天皇の即位礼正殿の儀が執り行われました。天皇皇后が平安時代の装束で高御座と御帳台から姿を現すこの儀式には、「古式ゆかしい」「伝統美」といった賛辞が寄せられましたが、このような形式は大正天皇の即位礼のときにおおよそが定まったもので、「古式」でも「伝統」でもないと、原武史さんはいいます。即位礼にとどまらず、皇室やその行事はそのつど変化してきました。儀式のありようだけでなく、元号ひいては天皇制それ自体が21世紀の現代にふさわしいものなのか、主権在民の憲法にそぐうものなのか、原武史さんは厳しい疑問を投げかけます。平成の天皇と皇后のレガシーのプラス面とマイナス面、皇室のこれから。原さんの広範な調査研究の一端を垣間見せていただきながら、天皇制について考えてみました。
原武史さん テーマ関連書籍
『「昭和天皇実録」を読む』(岩波新書)
『平成の終焉 退位と天皇・皇后』(岩波新書)
『「松本清張」で読む昭和史』(NHK出版新書)