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【NO.80】新マキリ買ってみたが ⁈ → マキリは裏スキを見て買うべし。

Japan Knife Museum 1,471 lượt xem 1 year ago
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金物店で、見たことの無いブランドの「勝清」のマキリ、買ってみました。本体がビニールの袋に入れてあるし、防錆紙まで入れてある。包装にまで気を使うならば、きっと丁寧に作られたものに違いない、と思いました。
通常、漁師町等でマキリが売られている場合は、ビニールの袋など付かず、大箱の中に何本も無造作に転がして有ります。あくまでも実用品で、道具なのです。
抜いて刃を見てみると、刃金と地金の境目が真っ直ぐで、鍛冶屋さんが赤めて鍛接したものではなくて、二層鋼材を打ち抜き形成したものでしょう。穂先の作り方が、綺麗で見事だと思いましたが、今時は数値制御のNC旋盤で機械が自動的に削っているのかも知れません。刻印の「登録 勝清」も表側に打たれ、深く鮮明で商品価値を高めています。昔なら、裏に刻印されているものです。 また、柄も小指の当たる後端部が丸く削って有ります。持ちやすく、またすっぽ抜けを防ぐ為でしょう。

次は欠点です。最大に悪いところは、裏スキの形が良くないのです。表の穂先の形だけ店先でチェックして良い形だ、と思いました。裏スキはキチンとついて当たり前だろう、と裏まで確認しませんでした。帰宅して、じっくりと裏を見ると裏スキがおかしい。砥石を当てれば、キチンと形が出てくるだろう、としばらく研ぎ続けましたがダメでした。これは裏スキのくぼみ部の中央線が合っていないのか、えぐりが浅すぎるのです。
比較の為に「源音丸」と「孫光」と「正広」のマキリの裏スキと比較してみました。比較してみると、ほとんど裏スキができていない、というほうが正解です。 これは切味にも関わってくる事項です。

鍛冶屋さんの打ったものと違い、鍛鉄する事も無く、平たい二層鋼材を打ち抜き、しかしプレス機で窪みをつくることも無く平板状のままでは、裏スキを鍛冶屋製品と同じように深くしようとすれば、刃金層を削ってしまって地金の層にまで、達する恐れがあるからでしょう。昔のマキリを知っている小生としては、残念な仕上がりです。

また、伝統的なものは、包丁と同じように木柄に焼き嵌め方式です。ところがこのマキリは目釘で、浅い中茎にして鋼材を短くカットし、それによって2枚鋼材を節約したものでしょう。これでは分解などはできません。また、一見すると鍛冶屋さんが鍛鉄し、酸化皮膜の黒皮を残した「黒仕上げ」に見せていますが、全くの別物です。それは「源音丸」の槌で打った跡が残っている黒皮と比較すれば、一目瞭然です。

鍛冶屋さんの作ったものだろうと、工業製品であろうと、裏スキがしっかりした物を検分して買うべきだ、と反省しました。このマキリも普通に使えます。けれども、なんだかなあ、という感じです。カレーパンを買って、喜び勇んでかじりついたら中は空洞で、底にちょっぴりカレーがこびりついていた時の失望感です。将来的には、工業的に製作されたマキリは、「裏スキ」も省略されているかも知れません。

なお最近、漁師町の金物屋に行きマキリを見ていたら、「源音丸」の物は全く無く、代わりに「源音房」なるマキリが出ていました。店主に尋ねると音丸が引退して、後継者が音房、と言うことじゃないのかな?との返事でした。マキリは、もうほとんど利器材を使った大手の物ばかりになっていました。

全長27.9㎝、刃長15.5㎝ 刃幅2.7㎝(中央部で)
刃厚3㎜。いわゆる五寸間切り。

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