【報ステ】“最先端”沸く一方…トランプ氏がもたらす“光と影”まもなく大統領就任式【報道ステーション】(2025年1月20日)
■ワシントンはお祭り騒ぎ
就任式を翌日に控えたアメリカの首都ワシントン。選挙で勝ってから2カ月経ちますが、トランプ氏は19日、就任を前にまた“勝利集会”を開きました。
トランプ次期大統領
「明日、皆さんが喜ぶ大統領令をたくさん出す。就任前から予想外の結果を目の当たりにしている。自慢したくはないが言っておこう“トランプ効果”だ」
“トランプ効果”と呼べる現象は確かに起きています。
トランプ次期大統領
「今日からTikTokが復活した」
アメリカで利用禁止となり、サービスが停止された中国系アプリ『TikTok』の再開。トランプ氏が大統領令を出してTikTok禁止法の施行を猶予すると表明したがゆえのことです。
市内の別の場所ではトランプ支持者による舞踏会が開かれていました。
トランプ支持者
(Q.次期大統領を支持する最大の理由は?)
「“アメリカファースト”の施策です。経済への取り組みを評価しています」
「トランプ氏はアメリカ全土の国民の苦労を理解し、声を上げてくれます」
集会にはこの人の姿もありました。“影の大統領”とも呼ばれ『政府効率化省』を率いることとなる、Xオーナ/テスラCEOのイーロン・マスク氏。
イーロン・マスク氏
「この勝利は始まりに過ぎない。今後重要なのは、実際に大きな変化をもたらすことです。アメリカを再び偉大な国にするために」
蜜月はマスク氏とだけではありません。この後、連邦議会議事堂で行われる就任式。マスク氏を筆頭に、メタCEOのマーク・ザッカーバーグ氏や、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏といった世界の富豪ランキング上位3人。そして、トランプ氏が手を差し伸べたTikTokのCEO周受資氏のほか、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏、アップルCEOのティム・クック氏、グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏、テクノロジーの巨人たちがそろって出席すると伝えられています。
■大都市サンフランシスコ 光と影
そうしたテック業界の一大集積地が西海岸、カリフォルニア州。大都市サンフランシスコは街自体もテクノロジーの最先端を進んでいます。
AIを搭載した自動運転のタクシー『ウェイモ』。グーグルの親会社アルファベット傘下の企業が運営するサービスです。サンフランシスコでは今や誰でも利用可能になっています。
大越健介キャスター
「普通にタクシーに乗ってる感じだけど。気が付くとドライバーがいないんだっていう」
「サンフランシスコの街では全然珍しいことじゃないんですよね」
テクノロジーの最前線を走り、世帯年収は約2000万円(中央値)とアメリカの大都市で最も裕福なサンフランシスコ。しかし、その足元ではとてつもない貧困と絶望が広がっています。ホームレスを支援する人はこう言います。
ホームレス支援団体『アーバン・アルケミー』ロス・ミルカリミ氏
「彼らの問題は家がないだけではない。ドラッグこそが人類の危機です」
最大の問題が合成麻薬フェンタニルです。
ホームレス支援団体『アーバン・アルケミー』ロス・ミルカリミ氏
「フェンタニルはヘロインよりも50倍も強力。背筋を伸ばせず、ずっと前かがみの人がいるでしょう。あれはフェンタニルが背骨を弱くしてしまうから」
過剰摂取で命を落とす人が少なくありません。支援者の活動によって減ってはいるということですが…。
大越健介キャスター
「声をかけても拒否されるということが非常に多いそうです。拒否をされる、お前には関係ないというようなことを言われるけれども、何度も何度も諦めずに声をかける。そのうち何%かは呼び掛けに応じてシェルターに入る。それでも、これだけの人が路上で暮らしている、薬物に侵されているという現実はやはり厳しいものがあるなと思います」
この街では仕事を持っていても家で暮らせない人が大勢います。路上に何台も並ぶキャンピングカー。ハミルトン・サントスさん(59)は、2年前からキャンピングカーで暮らしています。
ハミルトン・サントスさん
「家賃なんて払えない。みんなAIに仕事を奪われて、仕事も給料も減っている。とにかく家が高すぎる。
ピザなどのデリバリーで生計を立てていて、収入は月に60万円を超えることもあるそうですが、ここでの生活が続いています。
ハミルトン・サントスさん
「車内のほとんどすべてが拾い物なんだ。テレビ、ポスターにステレオ、ベッドも全部。『誰かのガラクタも誰かにとって宝物』って言うだろう」
投票には行かなかったものの、ハリス氏と比べたら断然トランプ氏を支持するといいます。
ハミルトン・サントスさん
「政治はビジネスと同じで、結局は権力とカネだ。うちの親が出馬しない限り、誰がやっても同じだ。興味はない。昔も今も変わらず公約は実行されない」
広がる経済格差と絶望感。民主党の牙城であるサンフランシスコでも、トランプ氏への支持は1.5倍以上に増えています。
■“テック業界の巨人”を味方に…
自らを“労働者の味方”と位置付けて再選を果たしたトランプ氏。その一方で、マスク氏という世界一の大富豪から支持とカネを取り付け、次期政権の要職として起用しようとしています。
就任式前日の夕食会にはマスク氏だけでなく、ベゾス氏の姿もありました。
CNN
「ベゾス氏がマスク氏に歩み寄る姿が見えます。何やら話し込んでいます。イバンカ氏はじめ、トランプ一族も勢ぞろいです。ベゾス氏はかつてこんなことを言っていました。『トランプをロケットの片道切符で宇宙に放ってしまえ』」
「“勝利は不和をも修復する”政治の世界では勝者のもとに行列ができるものです」
かつては対立し「投獄する」と脅されたこともあるザッカーバーグ氏もマッチョな姿勢を示し、トランプ氏に同調する姿勢が伺えます。
ザッカーバーグ氏(11日)
「私たちの社会の多くが去勢されたような状態になっています。攻撃性をもう少し称賛する文化を持つことには、非常に大きなメリットもあります」
■テック業界 求めるのは「規制緩和」
テック業界の空気をよく知る人物に話を聞くことができました。その人物は、高層マンションの33階にオフィス兼住居を構えています。
スタートアップ投資家 チャッピー・エイゼル氏(25)
(Q.街並みがすべて見渡せる?)
「そうです。一望できます。街を見渡しながら、ここで時間を過ごすことが多いです」
アップルなどでの勤務を経て、AIスタートアップに投資する投資家に転身した、エイゼル氏。AI業界向けのコミュニティー団体を設立し、国内外に支部を持っています。個人としては今も昔もトランプ支持ではないそうですが…。
スタートアップ投資家 チャッピー・エイゼル氏
(Q.トランプ政権を歓迎する?)
「ほとんどの人は前向きです。政権が技術革新へ関心を強めていて、そのことを歓迎しています。トランプ氏と手を組むマスク氏は革新的な人物です」
業界がトランプ氏に期待するのは規制緩和です。
スタートアップ投資家 チャッピー・エイゼル氏
「意外にも、この業界では政治の話が少なくて、人の関心はイノベーションをより速く多く生み出すことにあります。規制緩和を期待するのも革新を加速させてくれるから。それが最大の関心事です」
(Q.ここから見ると壮観ですが、街中では路上生活者を多く見かけます。この格差の拡大をどう受けとめていますか?)
「この数年間で、この街で見た最もすてきな取り組みがAIです。業界ではAIを活用した富の格差や現状を改善する議論がされています。『AIは富める者をさらに裕福にするつもりか』と皮肉られますが、本当に求めているのは『AIはどのように万人に機会を与えられるか』です。その意気込みをここでは毎日のように感じられます」
■“超格差”が生む トランプ氏への期待
ワシントンにいる大越健介キャスターと中継を結びます。
(Q.民主党地盤のサンフランシスコでも、貧富を問わず様々な階層の市民がトランプ氏を支持しているのは意外にも感じましたが、取材してどうでしたか)
大越健介キャスター
「かなりトランプ氏の支持者が増えているのが印象的で、サンフランシスコでの取材は、私にとって考えさせられることが非常に多いものでした。これまでグローバル化の波に取り残された形の労働者たちが、トランプ氏の支持基盤を作ってきているということは度々指摘されてきましたが、グローバル化の先端を行く人たちもまた、トランプ氏の支持に回る動きが出てきています。私たちが取材した、いくつものAIベンチャーを束ねるエイゼルさんは、25歳という若さです。テクノロジーこそが社会を発展させるという強い信念を持っていました。そのエイゼルさんは、トランプ氏ならば様々な規制緩和に踏み切ってくれると大きな期待を示していました。イーロン・マスク氏がトランプ次期政権の中で存在感を高め、インスタグラムなどを運営するマーク・ザッカーバーグ氏などのテクノロジーの超大物たちが、こぞってトランプ氏の支援に回っていることも非常に心強いと話していました」
(Q.就任式には、テクノロジー業界の超大物たちが参列する予定ですね)
大越健介キャスター
「最先端のテクノロジーといった、アメリカの強みを伸ばすという光の部分では、トランプ氏の大胆さが功を奏する可能性は確かにあるのかもしれません。しかし、性急に規制緩和を進めた場合の弊害、例えば生成AIによるフェイク情報がさらに蔓延してしまうといった恐れにどう対処するかといった点では、トランプ氏とその周辺でどこまで十分な議論が行われていたかは疑問です。それ以外にも、現代社会の影の部分に対し、どこまでトランプ氏の関心が向けられるのか。サンフランシスコのダウンタウンで薬物にまみれて路上生活をせざるを得ない人たち。そして、真面目に働いても、高い家賃のために車の中で生活せざるを得ない人たち。そうした人たちに、人道的な救済の道は開かれるのかというと、そこは懐疑的な気持ちにならざるを得ません」
トランプ氏はどんなアメリカにしていくのか。注目されているが、自らの権限で強力な行政命令を出せる『大統領令の署名』です。現在、検討されているのが、地球温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』の再離脱や、関税の強化、不法移民の強制送還などです。トランプ氏は「就任初日に100近くの大統領令に署名する」としています。
(Q.就任式まで、いよいよ時間が迫ってきました。大越さんはどこに注目していますか)
大越健介キャスター
「トランプ氏が繰り返し強調してきた政策を、大統領令などによってどこまで本気で実行に移すかということに尽きると思います。例えば、中南米などからの不法移民については『史上最大規模の強制送還を進める』と述べ、速やかに実行に移す考えを示しています。まずは、こうした国内で注目を集めるテーマについて容赦なく実行して見せることで、トランプカラーを明確に打ち出してくるものとみられます。一方で、強い敵対姿勢を示してきた中国とは先日、早々と習近平国家主席と電話会談し、経済面で連携すべき点は連携するという柔軟な政治姿勢を示してもいます。いわゆる“高めのボールを投げる”、つまり吹っ掛けるやり方を基本としながら、そのうえで、どの政策で強硬姿勢を貫き、どの政策で現実的な落としどころを探るのか。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
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