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【フルクサス裁判】主催:国立国際美術館 企画・構成:塩見允枝子 2001・5・12
【概要】
2001年に大阪の国立国際美術館で、「ドイツにおけるフルクサス1962-1994」展が行なわれた際、フルクサス作品のパフォーマンスを行なって欲しいとの依頼を受けました。その年は、結成40周年の前年でしたので、この機会に自らを裁いてみようという意味で、コンピュータ合成音声による尋問に対して、フルクサスのスコアーに基づくパフォーマンスと、予め送って貰ったメンバー達の音声を編集して回答していくという、一種の裁判劇の形式で行なうことにしたのです。又、予算上ジャンク・ピアノしか借りられなかったお蔭で、フルクサス発祥の際の象徴でもあった破壊的ピアノ・パフォーマンスを思い出し、今度はそれを多少音楽的に行なってみることにしました。
When the exhibition titled “Fluxus in Deutschland 1962-1994” was held at The National Museum of Art, Osaka in 2001, I was asked to give performances of Fluxus pieces. Since it was just one year before the 40th Fluxus anniversary, I wanted to use the form of a trial in the sense of judging ourselves while being questioned by computer synthesized voices. We would answer them by performing Fluxus pieces and edited voices of Fluxus members which had been sent to me. Thanks to the humble budget just enough to rent a junk piano, an idea destroying it in a musical way came up to my mind, recalling the symbolic piano performance at the first concert when Fluxus started.
【上演作品】 順不同
ラ・モンテ・ヤング《コンポジション1960#5》《テーブル、ベンチ、椅子のための詩》《ヘンリー・フリントのための566》《コンポジション1961》/ジョージ・ブレクト《二つの持続》《ドラム奏者のために》/アリソン・ノールズ《ニヴェア・クリーム・ピース》 /エメット・ウイリアムズ《ラ・モンテ・ヤングへ》《5人の演奏者のための10のアレンジメント》/トマス・シュミット《サ二タスNo.13》《サ二タス No.152》/フィリップ・コーナー《ピアノへの敬意+ワン・ノート・ワンス》/一柳慧《ピアノのための音楽No.5》 /小杉武久《オルガニック・ミュージック》《ディスタンス・フォー・ピアノ》エリック・アンダーセン《Op.16》《Op.22》/ベングト・オヴ・クリントベルグ《25のオレンジ・イヴェント》/ジュセッペ・キアリ《ムシカ・マドゥレ》/ラリー・ミラー《指の練習》塩見允枝子《落下のイヴェント》《遮られた音楽》
▼Pieces to be performed *no particular order
La Monte young "Composition 1960#5" "Poem for Tables, Benches & Chairs" "566 for Henry Flynt" "Composition 1961" / George Brecht "Two Durations" "For a Drummer" / Alison Knowles "Niva Cream Piece" / Emmett Williams "For La Monte Young" "10 Arrangements for 5 performers" / Tomas Schmit "Sanitas No.13" "Sanitas No.152" / Philip Corner "Reverence for the Piano + One Note Once" /Toshi Ichiyanagi "Music for Piano No.5" / Takehisa Kosugi "Organic Music" "Distance for Piano" / Eric Andersen "Opus 16" "Opus 22" / Bengt af Klintberg "Twenty-five Orange Events" / Giuseppe Chiari "Musica Madre" / Larry Miller "Finger Exercise" / Mieko Shiomi "Falling Event" "Interrupted Music"
【尋問に答える声】
エリック・アンダーセン、ジョージ・ブレクト、
ヘニング・クリスチャンセン、ジャン・デュピュイ、
ロベール・フィリウ、アル・ハンセン、
ジェフリー・ヘンドリックス、アリス・ハッチンス、
アラン・カプロウ、ベングト・オヴ・クリントベルグ、
ミラン・ク二ザック、アリソン・ノウルズ、
ジョージ・マチューナス、ラリー・ミラー、
ウィレム・ドゥ・リダー、ベン・ヴォ―ティエ、
ラ・モンテ・ヤング
【Voices of answering the questions】
Eric Andersen, George Brecht,
Henning Christiansen, Jean Dupui,
Robert Filliou,Al Hansen,
Jeoffrey Hendricks, Alice Hutchins,
Allan Kaprow, Bengt af Klintberg,
Milan Knizak, Alison Knowles,
George Maciunas, Larry Miller,
Willem de Ridder, Ben Vautier,
La Monte Young
【出演者】
井上昌彦、植松琢麿、木下博文、木村英一、獅子倉シンジ、筒井潤、出村雅哉、クリストフ・シャルル(コンピュータ合成音声やメンバーの声の操作)、塩見允枝子
▼Performers
Masahiko Inoue, Takuma Uematsu, Hirofumi Kinoshita, Eiichi Kimura, Shinji Shishikura, Jun Tutsui, Masaya Demura, Christophe Charles (operation of computer synthesized voice and members’ voices) Mieko Shiomi
【告発文】
●1.それでは、ただ今より証人喚問を始めます。先ずフルクサスの皆さん、あなた方はどのようなきっかけで、このグループに関わりを持つようになったのですか? どなたからでも結構です、お答え下さい。
●2.結成当時、様々な国の互いに見知らぬ作家達が、名前を連ねたわけですが、皆さんに共通した主義や美学のようなものは、あったのでしょうか?
●3.今、偉大なるベートーヴェンの音楽が、無残にも破壊されました。偶像破壊は、新しい価値を生み出すために必要だと思いますか? それとも破壊行為そのものが価値を持つと考えますか?
●4.この会場の中に赤い光と緑の光が見えますが、これも誰かの作品なのでしょうか? フルクサスのパフォーマンスでは、往々にして作品が無断で、しかも勝手な解釈で演奏されているようですが、皆さんの間には、それを認める暗黙の協定でもあるのでしょうか? 今までに、異議を申し立てた人はいませんか?
●5.マチューナスは、コンミューンという言葉を好んで口にし、日本にフルクサス・ヴィレッジを作ることを夢見ていたと聞いていますが、こうした共同体への彼の願望に対して、あなた方はどのように対応しましたか?
●6.フルクサスの数多くのパフォーマンス作品が、一種の共同所有物として自由に扱われているということは、彼の思想の影響なのでしょうか?
●7.メンバーの一人ひとりは、独立した作家と見受けますが、グループとしてのフルクサスは、宇宙の星雲のようなものだと言う人がいます。つまり、離れてみると確かにある輪郭は見えるけれども、いざ、近づいて見ると、実体がよく分からないという意味ですが、実際の所はどうなのでしょうか? そして、現在のあなた方を繋いでいるものは何ですか?
●8.フルクサスは、人類の幸福のために何か貢献しましたか? あなた方は、一市民として充分に謙虚でしたか? あなた方は、税金を滞りなく払いましたか? 交通違反をしたことはありませんか? 電気を不法に盗んだことはありませんか? 国を象徴する歌である国歌を侮辱したことはありませんか? 人々を誘拐、或いは監禁したことはありませんか? 公園の木を勝手に切り倒したことはありませんか? 無断でヘリコプターを飛ばしたことはありませんか? 郵便局の職員たちを混乱させたことはありませんか? テレビを海に投げ込んだことはありませんか? 偽りの死亡広告を出したことはありませんか? 自由の女神をロープで縛ったことはありませんか? 無銭飲食をしたことはありませんか? 演奏会場で、聴衆のネクタイを切ったことはありませんか?
●9.マチューナスな輪廻転生を信じ、今度は、蛙に生まれ変わると言っていたそうですが、それらしい蛙をどこかで見かけませんでしたか?
●10.次に、フルクサスと商業主義について尋ねます。芸術と日常との壁を取り払うという精神と、マチューナスの手によるオリジナルの出版物が、高値で売買されているということは、矛盾しませんか? 歴史の中の証拠物件として、骨董品的希少価値で取引されている事実を、納得できますか?
●11.1978年をもってフルクサスは終わったとする、アメリカのコレクターの見解と、フルクサスはメンバーの最後の一人がいなくなるまで続くのだという意見と、或いは、精神としてのフルクサスは、次の時代の人々にも受け継がれていくだろう、というファナティックな考え方が、一部の若い人達の間にあるようですが、あなた自身はどう思いますか?
●12.フルクサスの作品の特徴として、禅の影響と共に、ユーモアがよく挙げられますが、関西の「笑い」との違いは何でしょうか?
●13.再びこのグループの実体について訊ねます。1990年頃から、世界各地で様々な展覧会やフェスティヴァルが開かれてきましたが、それらはあなた方内部で企画した自発的な催し物ではなく、周りの人々、つまり、コレクターや美術館関係者、研究者といった人達のオーガナイズによって実現されたものでしたね。しかし一方では、再会する度にメンバー同士は情報を交換し合い、刺激し合って、絆を強めていったことも事実です。ということは、フルクサスは依然として、作家が組織する集団ではなく、時代が図らずもマチューナスの夢を受け継ぎ、増幅強化していった共同体、敢えて言うなら、時代が培養したグループであるという印象を受けますが、皆さんはどのように自覚していますか?
●14.以上をもちまして、本日の公判を終わります。なお、判決につきましては、陪審員である列席者の皆さまのご判断に委ねることに致します。ご清聴、ありがとうございました。