実際の製造現場の声です。製造会社をつなぐプラットフォーム「アスナロ」の運用を担当している、丸菱製作所の戸松裕登さんです。
ーーー戸松さんの会社では人手不足、どんなふうに感じてますか。
労働人口の減少だったり、少子化であったり、そもそもの製造業のイメージの部分だったり、さまざまな要素があります。ただ、世代交代のことを考えていくと、その元になる工科高校の数が減少してしまったり、その卒業生が減ってしまっていることが顕著になっており、大手の一位希望でほとんど就職が決まって、実際に我々のような中小企業には回ってこないという実感があります。
例えば、私の会社の魅力が不足してるだけかもしれないですが、今年はまだ1名も応募がない状況です。
ーーー学校自体も少なくなってしまってるということは、志す人たちも少なくなってきているということかなと思いますが、いかがでしょうか。
製造業自体は「面白い技術も作る」というやりがいのある仕事なんですけども、イメージも先行してしまっているところがあるので、これからの課題だと思っています。
ーーー人手不足が事業者もなくなってしまうということに繋がってしまうんですか
人手不足というところは、いろんな層の問題もあると思います。例えば、働く人の層というのがいまの話なんですけれども、逆に次の世代にもの作りを継いでいく経営者の人手不足っていうところが、実際には発生している部分もあると思っています。
ーーー一般的に優秀な社員に継がせるだとか、ある種は同じ同族で継がせるだとか、そういったことを思い浮かべるんですけれども、そうもいかなくなってるんですか
いま製造業の中では、継ぐ人がいないという問題と、継ぎたくないという問題。そして一番悲しい「親が継がせたくない」というような、そういった問題も発生してきているのが現状だと思います。
ーーー親が継がせたくない。自分の親族だったり子供に引き継いできたものを継いでほしいって思うのかなって思うんですけれども…
父の世代は「どうしても継がせたい」という気持ちが強いところがあると思います。
父の世代の高度経済成長期は、競って設備投資だったり人員を増やして、規模を拡大していき、成長が成熟して、製造の拠点を海外に展開することが多くなってきました。ただ、いま製造業がこの過去の30年の生産設備とか遺産を使い倒してきている、そんな時期に来ていると思います。寿命が来ておりまして、その岐路にたっています。このまま続けていけるのかどうか、ここに大きな疑問が出ているんじゃないかなと思っています。
ーーーそういう状況は御社でも実際に直面されたんですか。
私も跡継ぎで、もの作り企業の3代目にあたるんですけれども、工場の中にある30年ものの機械がたくさんあり、これをどういうふうにしていくのか、非常に不安なところでした。そこで、次の30年間で、今の枠組みでは続けることができないというところもあって、新しい枠組みを作ろうというところで、製造業者同士を繋ぐ「ASNARO（アスナロ）」というプラットフォームを開発しました。
ーーーASNARO（アスナロ）があると横の繋がりが密になるのかなってイメージを持ったんですけれども、そういったところ狙いだったんですか。
いままでの商流というのは、基本的には大手のメーカーのサプライチェーンがあって、我々が大事にしているサプライチェーンへの供給責任を果たすことが一番となっています。ただ、主体が海外に移っているなか、供給責任だけで我々単独で設備投資だったり、人員を確保していくと、いまの枠組みだけで継続できないことも課題があると思います。
いまの商流では、我々が黒子になってしまっていて、隣の会社が何をやってるかもわからない、そこをうまくシェアしていくことによって、設備投資をしてもきちんと続けていける。続けないという選択をした方も、今の供給責任を果たしながら、どこかに頼んで同じ仕事を続けていける、そういう場所を作りたいと思っています。
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