人工呼吸器などを使用し、医療的ケアが日常的に必要な子ども、医療的ケア児。厚生労働省によると、その数は医療技術の充実などを背景にここ15年で2倍以上に増え、全国に約2万人いるとされています。
そんな医療的ケア児とその家族を支える取り組みが、鹿児島県内から全国に向けて広がっています。
「よろしくお願いします」「みーちゃんお着替えしようか?」
脳性麻痺で寝たきりの、内藤美月ちゃん、8歳。
「こちらを向けますので入れ込んでくださいね」
七五三のお参りに行くため、お着替えの時間です。
寝たきりの子供の着替えは大人2人がかりでも一苦労ですが…
「横をテープで留めますね」「はい!着られました~」「かわいいねみーちゃん」
わずか3分ほどで簡単に着ることができたこの着物。実は、鹿児島市の訪問看護師の堀之内香織さんが開発したものです。
背中ではなく体の横で結べる帯など、簡単に着脱ができて体に負担のない作りになっています。
母・内藤祥子さん
「普通の所に行ってもレンタルの着物は着られない。唾液も出たりするからそういう関係で気が引けてて」
そんな家族の思いを形にしたのが、堀之内さんが手がけるレンタル晴れ着、Holy Angel(ホーリーエンジェル)です。
看護師として10年以上小児病棟に勤務していた経験が、開発に至るきっかけだったと言います。
Holy Angel 堀之内香織さん
「わが子にかわいいものを着せたい親の思いを改めて感じた時に『(既存のものは)病棟で着せにくかったな』と。そういうものが世の中にないのであれば、私が作ってみようかなと」
和服からドレス、スーツまで。全て寝たまま着られるようリメイクされたものです。
Holy Angel 堀之内香織さん
「被布(ひふ)といって上から羽織るもので、これも全部一緒にくっついている。一緒にはがせる。やっぱりずれやすいので、小さいお子さんは。このシーズンは寒いので温かいようにこの生地を入れた」
呼吸器回路カバーも同じ生地で特注。看護師ならではのこだわりも随所にちりばめられています。
宅配でのレンタル事業を開始して2年近く。注文は年々増え続け、今ではほとんどがSNSやホームページを見た県外の人からの注文だといいます。
美月ちゃんもこれまで誕生日などお祝いの節目の際にはドレスをレンタルしてきたリピーターです。医療的ケア児とその家族にとって節目のお祝いを“当たり前”にできる特別なサービスです。
ヘアメイクもばっちりしてもらった美月ちゃん。7歳を迎えた前の年は体調を崩して外出がかなわず、1年越しとなる七五三。成長を祝う家族の喜びもひとしおです。
兄・響さん(18歳)
「お出かけすることが少ないので、こうやって来られてうれしい。(美月も)うれしそう」
母・祥子さん
「よかったよかった。こうやって来られてよかったねえ、よかったよかった」
Holy Angel 堀之内香織さん
「お祝いの節目が人生の中にみんなある。私たちもその節目節目のお手伝い、そのハードルを少しでも下げられるような晴れ着をと思って製作したので、それを着ることでお祝いの壁を低くして家族みんなで楽しめる時間を過ごしてもらえることが一番うれしい」
医療的ケア児の増加に伴うこのレンタルサービスの需要の高まりは、さらに堀之内さんを突き動かしています。
Holy Angel 堀之内香織さん
「最初は子供だけにスポットを当てていたが、今年(成人)女性の晴れ着を作った。年明けの成人式に1人でも2人でも着てもらえたらいいかなと」
鹿児島から全てのケア児、そしてその家族を笑顔にする取り組みが広がっています。