0:00 (1)はじめに
0:20 (2)うつ病とアルコール依存症
3:59 (3)うつ病とアルコールの関係4つ
4:06 ①合併しやすい
5:46 ②自己治療としてのアルコール
7:28 ③アルコールでのうつ病悪化
9:16 ④重なって悪循環になる
10:23(4)まとめ
うつ病とアルコールの関係は深いです。しばしばうつ病のつらさへの自己治療でアルコール多飲や依存が始まり、双方が合併して影響しあい悪循環になることがあります。
「うつ病とアルコールの関係4つ」について、精神科医が11分で説明しています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
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【テーマ】 うつ病とアルコールの関係4つ
(1)はじめに
うつ病になった人のアルコール依存の合併がよく言われます。一方で、アルコール依存になった人のうつ病の悪化や合併もまた指摘されています。この両者の関係はしばしば強く深いものがあります。本記事では、うつ病とアルコールの関係について4つの重要な点を解説していきます。
(2)うつ病とアルコール依存症
まず、うつ病とアルコール依存症について整理しましょう。
うつ病は、落ち込みなどの症状が続く脳の不調です。脳内物質セロトニンの不足などが主な背景とされます。うつ病の主な症状には、心の症状(落ち込みや不安、意欲の低下、集中力の低下)、体の症状(食欲の低下、疲れやすさ、自律神経症状)、行動の変化(人を避ける、声が小さくなるなど)があります。治療の3本柱は、休養、薬物療法、精神療法です。
一方、アルコール依存症は、アルコールの摂取に依存し、それを制御できなくなった状態です。進行すると身体的・精神的依存を合併し、急にやめると離脱症状が出ることもあります。重度になると脳機能の障害や肝臓などの重度の障害も合併し、身体面に重大な影響が出ることがあります。
アルコール依存症の可能性を見分けるCAGEスクリーニングでは、4つの質問のうち2つ以上該当すると要注意とされます。治療としては、断酒(解毒)が必要な場合があり、グループ活動も含めた内省などを主に行います。
(3)うつ病とアルコールの関係4つ
①合併しやすい
うつ病とアルコール依存症は合併しやすいので注意が必要です。うつ病があって2次的にアルコール依存症を合併する場合や、アルコール依存症が続いた結果、2次的にうつ病を合併する場合があります。
うつ病からアルコール依存症への合併では、つらさを和らげる方法として飲酒が増え、次第に飲酒自体が目的となってアルコール依存に至る場合があります。アルコール依存症からうつ病への合併では、脳内バランスの不調やアルコール依存症の慢性化による身体的不調、生活の破綻などがストレスとなり、うつ病のリスクとなります。
合併した場合は、両者の治療を同時並行的に行う必要があります。重度のアルコール依存の場合は、解毒入院を行いながらうつ病の治療を重点的に行い、その後依存症への専門的な治療を並行して行います。
②自己治療としてのアルコール
うつ病のつらさに対して、自己治療としてアルコールを用いる場合があります。アルコールは短期的には不安を和らげ、寝付きを良くする効果がありますが、これらの効果は耐性がつきやすく、長期的には逆効果になることが多いです。
慢性的に自己治療としてアルコールを摂取し続けると、必要量が増加し、多量飲酒やアルコール依存につながります。元のうつ症状は改善せず、むしろ悪循環となって悪化しやすくなります。また、多量飲酒が続くと脳や身体面にも影響し、生活面でも困難が目立つようになります。
③アルコールでのうつ病悪化
多量飲酒が続くと、脳内のバランスの不調からうつ病が悪化しやすくなります。また、多量飲酒による様々な身体不調がストレスとなり、うつ病悪化につながります。アルコール依存症に至ると、さらに悪循環が強くなり、うつ病も悪化します。
アルコール依存症の主な身体合併症には、肝機能障害、食道静脈瘤、筋力低下、脳の機能障害、末梢神経障害などがあります。これらの身体合併症は、さらなるストレス要因となり、うつ病を悪化させる可能性があります。
④重なって悪循環になる
うつ病とアルコール依存症が合併すると、相互に悪影響を及ぼし合い、悪循環に陥りやすくなります。うつ病のつらさがアルコール依存症を悪化させ、アルコール依存症の悪化がうつ病を悪化させるという関係性が生まれます。
この悪循環により、飲酒しないと落ち着いた生活や会話が困難になったり、日常生活全般に支障をきたすことがあります。また、自己判断で急にアルコールを断つと、強い離脱症状が出る場合もあり、専門的な入院治療(解毒)が必要になることもあります。
(4)まとめ
うつ病とアルコールの関係について、4つの重要な点を見てきました。
1. 合併しやすい
2. 自己治療としてのアルコール
3. アルコールでうつ病が悪化
4. 重なって悪循環になる
これらの関係性を理解することで、うつ病とアルコール依存症の複雑な相互作用が明らかになります。両者が悪循環に陥ると、対策が非常に困難になるため、うつ病もアルコール依存症も早期発見と早期治療が極めて重要です。心身の健康に不安を感じたら、速やかに専門医に相談することをおすすめします。
こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
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【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。