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統合失調症です。薬を飲みたくありません。【必要も葛藤有、病識も含め精神科医が13分でまとめ】

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0:05 はじめに(統合失調症です。薬を飲みたくありません) 0:31 統合失調症と抗精神病薬 1:16 抗精神病薬をやめるとどうなるか 3:26 「でもやはり薬を飲みたくありません」 3:59 背景①副作用 5:09 背景②薬への葛藤 6:22 背景③病識の問題 8:18 背景④病気・人生への葛藤 12:00 まとめ 統合失調症では、治療のため「抗精神病薬」の継続が必要ですが、「薬を飲みたくない」との相談を受ける事は少なくありません。確かに色々葛藤の問題、「病識」の問題もありますが、再燃予防・社会復帰の前提の意味でもやはり服薬継続は必要です。 精神科医が約13分でご質問にお答えします。 出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長) こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com 府中こころ診療所 https://fuchu-kokoro.com チャンネル登録お願いします https://www.youtube.com/c/こころ診療所チャンネル ↓↓内容の詳細は下記になります。 <はじめに:統合失調症です。薬を飲みたくありません> ご質問にお答えします。今回は「統合失調症です。薬を飲みたくありません」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。 今回お受けしましたご質問は「統合失調症という診断を受けましたが、薬はどうしても飲みたくありません」というご質問。 シンプルなお答えとしては「気持ちはわかります。でも必要です」というお答えをします。 <統合失調症と抗精神病薬> まず統合失調症とは。 これは幻聴や妄想などが特に症状悪化時に目立つ脳の病気。基本的には、脳のドーパミンの過剰が原因とされます。そのため、治療の基本は脳のドーパミンの過剰などを抑える等の「抗精神病薬」の継続です。 この抗精神病薬ですけれども、これは主にドーパミンの過剰を抑え、急性期の改善のほか、再燃予防にも必要。そのため、原則は薬を続ける必要があります。 <薬をやめると再燃する> ここで「薬をやめるとどうなるんですか」というご質問があります。答えは、「再燃をするなど危険があります」。 薬をやめた後の影響というところ3つ。 1つ目は「高い率で再燃をする」、2つ目が「激しい症状で再燃をする」、3つ目は「再燃後に影響が出る」です。 1つ目は「高い率で再燃する」。 薬をやめた状態だと高い率で再燃します。データによっては論文によって変わりますけれども、中には「1年で78%、2年で96%が再燃した」という論文もあります。 その中で、再燃で入院が必要な方でも、多くは「薬をやめての再燃」です。 そして、(中には)すぐ再燃しないこともあって、数か月―2年の時間差のこともあります。 2つ目は「激しい症状で再燃する」。薬がない状態での再燃では、強い幻覚妄想などでの再燃が多くなります。その結果、しばしば入院を要しますし、症状によっては自傷他害のおそれが生じます。 3つ目は「再燃後の影響」。 まず1つ目としては症状が残るリスク。2つ目としては、認知機能・陰性症状への影響。3つ目としては、薬の必要量が増えやすいこと。 ここまでを踏まえ、精神医学上は薬の継続は必要です。 <薬への葛藤の根強さ> 一方でご質問として「でも、やはり薬飲みたくありません」という話があります。 お答えとして「確かに薬をつらく感じる場合がある」と。 この薬の継続が辛くなるという背景4つ、1つ目は「薬の副作用の話」2つ目が「薬への葛藤の話」3つ目がいわゆる「病識」。4つ目は、「病気や人生の葛藤の話」です。 1つ目が薬の副作用です。パーキンソン症状、体重増加、倦怠感などが出る事があります。 対策として減薬・変薬がありえますが、再燃リスクもあるため、主治医との相談が必要です。 2つ目としては、薬への葛藤です。 薬を継続すると、影響が色々出ます。 1つ目は、毎日薬を飲む手間あり、副作用も出る事があります。 2つ目は、特に安定後、服薬の「メリット」が不明確になります。 3つ目が服薬により自分が「病者」であると認識することがあります。 一つの対策としては「病気の勉強」です。 診断された統合失調症に勉強する(疾患教育)。 そのく中で、再燃予防と薬の必要性を学び、薬の必要性を実感するのは、やはり大事かと思います。 3つ目は、「病識」の問題。 病識とは「病気があるということを認識する」というところになります。 本来はこの病識から服薬の必要性を実感します。 一方病識が崩れてくると、その流れが途切れてしまう。一方で、統合失調症は、この病識がなくなることが大いにあり得ます。 この「病識がない」というところ、大きくいと2つ(に)分かれ、一つは本当にもう病識を欠落する場合。もう一つは、「病気を受け入れにくいという葛藤」での否認。 本当に病識が欠落する場合の対策です。 まずはその人の困り事・症状というところに関してまず聞く。例えば、「統合失調症はない」けれども、(幻聴が)聞こえてくるのが気になるとか、統合失調症はないけれども、眠れないのが気になるという方がいらっしゃいます。 こういったところで症状などその「認められる部分」というのがあるので、そこをお互いで共有をしていくというところがあります。 その上で、そのつらさの共有をした上で、その改善・解決を図る策としての「薬」がありますよというところで、必要性を共有して続けていくということになります。 例えば、「統合失調症じゃないけれど眠れない」ということだったら、そこを落ちついて寝られるようなお薬ということになりましょうし、「幻聴がどうしても気になる」ってことであれば、「それを和らげる薬」ということになるかと思います。 4つめが「病気や人生の葛藤」というところになります。 先ほど2と3のところで扱っていない問題がありました。1つ目は薬の葛藤の中で、自分が統合失調症である・「病者」であることに直面するという話。病識のところでは、「病気を受け入れにくい葛藤」というところの話がありました。 この問題というのは、実際、臨床の中で大きな話になってきます。 確かに統合失調症になったことで受けるダメージというのは、これは決して無視できないものがあるということをまず触れなければなりません。 具体的に見ていきますと、まずは再燃のリスク・ぶり返すリスクが常に0じゃないというところがあって、かつ薬を原則としては一生涯続けることが必要になるというところがあります。 2つ目としては、それで再燃を予防しても、以前のようには活動ができないということがあります。 これは「無理をすると再燃してしまう」という意味でもありますし、それは「陰性症状」や「認知機能障害」で以前のように動いたり、考えたりするのがやりづらくなっているという意味も含まれます。 3つ目としては、「社会復帰へのハードル」や「周りの偏見」というところです。 就労移行支援などを含めて復帰をするというルートはあるんだけれども、確かに積み重ねていかなきゃいけないというところが一つ。 その中で、仮に積み重ねていっても、周りからの偏見というのは、人によってはどうしてもあるというところが出てくるわけです。 こういうことを考えると、なかなか「はい、受け入れてください」というのは、なかなか厳しい難しいところというのがあるんですけど、ただ、これは非常に大事だというところもあります。 では、徐々に受け入れていくときのヒントというところを見ていきますと、1つ目としては、その病気になって失ったものに目が行くと、なかなかこれ受け入れも難しいですけれども、逆にこれ(統合失調症)になったからこそ、いろいろ見えた・得られたことはないかというところ、なかなかすぐに難しいかもしれませんけど、そこを見つけていくというところが一つあるかと思います。 2つ目としては、やはり自分の根っこの「軸」といいますか。何をしていきたいかというところを明確化していく。そのためにはぶり返してはいけないし、薬を続けなきゃいけないという話です。 3つ目としてはある種未来への希望・楽観性と呼びましょうか。そういったところを持っていくというところになります。 これは難しいというご質問も受けますけれども、では希望を持つためのヒントというところ、特にここ10年で精神医療、統合失調症の治療も変わった部分があるので、そこのヒントを見ていきます。 1つ目としては新たな長期入院というところはもうまれになってきています。以前からの長期入院の方が退院するというところの課題はまだ大きいんですけれども、一方で新しく入院した方に関しては、原則3か月以内の退院ということが大半になっているというのが状況としてあります。 2つ目としては、「就労移行支援」からの障害者枠での就職のルートというのは、これはこの10年でだいぶ変わってきたと思います。以前ですと、なかなかその就労というところをつなぐのは難しいという現状あったんですけれども、このためには「就労移行支援」というのはだいぶ今普及してきまして、そこを通じて(経由して)障害者枠で勤務するという方がだいぶ増えてきています。 3つ目としては、当事者の情報開示や当事者会の流れというところになります。これまで統合失調症の症状などに関しては、なかなかあまり「触れられない」ということは多かったんですけれども、こういったことも「開示して、その中でやっていこう」という流れができてきています。その中で、中には当事者会というのがありまして、最近ですともう「オンラインで」この当事者会をやりましょうという流れもでき始めているということをお聞きしています。 この辺がヒントになっていただければ、幸いになります。 まとめてきましたけれども、確かにこの「薬を飲みたくない」という葛藤、本当に人によっては深いものがある、気持ちはわかります。でも、やっぱりいろいろ社会復帰をしていく上でも、再燃を防ぐ上でも大事なので、何とか薬を続けていただけたらというふうに思います。 <まとめ> 今回はご質問「統合失調症です。薬を飲みたくありません」というところについて見てきました。 統合失調症では改善をするほか、再燃予防・ぶり返しを防ぐという意味でも、この抗精神病薬というお薬の継続・続けることが必要になってきます。 副作用の対策であったり、薬の必要性も含めた「病気の勉強」ということを、まずはしっかりやっていくことが大事だと思います。 その上で「統合失調症というものへの葛藤」というものを整理していきまして、徐々にでも受け入れを進めたうえで、薬を何とか継続をしていただけたらというふうに思います。 こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station) 府中こころ診療所(東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887) こころ診療所吉祥寺駅前(東京都武蔵野市吉祥寺南町1-4-3ニューセンタービル6階、☎0422-26-5695) #統合失調症 #抗精神病薬 #病識 #再燃 #疾患教育 【解説者】 医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎 精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医) 2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。

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