【弓道】吉本清信 生涯最後の一手 2022年11月1日
日時 2022年11月1日
場所 布目弓道場
年齢/段位 78歳/範士九段
2022年11月1日吉本清信は生涯最後の弓を引きました。
いずれくると思っていたその日は急に訪れました。
その軌跡を最後の射の映像とともにお送りします。
2022年3月に脳のリンパ腫再発が分かり、認知症と失語症になりました。
その後抗がん剤治療により奇跡的に回復しました。
8月からは弓を再開し、9月、10月初旬と順調に回復しているように見えました。
10月24日、MRI検査で、脳と延髄への再発がわかりました。
有効な治療法は無く、治療しない方針を選びました。
10月29日、まだ歩けて立ちすわりもできていました。
11月1日、主治医に治療をしない旨伝えて道場に来た父。
「今日は疲れたから帰りたい」と言っていました。
歩く姿をみて私は衝撃を受けました。
あきらかに右足を引きずっていました。
それを見た瞬間、私は今後父がもう弓を引けないことを悟りました。
「早く帰ってもいいから着物を着て最初に一手引いて欲しい」と父に伝えました。
「今日が弓を引く最後の日になる」
本人はわかっていたかもしれないし、わかっていなかったかもしれません。
一緒に引く西浦先生、そして見る我々は、「今日が最後」と覚悟して見届けました。
立つのがやっと、引くのがやっとの状態でしたが、引いた後、父は笑っていました。
生涯を弓に捧げた弓士の、生涯最後の射をご覧ください。