0:05 (1)はじめに
0:32 (2)レビー小体型認知症の例
0:53 (3)レビー小体型認知症とは?
2:52 (4)レビー小体型認知症の症状
4:57 (5)レビー小体型認知症の診断基準
6:55 (6)レビー小体型認知症の鑑別疾患
8:47 (7)レビー小体型認知症の治療
11:22 (8)まとめ
「レビー小体型認知症」は、パーキンソン病類似の認知症です。「幻視」や「症状の変動」が目立つこと等から、アルツハイマー型認知症と見分けます。
精神科医が要点を約12分の動画にまとめています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
府中こころ診療所 https://fuchu-kokoro.com
チャンネル登録お願いします https://www.youtube.com/c/こころ診療所チャンネル
↓↓内容の詳細は下記になります。
(1)はじめに:レビー小体型認知症
心療内科・精神科の病気。今回は「レビー小体型認知症」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
認知症といえば「アルツハイマー型認知症」が有名ですけれども、それと似て非なるもので「レビー小体型認知症」があります。
薬や日頃のケアなど対応が変わってくるため、これを見分けていくことが大事です。
今回は「レビー小体型認知症」について見ていきます。
(2)レビー小体型認知症の例
Aさんは時折、見知らぬ人や動物が見えるようになり、夜に急に飛び起きて叫ぶことがありました。
徐々に歩きにくさや時間により変動する物忘れが目立ち、「物忘れ」で受診をしました。
検査などをした結果、レビー小体型認知症と診断をされました。
(3)レビー小体型認知症とは?
これは「パーキンソン病と似た認知症」です。
<認知症とは>
認知症は、記憶などの認知機能が後天的に低下してくるものです。
主にアルツハイマー型認知症が有名ですが、そのほかの原因でも出ることがあります。
基本的には徐々に進行し、治す薬はありません。
<レビー小体型認知症とは>
レビー小体型認知症は、大脳にタンパクの塊「レビー小体」が多発するタイプの認知症です。
パーキンソン病とメカニズムは似ています。そして、幻視など特徴的な症状が出るのが特徴です。
基本的には徐々に進行し、治す薬はないのが現状です。
<「レビー小体」とその影響>
このレビー小体は「α-シヌクレイン」という「タンパク質の塊」です。
これが神経細胞に付着して神経の機能を妨げ、細胞死をもたらします。
その結果、認知症症状などを来してきます。
<パーキンソン病との関連>
パーキンソン病は「中脳」別の場所に「レビー小体」ができてきます。
場所が違うため、本来は症状は異なります。
しかし病状が進行してきますと、両方の症状が合併することが多くなります。
<レビー小体型認知症の病態生理>
まずは「幻視」なども含め視覚関連の障害が目立つのが特徴。
もう一つは行動などの「前頭葉機能の障害」が優勢です。
一方、アルツハイマー型認知症との共通点は「アセチルコリン」の不足です。
そのため、使う薬が一部共通します。
(4)レビー小体型認知症の症状
代表的な症状は、「注意・認知の強い変動」「幻視」「パーキンソニズム」「レム睡眠行動異常症」「抗精神病薬への過敏さ」です。
①注意・認知の強い変動
これは時間により注意や記憶などが変動することです。
特にいわゆる視覚関連の障害が目立ってきます。
そして、この変動のために「せん妄」と時に見分けにくいのが特徴です。
②幻視
幻視は「ないはずのものが見える」症状です。
具体的には「人物(知人も見知らぬ人も)」「動物」「虫」が見えることが多いです。
そして、これは繰り返し出現し、例えば虫が這って見えるときなど、不安など精神的な不調をきたす場合が少なくありません。
③パーキンソニズム
このパーキンソニズムは、ほぼパーキンソン病と似た症状です。
動きにくくなったり、生活リズムにも影響が出たりすることがあります。
そして手の震えや「小刻み歩行」などが出現し、転倒リスクが高いので注意が必要です。
④レム睡眠行動異常症
これは夢を見る状態「レム睡眠」の時に筋肉の弛み(弛緩)がうまく行かず、結果大声や身体の動きが出るものです。
症状が重い場合は興奮や暴力が出る場合があり注意が必要です。
そして、この内容は、基本的には「夢の内容と一致するところが多い」とされます。
⑤抗精神病薬への過敏さ
レビー小体型認知症では、抗精神病薬に対し非常に過敏で副作用も出やすいのが特徴です。
なので、この診断があった時は、抗精神病薬の使用は慎重に検討し、使う場合も少量にとどめます。
(5)レビー小体型認知症の診断基準
DSM-5の基準では、まずは「認知症の診断」があり、その上で「レビー小体型の診断」がある、この2段階の診断になります。
①「認知症」の診断基準
A:記憶・注意等「認知機能領域」の1個以上が有意に低下している(以下の2つ両方満たす)
(1)本人もしくは知っている人(家族等)の懸念(自覚的な部分)
(2)神経心理学的検査等で示される認知障害(客観的な所見)
B:認知欠損が毎日の生活の自立を阻害してしまう
C:せん妄では説明できない
D:「他の病気」で説明できない
②「レビー小体型」の基準
A:認知症の基準を満たしている
B:「潜行性」に発症し、緩徐に進む
C:中核的特徴および示唆的特徴の両方を満たす
(確実→中核2つ以上か中核1つ+示唆1つ、疑い→中核1つのみか示唆1つ以上のみ)
1)中核的な診断的特徴
(a)認知の動揺性とともに著しく変動する注意及び覚醒度
(b)よく形作られ詳細な、繰り返し出現する幻聴
(c)認知機能低下の進展に続いて起こる自然発生的なパーキンソニズム
2)示唆的な診断的特徴
(a)レム睡眠行動障害の基準を満たす
(b)神経遮断薬に対する重篤な過敏性
D:他の原因では説明できない
(6)レビー小体型認知症の鑑別疾患
主な鑑別疾患は3つ、まずは「アルツハイマー型認知症」2つ目が「せん妄」、3つ目が「パーキンソン病」です。
①アルツハイマー型認知症
認知症症状・物忘れ等に関しては共通しています。
一方レビー小体型認知症では記憶の障害は軽めの一方で、幻視等の特徴的な症状の出現が違いになります。
抗認知症薬は両者共通して使いますが、レビー小体型認知症では抗精神病薬の過敏性が特徴です。
②せん妄
メカニズムは違いますが、症状の変動の点で共通点が多く、見分けにくい場合があります。
そして、合併することも多く、厳密な鑑別は難しい場合もあります。
まずは環境の調整や薬の整理等でせん妄の改善を図り、その変化で見分けていきます。
③パーキンソン病
メカニズムは類似の病気ですが、発生場所が違うため症状も違いがあります。
ただ、進行時は場所・症状も重なり、鑑別は時に困難になります。
合併時はは「両方がある」と見て治療していきます。
<鑑別等の為の検査>
①長谷川式検査かMMSE検査
これらは認知機能を30点満点で全般的に「スクリーニング」するための検査です。長谷川式だと20点以下で認知症疑いです。
②CT・MRI検査
脳の状態を見ることで、他の器質的な原因の除外などを行っていきます。
③IーMIBG心筋シンチグラフィー
これは特殊な検査ですが、「レビー小型認知症」に特有の所見が出るため、確定診断の助けになります。
(7)レビー小体型認知症の治療
病状は徐々に進行しますが、段階に応じて対応していきます。
治療は主に「症状への治療」と「介護ケア」の2つです。
①症状の治療
主なものは「認知機能障害への治療」「BPSDに対しての治療」「パーキンソニズムに対しての治療」「自律神経障害への治療」の4つです。
1)認知機能障害に対しての治療
抗認知症薬「ドネペジル」が適応になります。
ただし、あくまで「症状を遅らせる」効果で、あくまで個人差があります。
効果がない時は無理して続けず、他の対策を優先します。
2)BPSDに対しての治療
まずは抗認知症薬「ドネペジル」の相性を見ていきます。
改善困難なら、安全な漢方「抑肝散」の効果・相性を見ていきます。
それでも難しい場合は抗精神病薬等を検討しますが「過敏性」あるため、慎重に検討します。
3)パーキンソニズムに対しての治療
少量の抗てんかん薬「ゾニサミド」が有効な場合があります。
無効な場合は、他のパーキンソン病関連の薬も検討していきます。
ただし「抗コリン薬」は認知機能等逆効果なことが多いため、なるべく避けていきます。
4)自律神経障害への治療
便秘に関しては、食事や運動など調整しながら、下剤を検討していきます。
そして頻尿に関しては、抗コリン薬以外の薬の対策を考えていきます。
そして、起立性低血圧がある方もいますので、その薬も検討していきます。
②介護ケア
薬と並んで「介護ケア」が大事です。
<基本の考え「パーソンセンタードケア」>
これは、「個々の患者さんのニーズに沿ってのケアをやっていく」考えです。
本人の尊厳と生活の質を守りつつ、家族・介護者とも協力してケアを続けていきます。
<日本では「介護保険制度」>
日本では介護保険制度を活用し、ケアマネジャーが個々のケアプランを立てます。
そして家族・支援者と協力して各種介護サービスを提供していきます。
時に資源が不足している場合あり、その時は状態を見て次善策を模索していきます。
<主な提供サービス>
「デイサービス」:定期的に通所し、活動を維持しつつ体・脳両面のリハビリ活動等を行います。
「ショートステイ」:短期間宿泊するもので、介護者の負荷軽減にもなります。
「訪問介護」:介護士が家に訪問し、家で介護サービスを提供します。
<レビー小体型認知症のケアの注意点>
まず「転倒・骨折のリスク」が高いことに注意が必要です。
そして「症状の変動に合わせたケア」が必要になります。
また、「幻視の影響」への対応が必要になる事があります。
<介護者も自分を守る>
介護に無理が続くと、介護者が「介護うつ」になる等「共倒れ」のリスクがあります。
そのため介護者も時には休養するなど「持続可能なケア」を目指します。
そのために必要時は「デイサービス」「ショートケア」なども活用し、介護者の負荷軽減も図っていきます。
(8)まとめ
今回は、心療内科・精神科の病気「レビー小体型認知症」について見てきました。
「レビー小体型認知症」はパーキンソン病と類似点の多い認知症で、「幻視」や「状態の変化」などが特徴的です。
「アルツハイマー型(認知症)」との鑑別が大事です。症状等で見分け、必要時精査して診断確定します。
症状は徐々に進行しますが、各症状への改善薬などを使いつつ、介護保険等を活用し「持続可能なケア」を続けます。
こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
府中こころ診療所(東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
こころ診療所吉祥寺駅前(東京都武蔵野市吉祥寺南町1-4-3ニューセンタービル6階、☎0422-26-5695)
#レビー小体型認知症 #幻視 #パーキンソン病 #物忘れ #精神科医
【解説者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。