発生から6日目となった岩手県大船渡市の山林火災の被害は拡大を続けています。3日になって新たに48世帯が暮らす住宅地から火の手が上がっているのが確認されました。大船渡市では人口の12%が避難先での生活を送っています。
■「情報がない」燃えた町を見守る住民
山の上から噴き出した炎。燃えていたのは赤崎町の外口地区。帯状に広がった炎は、すぐ近くの住宅地にも迫っていました。対岸には、朝からたくさんの人の姿がありました。消火活動を見守ることしかできません。
赤崎町長崎地区から避難している女性
「ぜんぜん情報がないから、毎日ここに見にきて、隊員のやりとりを聞くしかない」
こちらの女性は、大船渡から離れて暮らしていましたが、1年半前に念願だったカフェを開いたばかりでした。
赤崎町長崎地区から避難している女性
「生まれ育った町なので、そういう思いもあり帰って来てカフェを始めた。まさか火事でこういうことになるとは」
外口地区には48世帯が暮らしています。市は建物への被害を84戸とみていますが、この数は出火初日に発表されたもの。その後も増え続けている恐れがあります。
■焼失範囲拡大…3700人超が避難
焼失した範囲はどんどん広がっています。県が公表した資料も追い付いていないように、火は外口地区まで達しました。西の永浜地区・蛸ノ浦地区にも炎が迫っているといいます。さらに、三陸町綾里の北側でも延焼が拡大。甫嶺地区にも火の手が及ぶ恐れがあるといいます。焼失面積は、先月28日から900ヘクタール広がって2100ヘクタールとなりました。
山火事が起きてから6日目。なぜ延焼を食い止められないのでしょうか。
大船渡地区消防組合 小野田利文消防次長
(Q.消火が進まない理由は乾燥・強風以外にあるのでは)
「夜間の消火ができないことが大きく影響していると思われる。自衛隊からも夜間には空中消火ができないことを確認している」
夜の活動は住宅付近が中心で、山に登っての消火活動はできていないといいます。
避難指示エリアにある中学校の生徒が集まって勉強会が開かれました。県立高校の入試は5日からです。
参加した生徒
「家の方の山まで火が来ているので心配はある」
「将来はこういう経験を通して色んな人に寄り添える人になりたい」
中学校の教員
「心が折れてしまった子もいる。自分の家が燃えた写真を私に見せて『先生、何もなくなった』という子もいて。言葉が見つかりません」
大船渡市では今、人口の約12%にあたる3782人が避難先での生活を送っています。物資は行き届いているというなか、被災者が今求めているのは…。
赤崎地区から避難している人
「情報ですかね。物質的なものは足りているが、どういう状況か分からない」
長崎地区から避難している人
「全然様子が分からない。メールで娘だの息子から来る方が詳しい」
「わたし機械音痴で」
■“地元ならではの情報を”新聞社の奮闘
そうした被災者に毎日、情報を届ける地元の新聞社を取材しました。大船渡に本社を構えて66年になる東海新報です。午後5時前、紙面づくりが佳境を迎えていました。
東海新報社 鈴木英里社長
「新しく市からの情報が更新されてくる時間帯なので、最新の情報・多くの情報を届けられるよう工夫している時間帯」
4日の1面は、もちろん山火事なのですが、スペースを空けてねじ込んだのは、直前に飛び込んできたドジャース・佐々木朗希投手による地元支援でした。焼失した範囲を示す図は、市の発表に頼るだけではなく、記者が目で見た情報を加えるなど地元ならではの紙面づくりにこだわります。
東海新報社 鈴木英里社長
「SNSにはスピード性や即効性でかなわないところがあるが、その中には真偽不確かな情報もある。私たちは“オールド”と言われながらも正確な情報を伝えていくことで、地域が混乱することを防いでいきたい」
3日午後8時ごろに印刷を終えた新聞は早速、明日の朝刊として避難所へ届けられました。
東海新報社 鈴木英里社長
「今、被害に遭われている方たちが取り残された気持ちになるのがつらい。同じ市民として同じように心を痛め、自分事だと感じてもらえるような、いつ何時、避難者になるか分からないということも伝えていきたい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp