オンライントーク:原発事故の後始末~「燃料デブリ取り出し」ありきではない、もう一つの選択肢とは ‐ まさのあつこさん×川井康郎さん (2024年9月27日)
資料はこちら>https://foejapan.org/issue/20240910/20272/
今年8月22日、東電が福島第一原発2号機の燃料デブリの取り出しに着手することが大きく報道されました。実態はあくまで試験的なサンプリング採取であることに注意が必要です。燃料デブリの試験取り出しの開始は、これまで、取り出し装置の開発の遅れ、堆積物が入口を塞いでいたなどの問題が発生して3回延期され、当初予定の「2021年中」から2年半以上遅れています。今回は、取り出し装置を構成する押し込みパイプの順番が間違っていることが現場で判明していったん中止。その後再開されましたが、カメラの画像がうつらなくなるトラブルが発生し、いったん取り出し装置が引き出され、作業は振り出しに戻りました(9月27日現在)。
燃料デブリ取り出しがあたかも至上命題化している感がありますが、880トンにも及ぶデブリの取り出しは果たして現実的なのでしょうか。今回試験取り出しを予定しているデブリの量は3グラム。20センチメートルの距離で1時間当たり24ミリシーベルトという放射線量を上限に決められました。
高線量を発するデブリの取り出しは、作業員の被ばくを伴います。危険をおかしてデブリを無理に取り出すのではなく、建屋全体を外構シールドで覆い、デブリの冷却を空冷式に切り替えた上で、「長期遮蔽管理」を行うことも提案されています(注2)。
作業員の被ばくの最小化、地域の人々の安全といった側面から廃炉行程全体を見直す時期にきているのではないでしょうか。
このたび、原発事故をめぐり東電への取材を続けているジャーナリストのまさのあつこさん、原子力市民委員会技術・規制部会の川井康郎さん(元プラント技術者)をお招きし、デブリ試験取り出しがどうなっているのか、デブリ取り出し報道の影で論じられていない、廃炉行程全体の問題点についてお話しをいただきました。
注1)核燃料が溶け落ち、原子炉の構造物が溶けたものと一体化して固まったもの。
注2)原子力市民委員会原子力規制部会『燃料デブリ「長期遮蔽管理」の提言 ―実現性のない取出し方針からの転換―』