0:00 (1)はじめに
0:20 (2)うつ病の治療には時間がかかる
2:21 (3)うつ病を治す療養のコツ5つ
2:29 ①しっかり休む
3:53 ②考えすぎない
5:33 ③薬の治療を続ける
7:10 ④生活習慣を整える
8:35 ⑤ストレス対策の見直し
11:24 (4)まとめ
うつ病は脳の不調でもあり治療には時間がかかります。その中でいかに焦らず「療養のためにすべきことをする」ことがうつ病を治すために大事になります。
「うつ病を治す療養のコツ5つ」について、精神科医が12分で説明しています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
府中こころ診療所 https://fuchu-kokoro.com
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(1)はじめに
うつ病は治療に時間がかかる精神疾患です。その中で焦らずに必要な対策を続けることが大切になります。うつ病を治していくための療養のコツとは何でしょうか。
うつ病は、落ち込みなどのうつ症状が続く脳の不調です。脳内物質セロトニンの不足などが主な背景とされます。休養、薬物療法、精神療法が治療の3本柱となります。
うつ病の主な症状は以下の通りです:
- こころの症状:落ち込みや不安、意欲の低下、集中力の低下など
- 体の症状:不眠や疲れやすさ、吐き気、めまいなどの自律神経症状
- 行動の変化:人を避けたり、声が小さくなるなど
うつ病の主な治療方法は以下の通りです:
- 休養:ストレスから離れて、頭をしっかり休ませる
- 薬物療法:主に抗うつ薬SSRIを継続して使用
- 精神療法:ストレスへの対処法の見直しなど
うつ病の病期は以下の3段階に分かれます:
1. 急性期:うつの症状や不安が重い時期で、休養を最優先する
2. 回復期:再発を防ぎつつ徐々にリハビリをしていく時期
3. 再発予防期:安定して復職などで復帰をしながら再発を防いでいく時期
(2)うつ病の治療には時間がかかる
うつ病はストレスの反応だけでなく、セロトニンが不足する脳の不調という側面があります。そのため、すぐには改善せず、時間がかかります。また、一直線に良くなるわけではなく、改善と停滞を繰り返しながら良くなることも少なくありません。
この過程でしばしば不安や焦りが生じますが、これらはむしろ逆効果になります。適切な対策を地道に続けていくことが非常に重要です。
(3)うつ病を治す療養のコツ5つ
①しっかり休む
うつ病の治療において、しっかり休養を取ることは治療の一番の土台です。体を休ませることも大切ですが、最も重要なのは頭を休ませることです。改善してリハビリを行う場合でも、頭を休ませる時間を作ることは重要です。
一方で、うつ病では休みにくい場合も多いのが現実です。例えば:
- 休職をしても、周りに迷惑をかけているという罪悪感から休めない
- 過去の失敗などの後悔を考え続けてしまい、頭が休まらない
- 将来への不安を先回りして考えすぎてしまい、休養できない
これらの状況があっても、休むことを第一優先とすることが大切です。治療として休むことの重要性を認識し、考えすぎそうになったら何か別のことをして気を紛らわすなどの対処が必要です。それでも休みにくい場合は、主治医と相談して補助的な薬の使用を検討するのも一案です。
②考えすぎない
考えすぎると頭が休まらず、病状に悪影響を及ぼします。うつ病の症状として考えすぎる場合もあれば、性格的に考えすぎてしまいやすい場合もあります。少なくとも自分で制御できない考え事に関しては、うつ病の治療に悪影響だと心得ることが大切です。
特に注意が必要なのは、「ぐるぐる思考(反すう思考)」です。うつ病の場合、同じことを繰り返し考えてしまうことがしばしば起こります。これは建設的な方向に向かうことはほとんどなく、むしろ悪化につながることが多いので注意が必要です。
考えすぎないための対策として、以下のことが挙げられます:
- うつ病の治療をしっかり行い、症状の改善から考えすぎが減るのを待つ
- 考え事をしそうになった状態に自分で気づき、別のことに集中する
- 「考え事」は改善を妨げるものだという認識を持ち、考え事を減らす努力をする
③薬の治療を続ける
うつ病はセロトニンの不足など脳の不調が大きな要因であるため、脳に働きかける抗うつ薬の治療が非常に重要です。抗うつ薬で改善するには2から4週間かかり、なかなか実感しにくいですが、メカニズムを理解して治療を続けることが大切です。
うつ病でよく使用される薬には以下のようなものがあります:
- 抗うつ薬(主にSSRI):長期的に続けることが重要
- 睡眠薬:補助的に使用し、眠気が改善したら減らすことが多い
- 抗不安薬:不安が強くて休まらないときに使う補助薬で、改善したら減らすことが多い
薬の服用を続けるにあたっては、薬への葛藤とうつ病自体への葛藤の両方が生じることがあります。特に症状が安定した後にこの葛藤が強まることが多いです。再発のリスクとその対策を理解し、自分の将来のために服薬を続けることが重要です。
④生活習慣を整える
うつ病の療養においては、生活リズムや生活習慣の安定が改善の土台となります。改善後の再発予防の観点でも、生活リズムや生活習慣の安定は非常に重要です。時に退屈に感じることもありますが、その重要性を優先することが大切です。
生活リズムの乱れは、うつ病の悪化や慢性化につながるため、特に注意が必要です。ストレスが溜まった時に眠れない、あるいは寝たくないなどの症状が出て、そこから生活リズムが乱れやすくなります。リズムをなるべく一定に保つよう意識し、特に睡眠対策を重視することが大切です。
生活習慣の乱れも注意が必要です。特にストレスがかかった時に多量の飲酒をするなど、長期的な悪影響や生活習慣の乱れが生じやすくなります。これらは悪化や慢性化のリスクだけでなく、ストレス耐性を弱めて再発のリスクにもつながります。長期的に悪影響を及ぼす生活習慣を見直し、生活習慣に影響しないストレス対策を模索して置き換えていくことが重要です。
⑤ストレス対策の見直し
ストレスはうつ病の悪化や慢性化の原因となるため、その対策を続けることは非常に重要です。うつ病になった時にはストレスが多かったことが想定されるため、現状維持では再発のリスクが高くなる可能性があります。そのため、ストレス対策の振り返りと見直しが必要になります。
ストレス対策の見直しには、以下のような方法があります:
1. ストレス発散法の改善:
- 効率よくストレスを発散する方法を見つける
- 個人差が大きいため、試行錯誤しながら自分に合った方法を探す
- 時間などの制約がある中で効率的な発散法を模索する
2. 環境調整:
- 仕事など環境からのストレスが大きい場合は、転職などの環境調整を検討する
- 明確な環境のストレスがない場合でも、細かい調整を行う
3. 考え方の調整:
- 自分を追い詰める考えの癖を振り返り、別の考え方を探す
- 自分を励ますアファメーションを導入する
4. 対人関係の見直し:
- ストレスを強く感じる特定の対人関係がある場合は、距離を置くなどの見直しを行う
- 「我慢しすぎる癖」がある場合は、必要な主張をする「アサーション」の取り組みを行う
- 無理がかからない対人関係の構築を模索する
5. 自分の軸の模索:
- うつ病の経験を通じて、自分が本当に何をしたいかの「軸」を探る
- うつ病になったからこそ得られたことや見えたことを大切にしながら、自分の軸を探す
(4)まとめ
うつ病は脳の不調でもあり、治療には時間がかかります。しかし、焦らず療養して徐々に改善を図ることが大切です。うつ病を治す療養のコツとして、以下の5つが重要です:
1. しっかり休む
2. 考えすぎない
3. 薬の治療を続ける
4. 生活習慣を整える
5. ストレス対策の見直し
これらの療養のコツは、うつ病の慢性化を防ぎ改善を図るだけでなく、再発予防を図る上でも有効です。一人ひとりの状況に合わせて、これらのコツを取り入れながら、粘り強く療養を続けていくことが大切です。
こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
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【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。