真冬の東北でイセエビ 一方で仙台湾のカレイが釣れない…黒潮蛇行の影響強く 宮城の海で何が? (25/02/06 19:12)
宮城の海で異変が起きています。イセエビが真冬にとれるようになっただけでなく、これまでよくとれていたカレイが、急激に減っていることも分かりました。
多賀城市内にある釣具店。ここ数年、取り扱う商品のラインナップが変わってきたといいます。
キャスティング多賀城店 小畑明彦副店長
「以前までは仙台湾のカレイ(マガレイ)釣りが人気があって、当店でも一番大きくスペースを取って展開していたんですが、仙台湾でのカレイの釣果がどんどん減りまして、それに伴って現状は売場をだいぶ縮小してコーナーを設置しています」
以前は壁一面にマガレイを釣る仕掛けを置いていたそうですが、現在は3分の1にまで縮小。そこに取って代わったのが…
キャスティング多賀城店 小畑明彦副店長
「近年マガレイに代わって、マダイとか、あとはタチウオが釣れ始めたことで、当店でもそちらの方に仕掛けなどをシフトして、売場コーナーを設置しました」
Q、マダイ、タチウオは暖水性?
「そうですね、ここ最近ではマダイ、タチウオのほうが人気の釣りものとして当店でも多くの方にお買い求めいただいております」
その一方、冷水性のマガレイの釣果は、以前に比べるとかなり厳しいようです。
キャスティング多賀城店 小畑明彦副店長
「(マガレイは)もうだいぶ前の話ですが、100匹とかそういった時期もあったんですが、ここ数年は10匹釣れるかどうかという状況でした」
宮城の海でカレイが釣れなくなったのでしょうか?その真相を確かめるため、南三陸町へ向かいました。
南三陸町歌津の漁師、高橋直哉さん。ワカメやホタテ、カキの養殖業の傍ら、震災後に初心者向けに特化した釣り船「手ぶらでフィッシング」を企画。カレイやアイナメなどの魚が初心者でも面白いように釣れることから、南三陸でも人気の観光スポットになりました。ところが今は…
漁師 高橋直哉さん
「今は(手ぶらでフィッシングは)お休み中です」
Q、お休みはいつから?
「2024年のゴールデンウイークに1回出ただけです。状況がかなり厳しい。釣って楽しむということが難しい状態だったので、お休みにしました。狙いがカレイ、砂地にいる簡単に誰でも気軽に釣りができるような魚が狙いだったんですけど、(冷水性の)カレイが少なくなっているというのと(暖水性の)フグが大量に増えてしまいまして」
高橋さんは、漁師の先輩が去年の年末に南三陸町の海でとったというイセエビの写真を見せてくれました。同じ漁師は、先月もイセエビを捕獲。暖かい海にいるというイメージが強いイセエビが、真冬のこの時期に東北の海でとれているのです。南三陸町で海の生物を研究している自然環境活用センターの研究員・鈴木将太さんは、南三陸の海の現状をこう分析しています。
南三陸町自然環境活用センター研究員 鈴木将太さん
「一番の原因は黒潮の蛇行ですね。黒潮の蛇行は2018年ぐらいから始まっているんですけども、その蛇行によって東北沿岸にも黒潮の影響が強く出始めるようになってしまった。その影響が2023年からすごく顕著なものになっていまして」
暖流の黒潮は通常、日本列島の太平洋沿岸を北上し、千葉県・房総沖から東へと進路を変えます。北からは寒流の親潮が張り出し、本来であれば宮城県沖まで達するのですが…
南三陸町自然環境活用センター研究員 鈴木将太さん
「2023年までは蛇行して暖かい水が来る程度だったんですけども、2023年以降は常に東北沖に黒潮続流の影響が残ってしまっていて、夏に暖かくなるのは当たり前なんですけど、冬も高い水温が南三陸町の沖で維持されていて」
自然環境活用センターによりますと、南三陸町沖合の現在の水温は13度から14度。平年に比べ4度から5度ほど高く、イセエビが冬を越すには十分だといいます。一方、県内でのカレイ・ヒラメ類の水揚げ量は2018年を境に、大きく伸び悩んでいます。漁獲量の減少は、黒潮の蛇行が始まった時期とちょうど重なります。
南三陸町自然環境活用センター研究員 鈴木将太さん
「この今の海の状況を予測するのはなかなか難しい部分がありまして、今の我々の手持ちのデータだけでは、今後どうなるかはわからない状態ですね。ただ南の魚が増えているという事実があって、北の魚が減っているという事実があるので、それをきちんと調査してモニタリングしていくと、今後何かが改めて分かってくる可能性もあるかなというふうに思います」
自然環境活用センターでは今後、潜水調査なども行い、南三陸町沿岸の海洋生物の動向について研究を進める方針です。