0:00 (1)はじめに
0:23 (2)抗不安薬の長所と短所
3:31 (3)抗不安薬をよく使う精神疾患3つ
3:40 ①うつ病
4:47 ②パニック障害
6:30 ③社会不安障害
8:13 (4)まとめ
抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)は、依存や耐性の問題から最近は使用されにくくなってきましたが、急な落ち込みや不安への対策などには今でも必要な場面があります。うつ病で抗うつ薬が効くまでの間や、パニック障害及び社会不安障害での不安発作の時などに使います。
「抗不安薬をよく使う精神疾患3つ」について、精神科医が9分でまとめています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
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(1)はじめに
近年、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は依存性が懸念される一方で、即効性があり急な不調に有効性が高い薬剤として知られています。本稿では、抗不安薬の特徴を概観した上で、この薬剤が特に活用される代表的な精神疾患について解説していきます。
(2)抗不安薬の長所と短所
### 代表的な抗不安薬
現在、臨床現場でよく用いられる抗不安薬には、主に以下のようなものがあります:
エチゾラム(デパス)は、効果が短く実感しやすい特徴がありますが、依存の問題から近年は使用を控える傾向にあります。ロラゼパム(ワイパックス)は、エチゾラムよりもやや効果が持続し、頓服薬として使用されることが増えています。ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)は、効果が長く、相対的に依存性が低いため、定期的な使用が必要な場合に選択されることが多くなっています。
抗不安薬の特徴と長所
抗不安薬の最大の特徴は即効性にあります。服用後15~30分程度で効果が現れ、不安や緊張を速やかに緩和することができます。また、目立った副作用が少なく、抗うつ薬や抗精神病薬と比較して心理的な抵抗感も低いのが特徴です。
抗不安薬の短所と課題
一方で、抗不安薬にはいくつかの重要な課題があります。まず、これらの薬剤はあくまでも対症療法であり、薬物が体内にある間のみ効果が持続します。また、継続使用により耐性が形成され、同じ効果を得るために徐々に増量が必要となることがあります。さらに、依存と離脱症状の問題も無視できません。抗不安薬への依存が形成されると減薬が困難になり、急な中止により離脱症状が出現する可能性があります。
適切な使用場面
抗不安薬が特に有効なのは以下のような場面です:
- 突発的な不安や落ち込みへの対応
- 不安や緊張による病状悪化を防ぐ必要がある場合
- 他の薬剤(例:抗うつ薬)の効果発現までの期間をカバーする場合
一方で、以下のような場面では慎重な判断が必要です:
- 慢性的な不安が持続している場合
- 根本的な対処を行わず、習慣的に使用する場合
- 依存傾向が認められる場合
(3)抗不安薬をよく使う精神疾患3つ
①うつ病
うつ病は、脳内物質セロトニンの不足が背景にあるとされる精神疾患です。主たる治療は抗うつ薬(SSRI等)による薬物療法ですが、効果発現までに2~4週間程度を要します。
抗不安薬は、この抗うつ薬が十分な効果を発揮するまでの期間をカバーする目的で併用されることがあります。また、ストレス等により急な落ち込みや不安が生じた際の頓服薬としても使用されます。ただし、この場合も他のリラックス法と組み合わせ、必要最小限の使用にとどめることが重要です。
②パニック障害
パニック障害は、急激な心身の不調(パニック発作)が反復する不安障害です。人口の約1-2%が罹患するとされ、特に20代女性での発症が多いとされています。
抗不安薬は主に以下の3つの場面で使用されます:
1. パニック発作への対応:頓服使用により15~30分程度で症状改善が期待できます。
2. 抗うつ薬の効果発現までの期間:社会生活への影響が大きい場合に併用を検討します。
3. 脱感作療法の補助:不安を惹起する場面への段階的な曝露の際のサポートとして使用します。
また、実際の使用の有無にかかわらず、「お守り」として携帯すること自体が安心感につながる場合もあります。
③社会不安障害
社会不安障害は、対人場面での強い不安と緊張が特徴的な精神疾患です。慢性的な不安に加え、パニック障害に類似した急性の不安発作を伴うこともあります。
抗不安薬の使用場面は主に以下の3つです:
1. 急性の不安発作への対応
2. 抗うつ薬の効果発現までの期間のカバー
3. 脱感作療法(対人場面への段階的な曝露)の補助
いずれの場合も、抗うつ薬による基礎的な治療と並行して、必要最小限の使用にとどめることが推奨されます。
(4)まとめ
抗不安薬は、即効性という大きな利点を持つ一方で、依存や耐性の形成という課題も抱えています。そのため、うつ病、パニック障害、社会不安障害といった精神疾患の治療において、抗不安薬は補助的な位置づけで使用されることが一般的です。慢性的な不安に対しては抗うつ薬を中心とした治療を行い、抗不安薬への過度な依存を避けることが望ましいとされています。
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【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。