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【電子工作実践編】動作の邪魔をする共通インピーダンスに要注意|LTspiceで始める実用電子回路入門

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※この動画は、私が執筆を担当した2021/10/15配信のCQ出版メルマガ「電圧降下の改善方法教えます」の内容を補足説明した動画になります。 詳細はメルマガの方で解説していますので、ぜひそちらもご登録下さい。 https://cc.cqpub.co.jp/system/contents/3401/ 今回は、配線はとにかく繋がれば良い、と思っている人に向けて、動作の邪魔をする共通インピーダンスに要注意、というテーマで話をしていきたいと思います。 ↓テキスト派の方はこちらから https://start-electronics.com/elec/common-impedance/ ====== 電子工作コミュニティメンバ募集中 ====== 2024年12月、新しく「電子工作で人生豊かにするラボ(仮称)」というコミュニティを立ち上げました! https://discord.gg/nt5SNtQF3u 単に電子工作を学べるだけでなく、電子工作を通して人生が少しでも豊かになるような場にしたいと思っています。 以下のような悩みを抱えている方はぜひご参加頂ければと思います! ・実現したいことはあるが、電子工作の知識がなくて進められない ・アラフォーなのに技術力不足・経験不足で今後のキャリアに悩んでいる ・自分の強みが見つからず、5年後に今の会社で活躍している姿がイメージできない ・物事に熱狂できない ・大人になって友達が作れない 上記のような悩みをお持ちの方であれば、電子工作経験の有無や職業、年齢、性別は一切問いません。 どなたでも無料で参加できるので、ご興味のある方はどしどしご参加ください👍 ※Discordというコミュニケーションアプリを使います(PC、スマホどちらでも可) ======================================== ■目次 0:00 オープニング 0:33 共通インピーダンスとは 1:42 例題:共通インピーダンスを考慮しない配線 5:58 共通インピーダンスを考慮した改善方法 7:57 実機デモ 9:07 ワンポイント 9:59 まとめ ■CQ出版メルマガ https://cc.cqpub.co.jp/system/contents/6/ ■自己紹介 ・ハードウェアエンジニア ・電子工作歴:9年 ・電子工作をゼロから体系的に学べるチャンネル「今日から始める電子工作」を運営してます ■SNS Web : https://start-electronics.com/ Twitter : https://twitter.com/buonoatsushi #電子工作 #LTspice #CQ出版メルマガ ■動画文字起こし まず始めに、共通インピーダンスがあまり聞き慣れない、という方に向けて、用語について簡単に説明しておきます。 共通インピーダンスとは、複数の回路に共通して存在するインピーダンスの事です。例えばこの回路図で言うと、回路Aと回路Bにそれぞれ電流が流れる時、こちらのルートには共通して電流が流れるのでこの部分が共通インピーダンスとなります。また、こちらの基板パターンでいうと、同様に回路Aと回路Bに電流が流れる時にこちらのパターンに共通で流れます。基板のパターンも抵抗値を持つので、この部分が共通インピーダンスとなります。 共通インピーダンスが回路上にあると、ここで挙げたように2つの問題が発生します。1つ目としては、複数の回路の電流がその点に集中するため、流れる電流値が大きくなって電圧降下が大きくなってしまう事です。また、他の回路に流れる電流の大きさによって電圧降下が増減するため、他の回路の影響を受けやすくなる、という点にも注意が必要です。共通インピーダンスはこのように悪いことずくめなので、できるだけ小さくするように回路を組む事が重要になってきます。 それでは、例題を一つ取り上げて、実際にこの共通インピーダンスが回路にどういう影響を与えるのか、について見てみましょう。 今回は、こちらのLEDマトリクスという部品を3つ使って、新しい卓上ディスプレイのプロトタイプを作製する、という設定でこのように回路を組んでみました。 それをブレッドボード図にしてみたのがこちらになります。それでは、ここで問題です。この時、全てのLEDマトリクスに動作保証電圧以上の電圧を供給するためには、電源電圧は何V以上必要になるでしょうか?こちらの4つの選択肢から選んで下さい。なお、各仕様はこのようになっています。 考える際のヒントとしては、理想的にはジャンパーワイヤーは0Ωなのですが、実際には抵抗成分が存在する事を考慮して下さい。抵抗成分があるため、配線の仕方によっては共通インピーダンスができてしまいます。動画を一旦止めて、ブレッドボード図を参考に、この場合はどのような等価回路になるか考えてみましょう。 それでは、解答となります。答えは、Cの3.14Vです。 順に解説していきます。まず、今回の回路を抵抗や電流源などを使って等価回路に落とし込んだものがこちらの図になります。このような配線をした場合、電源に最も近いジャンパーワイヤーR1にはユニットA,B,Cの電流の総和I1+I2+I3が流れます。また、電流が戻ってくる経路にあるR4に対しても同様になります。 結果として、ユニットAにかかる両端電圧Va、ここでいうとA+とA-の電位差は、こちらの式に記載する電圧となります。後段にあるユニットB、ユニットCの両端電圧についても、同様にこちらの式で表す事ができます。 これらの式を展開すると、電源から最も遠いユニットCの両端電圧Vcはこちらの式で表されます。第2項、第3項、第4項はいずれもマイナスの値を取るため、この式より、大本となる電源電圧V1から多くの因子が引かれ、電圧値として小さくなってしまっている事が分かります。 次に、Ltspiceという回路シミュレーションを使って実際にユニットCの両端電圧がどれくらい下がってしまうのかを確認してみましょう。こちらにある回路を、今回はDCsweepというモードを使ってシミュレーションしようと思います。DCsweepは、今回のように電源電圧を変動させた時の各部の挙動を確認するのに便利なモードです。ここでは、電源電圧を1.0Vから5.0Vに振ってみました。それでは実行ボタンを押します。 シミュレーションが一瞬で完了しました。各部の電圧と電流をモニターしてみます。こちらにある各部の電流を見てみると、R3には1ユニット分の電流である0.4Aしか流れていませんが、R1には3ユニット分の電流1.2Aが流れています。電圧の方を見てみると、オレンジがV1なのですが、この3ユニット分の電流が集中して流れる事によってV1から大きく電圧降下が発生し、こちらの青色まで落ちているのが分かると思います。 先ほどのVaの式から計算で求めると、電圧降下分V1-Vaは168mVとなります。後段に行くほど前段からの電圧降下量は下がってはいきますが、最後段のユニットCの両端電圧は、V1と比べると大きく下がってしまっています。こちらも計算で求めてみると、V1からの電圧降下分V1-Vcは336mVとなります。つまり、ユニットCの両端電圧は電源電圧と比べて336mVも下がってしまうという事になります。この状態で、LEDマトリクスの動作保証電圧2.8Vを確保するためには、電源電圧V1は2.8+0.336=3.136V以上必要という事になります。よって、(C)の3.14Vが正解となります。 今回のように配線をした場合、電源電圧と末端のユニット間では0.3V以上もの電位差が発生してしまう事が分かりました。この差を発生させてしまってしまう原因の正体が、最初に説明した共通インピーダンスです。今回の例で言うと、R1やR4、R2やR5がそれにあたります。 そこで次に、共通インピーダンスを考慮して配線を改善したものを作ってみたいと思います。なお、前提として使用するケーブルや部品は同じものとします。 ここでは、このように配線をしてみました。さっきの配線との違いは、赤と黒の線をこちらのラインに接続し直しただけです。 ブレッドボード図で表すと、このような形になります。 この配線を等価回路にしたものをこちらに示します。それぞれのユニットの電源はジャンパーワイヤーを介して電源に近いところに直接接続しているため、それぞれの抵抗は電源からそれぞれ独立して並列にぶら下がる事になります。結果として、共通インピーダンスのない回路を作る事ができました。 この回路図からも明らかなように、各ユニット両端の電圧はこちらの式のように表されます。 配線改善後のVcの式を、改善前の式と比べると、明らかに右辺のマイナス項が少ない事が分かります。 ここでも同様に、LTspiceを使って電圧効果の違いを確認してみます。実行ボタンを押し、各部の電流と電圧をプロットしていきます。 電流を見ると、今度はI1,I2,I3の電流が全て一定値となっており、また電圧を見ると、電源電圧V1からの電圧降下量が数10mVと小さく、かつどのユニットも等しい電圧となっている事が分かると思います。 実際に式を計算してみると、電圧降下分V1-Vcは56mVとなります。配線改善前の336mVと比べて、280mVも電圧降下量が低減できている事が分かります。 ブレッドボード上の配線を変えただけですが、電圧降下量を大きく低減でき、結果として電源電圧が低いものを選ぶ事ができるようになりました。これは、見方を変えると、同じ電源電圧でも、より各ユニットの動作安定性を高める事ができた、とも言う事ができます。以上、例題を使って、共通インピーダンスの影響を説明してきました。 最後に、実機を使って実際に共通インピーダンスの影響を確認してみましょう。 これは現在、例題の最初の回路のように、わざと共通インピーダンスを持たせた配線になっています。 この状態で電源電圧の両端とユニットCの両端の電圧を測ると、このようにユニットCの点では400mVくらい電圧が下がっている事が分かります。 十分に高い電源電圧が供給できている場合は、この電圧差が問題になる事は少ないですが、電源電圧を少しずつ下げていくと、このようにユニットCから徐々に回路動作が不安定になっていくのが分かると思います。 今回のように、複数のユニットで同様の明るさや同一動作をさせたいときは、可能な限り電源電圧は揃えておく必要があります。そのため、この回路を共通インピーダンスが小さくなるように改善してみました。やった事は、先ほどの例題と同じく、電源グランドの配線を変え、電源に近いところに直接接続しただけです。 すると、このように電源電圧からの電位差がかなり小さく、且つ、ユニットA,B,Cの電圧が同程度にする事ができました。以上で、今回の説明は以上となります。 なお、今回はブレッドボードを使って説明をしてきましたが、実際には、ケーブルや基板パターンなど、あらゆる場所で共通インピーダンスは発生します。電流の流れるルートをイメージして、できるだけ共通部分を作らない配線を心がけましょう。

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