0:05 (1)はじめに
0:29 (2)境界知能とは?
2:14 (3)境界知能の目立つ特徴5つ
2:21 ①知的障害未満の知的困難
4:25 ②社会生活の困難
6:06 ③精神不調のリスク
7:52 ④薬や制度がない
9:08 ⑤環境調整が大事
10:55 (4)まとめ
知的障害未満の知的困難を持つ「境界知能」。障害ではないため薬やサポートが現状ない一方で、社会生活では困難が出ます。「環境調整」具体的にはストレスが少ない環境選びが大事です。
「境界知能とは?目立つ特徴5つ」につき、精神科医が要点を約11.5分の動画にまとめています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
府中こころ診療所 https://fuchu-kokoro.com
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↓↓内容の詳細は下記になります。
(1)はじめに
精神疾患セルフチェックの今回のテーマは「境界知能とは?目立つ特徴5つ」です。知的障害まではいかない知的機能の困難がある「境界知能」は、障害まではいかないことからサポートを受けにくいという困難もあります。
(2)境界知能とは?
「境界知能」とは、知的障害未満の知的機能の困難のことを指します。その結果、仕事や勉強が頑張ってもなかなかうまくいかないことが続き、時にうつ病や社会不安障害などのメンタル不調を合併することがあります。
発達障害の診断のため知能検査(WAIS検査)を受ける中で、全体のIQが判明し、境界知能が見つかるということも少なくありません。境界知能の定義は、知能指数(IQ)が70から84の範囲で、約13%(7人に一人)の方が該当するとされますが、その大半は診断がついていないのが現状です。
境界知能が判明するきっかけとしては、学業不振、仕事を覚えられない、不適応やうつが続く、大人の発達障害の検査で判明する、などがあります。
(3)境界知能の目立つ特徴5つ
①知的障害未満の知的困難
境界知能の方は、知的障害未満の知的な困難があります。障害ではないものの、実際には影響や困難は十分強いと言われています。学校では勉強が苦手ということはありますが、明確な遅れまでは出にくく、境界知能だけではトラブルは目立ちにくいとされています。
また、発達障害の定義にはIQ(知能指数)はあまり関係していないため、両者を合併することは大いにあり得ます。合併する場合には両方の特性が影響するため、対策がより難しくなる場合があります。
②社会生活の困難
境界知能の方は、シンプルなことは問題ないものの、入り組んだことになると困難が出てきます。成人になって課題が難しくなってくると苦手なことが増え、他者と比べられるとその違いが目立ちやすくなります。
職場では、あいまいで複雑な仕事、研修や学習での技術獲得、複雑な人間関係でつらくなることがあります。対人関係では、シンプルな交流は問題ありませんが、駆け引きや相手の悪意など知的にかわす必要が出てくると困難が強くなり、他の人に利用されたり搾取されたりするリスクに注意が必要です。日常生活では、やることが幅広くなったり必要なことが増えてくるとカバーが難しくなり、意思決定・判断をするところで困難が出てきやすいとされています。
③精神不調のリスク
境界知能では環境とうまくいかない不適応からストレスが生じやすく、ストレスの対処力に困難・限界があります。その結果、二次障害的な精神不調のリスクに注意が必要です。二次障害的な精神不調の例としては、うつ、対人不安、怒り、攻撃性などがあり、衝動的な行動につながってしまう場合もあります。
合わない環境だとストレスが特にたまりやすく、我慢をしても次第に限界が来て二次障害に至ってしまいます。早めに環境を変えることが現実的に必要な場合があります。合わない環境の例としては、課題が複雑すぎる場合、人と比べ過ぎる文化、対人関係が入り組んでいる場合などが挙げられます。
二次障害など精神不調の治療法としては、うつや対人不安が合併した場合は抗うつ薬を、怒りや衝動には頓服薬を使うことがありますが、あくまで補助的なものなので、他の環境面など対策を並行することが大事です。
④薬や制度がない
境界知能自体の知能的な面への薬はないのが現状です。また、知的障害のような障害ではないため、福祉的なサポートを受けるのも困難です。そのため、現状では自分で対策をすることが必要不可欠です。
発達障害やうつ病など精神疾患が合併している場合は、そちらの要件で福祉制度を使える例外はありますが、基本的には自分で対策することが求められます。
⑤環境調整が大事
境界知能があるだけでは強い困難やつらさは起こりにくいとされますが、不適応や精神不調を合併すると困難がより強く目立つようになります。そのため、精神状態が予後に影響するという点でその対策が大事になります。
一般的なストレス対策(発散法、生活習慣の改善など)は境界知能でも有効ですが、知的機能の限界から入り組んだ方法、複雑な方法を取ることは困難で限界があります。結果としてストレス対策だけでは環境のストレスが勝ってしまうことが少なくありません。
そのため、合う環境を見つけることが最重要です。特性が適応に影響し過ぎない環境を探して選ぶことが一番重要で、その上でストレス対策を組み合わせるのが最も有効な方法だと考えられます。合う環境の例としては、複雑な知的なことを求められない、態度や姿勢等でカバーしやすい、体を使うなど知能以外の比重が高い、などが挙げられます。
(4)まとめ
頑張ってもうまくいかず慢性的につらい状態になることで気づかれる「境界知能」には、次の5つの特徴があります。
1. 知的障害未満の知的困難
2. 社会生活の困難
3. 精神不調のリスク
4. 薬や制度がない
5. 環境調整が大事
知的要素以外でつながれる環境を見つけてそこを大事にしていくことが、さまざまなことの鍵になってきます。境界知能の特性を理解し、適切な環境調整とストレス対策を行っていくことが大切です。
こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
府中こころ診療所(東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
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【解説者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。