1976年11月25日に発売された風の3枚目のアルバム『WINDLESS BLUE』のB面、全体の9曲目に収録されている。
その直後、太田裕美が1976年12月5日発売の5枚目のアルバム『12ページの詩集』で本楽曲をカバーした。このアルバム制作には伊勢正三・イルカをはじめ阿木燿子・荒井由美など他にも錚々たるメンバーが名前を連ねている。
それから約5年後の1981年8月26日、再録音し自身21枚目のシングルとして発売された。
太田裕美によるカバーの編曲は、1976年バージョン、1981年バージョンとも荻田光雄である。
作詞・作曲:伊勢正三
編曲:瀬尾一三
今回のライブ音源は、2017年1月15日に東京国際フォーラムホールAにて開催された「イルカ45周年 ニッポン放送イルカのミュージックハーモニー25周年記念 青春のなごり雪コンサート」からのライブ音源だ。
この時太田裕美は62歳、イルカは67歳、伊勢正三は66歳だ。
驚愕するのが3人とも声があの頃のままなのだ。20代で歌っていた頃と変わらない。そりゃ60代だから老けているのは当然だが、それを感じさせない。そればかりか、見た目も若いままだ。どういう年の重ね方をすればこうなるのか不思議で仕方ない。
太田のソロで始まり、そこにイルカと伊勢のハーモニーが重なる。
間奏で伊勢のギターソロが響く。
2番ではイルカ、太田のソロと続き、伊勢のギターとハモリが切なくも美しく入ってくる。
太田のソロバージョンもいい、当然風のオリジナルバージョンは何者にも負けない。でも3人のコラボはライブならではの珠玉の1曲となっている。
Youtubeに動画があるのでそれも是非見てほしい。
君がどうしても 帰ると言うのなら
もう止めはしないけど
心残りさ少し 幸せに出来なかったこと
故郷(くに)へ帰ったら あいつらに会うといいさ
よろしく伝えてくれ
きっと又 昔のように みんなで楽しくやれるさ
彼と「君」は故郷で知り合い、彼が「君」を仲間とも引き合わせて、みんなでいっしょに楽しく過ごしていた。
そんな中、「君」はマドンナのように男たちの中で特別な存在になってゆく。暗黙のうちに「彼女に手を出すな」というようなルールが男同士に生まれていたはずなのに、彼は「君」を誘い、故郷を離れ都会に出ていってしまう。
しかし、なんらかの理由で「君」は故郷に帰る決意をし、彼は都会に踏みとどまろうとする。あるいは彼は帰るに帰れない。
「君と歩いた青春」と言いながら、「君」がどんな女性で、「君」との生活がどんなだったかはほとんどふれられていない。歌詞のほとんどは、故郷でみんなで過ごした時代のことを語っている。まるで青春は故郷で過ごしたあの時代だったのだと思ってしまう。
きれいな夕焼け雲を
憶えているかい
故郷での思い出を語りながら、「君」を幸せにできなかった自分のふがいなさやら後悔やら、みんなを裏切った申し訳なさやらがいりまじりながら曲は進んでゆく。
「きれいな夕焼け雲を憶えているかい」と一転して情景のような思い出のフレーズが入ることで、描かれていた世界が急に広がり、続くフレーズで、そんな真っ赤な夕焼けの中で二人が出会ったことがわかる。
君と始めて出逢ったのは
ぼくが一番最初だったね
そして、歌詞の最後のセリフ、「君はなぜ 男に生まれてこなかったのか」、男同士だったら上手くやって行けたのにという彼の悔恨なのだろう。
あの人と青春を一緒に歩きたかったと思えた人はいますか?
一緒に歩いたのに思ってみれば後悔しかない人はいますか?
僕の持論だが、伊勢が作る楽曲は女性視点のものは伊勢が歌う方がいい。
「22歳の別れ」「海岸通」「あの唄はもう唄わないのですか」など・・・
そして男性目線の曲は絶対に女性が歌う方がしっくりくる。
「なごり雪」「雨の物語」「あの頃の僕は」「君と歩いた青春」などなど・・・
伊勢が持つ不思議な魅力の一つかもしれない。
#君と歩いた青春
#芳根京子