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【山下祐加委嘱初演】合唱物語「オデュッセウスの帰還」/ Chor Glanze

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【曲】 合唱物語「オデュッセウスの帰還」 作詩:みなづきみのり 作曲:山下祐加 指揮:伊東恵司    ピアノ:小見山純一 ナレーション:広田ゆうみ 00:00  オープニング 06:28  遙かなる歴史の浜辺 16:30  長き船旅 21:24  競技会 23:48  あなたは誰なの 28:35  セイレーンの歌 34:45  キュクロプスとの戦いの歌 41:16  鏡の向こうには 47:45  トロイの木馬の歌 55:27  ナウシカア(アーモンドの枝を) 59:13  ナウシカア(愛しい人よ) 1:04:01 遙かなる歴史の浜辺Ⅱ 【演奏日時】 2022年2月27日(日) 混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ 第44回定期演奏会 【演奏場所】 Home & nicoホール (江南市民文化会館)大ホール ------ HP https://chor-glanze.jimdofree.com/ Twitter https://twitter.com/chorglanze?s=09 Instagram https://www.instagram.com/insta_glanze/ ------  皆さんはトロイ戦争をご存じでしょうか?  ギリシャ神話の中核の一つをなす長い長い戦いの話ですね。増えすぎた人類の数を減らすために神々が計画したものだとも言われ、神と、神の血を引く英雄と、人間たちが入り混じります。  ストーリーはその前段の神話や、家系図を持ち込んでの因縁話があり、驚くような広がりを持つのですが、直接的には争いの女神エリスが、神々がこぞって出席した婚礼の祝宴に招かれなかったことを恨んで「最も美しい女神へ」と記された黄金のりんごをその宴席に投げ込んだことが発端とされます。そのりんごを巡って「ヘラ」と「アテナ」と「アフロディテ」という「三人の女神」の間に争いが起り、判定する役にはトロイの王子パリスが当たりました。<パリスの審判>と言われますね。実は、アフロディテはパリスに「自分を選べば世界一の美女を与える」と言う密約を結んでいたので、パリスは三人の女神の中からアフロディテを選ぶのです。アフロディテは、約束を果たすために、パリスにギリシャのメネラオス王の妻になっていた「ヘレネ」を奪わせたのでした。そして、トロイに連れて行かれた「美女ヘレネ」のギリシャによる奪還作戦がこのトロイ戦争というわけです。  ギリシャとトロイにはそれぞれ神々が付き、神々の代理戦争の様相を呈したのですが、総大将のアガメムノンを中心に組織されたギリシャ側にはアキレウスやディオメデス、オデュッセウスなど、ギリシャ内各地域の王たち全てが参加しました。一方トロイもパリスの兄であるヘクトールをはじめとする勇士たちを擁しましたので、ギリシャ側は優勢に進めながらも容易にはトロイの城壁を陥落させられず、結局戦争は10年間続いたのです。その間多くの英雄が戦死しました。ギリシャのアキレウスは、戦争に嫌気がさして一時戦場を離れるのですが、親友を殺されたことにより戦地に戻り仇であるヘクトールを討ちます。ヘクトールの弟であったパリスは兄の仇であるアキレウス(唯一の弱点であるアキレス腱を射貫くのです)を討ちますがが、自身もまた倒れます。そして、名だたる英雄が壮絶な戦死を遂げた挙句、最後の最後には知将オデュッセウスの木馬計画により辛うじてギリシャ側の勝利に終わるわけです。  有名なホメロスの叙事詩「イーリアス」はその長い10年戦争の終盤の一部を描いたものですが、ホメロスにはもう一つ有名な叙事詩「オデュセイア」があります。そちらは戦争を終わらせた知将オデュッセウスが故郷に帰るまでの10年の旅を描いています。何しろ、戦勝国に対してもトロイ国支持の神々から呪いがかけられましたから、オデュッセウスも帰国するために10年の年月を要し、部下をすべて失ってしまうなどの苦難を強いられたのでした。そのオデュッセウスの物語も古今の文化芸術の至るところに散りばめられておりますね。ちなみに、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」という映画をご存じですか?原題は「スペース・オデュッセイ」です。オデュッセイという言葉そのものが「長い長い旅」を表す言葉になっているのですね。  さて、今から始まるこの物語はそのオデュッセウス苦難の旅の終盤の小さな1エピソードを切り取ったものなのです。ほら、波の音が聞こえますね。ほら、風の音も聞こえますね。 伊東恵司 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  混声合唱団名古屋大学コール・グランツェさんの合唱物語を担当させていただくのは、この作品で4回目となります。今回は古代ギリシアの叙事詩を題材とした「オデュッセウスの帰還」ということで、作曲にあたってギリシア神話に関する本などを読みました。音楽という言葉の語源もそうですが、神話に登場する名前が西洋の地名や語源になっていることを知り、とても面白く感じました。ちょうど同じタイミングでギリシア演劇の話を聞く機会もあり、歌の原点に立ち返るとともに、ますますこの時代の芸術に興味が湧いてきました。  いただいたみなづき先生の台本には、『オデュッセイア』という紀元前から伝わる英雄のロマン、‘コロス’のようなギリシア時代の合唱のスタイル(!)と合わせ、今の時代を生きる上での想いがつまっていました。作曲にあたっては古代ギリシアの音階やその時代に演奏されていたとされる楽器の音色などを少し取り入れつつ、次第にそこから解き放たれ自由な音の旅にでることにしました。オデュッセウスが熱く語る冒険譚はエネルギーにあふれ、私自身も胸を躍らせながら作曲しました。  コロナ禍で、合唱の練習もなかなか大変な日々とは思いますが、グランツェの皆さまもお聴きくださる皆さまも、オデュッセウスとナウシカア姫の物語に、束の間癒されていただけたらと思います。遥か遠い昔、吟遊詩人がその人にしかできない味のある‘歌’を歌ったように、グランツェの皆さまにしかできない歌を、きっと歌ってくださると楽しみにしております。  最後になりますが、いつも作品に真摯に取り組んでくださる混声合唱団名古屋大学コール・グランツェの皆さま、このような素晴らしい機会をくださった伊東恵司先生、毎回ワクワクする演出、語りをしてくださる二口大学さん、広田ゆうみさん、前回も素敵な演奏をしてくださった小見山純一さんにこの場をお借りして心より御礼申し上げます。 山下祐加 (プログラムノートより)

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