇跡。
添田町がアジアのハリウッドと呼ばれる日も近いかもしれません。
詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkb/1599585