親と別居していても、条件を満たしてさえいれば扶養することができる、という事になっているんですね。
なお扶養には、税制上の扶養と、社会保険上の扶養があって、税制上の扶養は、一言で言えば所得税や住民税の節税に関わる話で、社会保険上の扶養は、健康保険に関わる話ということになります。
詳しくは、この後、説明しますね。
こちらは、本日の内容になります。
1番目 扶養するメリットとは
2番目 扶養する条件について
3番目 事例で見る税制上の扶養の例
4番目 事例で見る社会保険上の扶養の例
5番目 扶養するデメリットについて
それでは早速始めましょう。
1番目 扶養するメリットとは
ということですが、税制上の扶養のメリットは、親を扶養する子の所得税や住民税が安くなるということ
社会保険上の扶養メリットは、扶養される親の健康保険料の負担がなくなるということ、なんですね。
まず税制上の扶養ですが、税制上の扶養を受けると、親を扶養する子が控除を受けることができるので、その分税金が安くなり、所得税や住民税が安くなる、ということになります。
控除というのは、この場合は要するに、所得金額から一定の金額を差し引く、という事ですね。
では、具体的にどのくらい税金が安くなるのでしょうか?
今回は、下記モデルを使って説明してみたいと思います。
この人は、現在70歳で子とは別居して生活しており、収入は年金のみで、その金額は年間で150万円だった、とします。
この人が、自分の子の扶養に入った場合、子が受ける控除の金額は、
親が70歳以上で同居の場合は、所得税は58万円の控除で、住民税は45万円の控除
70歳以上で別居の場合は、所得税は48万円の控除で、住民税は38万円の控除
70歳未満の場合は、同居、別居に関わらず、所得税は38万円の控除で、住民税は33万円の控除
ということになっています。
なので、このモデルケースの場合は、所得税で48万円、住民税で38万円の控除が受けられる、ということになります。
では、その場合、具体的な節税金額は、いくらになるのでしょうか?
所得税については、この収入金額によって税率が変わってきますが、仮に子の所得税率が20%だとすると、所得税については、48万円x20%で計算できるので、9.6万円の節税
住民税については、税率は10%で計算できるので、38万円x10%で4.8万円の節税、つまり、年間で14.4万円の節税ができる、ということになるんですね。
なお入院などで、1年以上別居している場合は、同居扱いになり、こちらの58万円の控除が適用されることになっています。
但し、親が老人ホームなどの施設に入居している場合は、こちらの別居扱いになりますので、ご注意ください。
次に、社会保険上の扶養の方ですが、これは、子が勤める会社の健康保険に親が入るので、親は自分で健康保険料の負担をする必要がなくなる、ということなんですね。
因みに、親が健康保険に入っても、子の健康保険料の負担額が上がる、という事はありません。
なお、親を社会保険上の扶養に入れる場合、年齢制限があり、それは、親が75歳になるまで、となっています。
なぜかと言うと、親が75歳になると、親は自動的に後期高齢者医療制度の加入者になるので、子が勤める会社の健康保険には加入できなくなるからです。
最後にそれぞれの手続き方法ですが、これはとても簡単です。
税制上の扶養に入れる場合は、年末調整で勤務先から配られる「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」という書類に扶養する親について記載すればOKです。
一方、社会保険上の扶養に入れる場合は、お勤め先の健康保険組合で、随時、手続きすることができます。
2番目 扶養する条件とは
ということですが、親を扶養するには、条件があるんですね。
税制上の扶養の条件については、生計を一にしていること、と、親の所得が年間で48万円以下であること(*2022年8月時点の金額)
社会保険上の扶養の条件は、生計を一にしていること、親の収入が年間で180万円未満であること(*親の年齢が60歳以上の場合の金額)
ということになります。
で、まず生計を一にしている、ですが、これはどういうことかと言うと、要するに、お財布は一つ、ということで、同居していれば、原則として「生計を一にしている」ということになりますし、別居している場合は、
定期に仕送りなどをして 親の生活費の一部を子が負担している実態があれば、生計を一にしている、とみなされます。
詳しくは、この後の事例を見ながら、説明をしたいと思います。
3番目 税制上の扶養の事例
ということですが、先ほどのモデルを使って、説明したいと思います。
この人は、現在70歳で子とは別居して生活しており、収入は年金のみで、その金額は年間で150万円だった、ということでしたよね。
そして、親を税制上の扶養に入れる場合の条件は、生計を一にしていること、親の所得が年間で48万円以下であること(*2022年8月時点の金額)となっていました。
で、この親の所得の出し方ですが、親の収入が年金のみの場合は、公的年金等控除額の表を見れば、計算することができます。
この表は、国税庁のHPに掲載されているものですが、65歳未満と65歳以上で表が分かれています。
ここが一つのポイントになります。つまり、年齢によって計算方法が変わってくるんですね。
このモデルの場合は、年齢が70歳なので、親の所得の計算式は、収入金額ー110万円、なので、150万円ー110万円で40万円
所得が40万円ですから、収入条件を満たしている、ということになります。
ではもし、この親の年齢が65歳未満だったらどうでしょうか。
その場合は、親の所得の計算式は収入金額x0.75ー27万5千円、これを計算すると、所得金額は85万円となり、収入条件を満たしていない、と言うことなってしまうんですね。
以上をまとめると、親の収入が年金だけの場合は、
親の年齢が65歳未満の時は年間の年金収入は108万円以下、65歳以上の時は年間の年金収入は158万円以下、であれば、親を扶養に入れることができる、ということになります。
4番目 社会保険上の扶養の事例
ということですが、ここでも、先ほどのこのモデルを使って、説明したいと思います。
つまりこの人は、現在70歳で子とは別居して生活しており、収入は年金のみで、その金額は年間で150万円だった、ということですね。
そして、親を社会保険上の扶養に入れる場合の条件は、生計を一にしていること、親の収入が年間で180万円未満であること(*親の年齢が60歳以上の場合) となっていましたよね。
ここが収入になっていますから、このケースの場合は、収入条件は満たしている、ということになります。
ですが、実は、ここからが重要なポイントになります。
と言いますのも、社会保険上の扶養については、単純に「180万円未満」という金額条件を満たしているだけでは、ダメなんですね。
どういうことかと言うと、下記のような追加の条件があるんです。
つまり、同居の場合は、親の収入が子の収入の半分未満であること
別居の場合は、子の仕送り金額は、親の収入を上回っていること
という事なんですね。
こういうところが、本当に、ややっこしいですよね。
このモデルの場合は、こちらの別居に該当しますので、子からの仕送り金額が、年間150万円を上回っていればOK、ということになります。
でも、ちょっと待ってください。
冷静に考えれば、年間で150万円以上も仕送りするなんて、かなりハードルが高いですよね。
つまり、別居する親を扶養する場合は、この収入条件がネックになって、条件をクリアーできない、と言う人が多いんですね。
なお、同居の場合だと、親の収入が子の収入の半分未満であること、ということなので、急に扶養のハードルが低くなるんですね。
5番目 扶養するデメリットについて
ということですが、これが本日の最後になります。
扶養する主なデメリットとしては、
① 子の経済的な負担が増える
② 親の高額療養費制度の自己負担限度額が高くなる場合がある
ということなんですね。
まず、①の子の経済的な負担が増える、ですが、特に別居している場合に当てはまります。
つまり別居している場合、扶養の条件を満たすために継続して仕送りをしなければいけないので、そのことが逆に、子の経済的な負担になる場合がある、ということなんですね。
また仕送りを一度始めると、途中から、「仕送りやめま~す」なんて、なかなか言いにくいですから、その点もデメリットになる可能性があると思います。
次にこ②の親の高額療養費制度の自己負担限度額が高くなる場合がある、ですが
まず、この高額療養費制度とは、入院や手術などで高額な医療費がかかった際に一定の自己負担限度額を超えた分について後で払い戻される、という制度なんですね。
で、この自己負担限度額ですが、これは、親を扶養する子の所得で決まる、ということになっています。
なので、もし親を社会保険上の扶養に入れた後に、親が手術などで高額な医療費がかかってしまうと、事項負担限度額が高くなるので、高い医療費を負担せざるを得ない、ということになるんですね。
ということで、親を扶養する場合、メリットもありますが、このようなデメリットもある、という事は、是非知っておいてくださいね。
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