電気自動車が世界的な人気となる中、懸念されているのが電池の原材料不足です。専門家からは「世界的な“争奪戦”が起きている」とも。資源の少ない日本にできることはあるのか。電池を原材料の姿に“戻す”“電池リサイクル施設”に初めてテレビカメラが入りました。
電気自動車専門の中古車販売店。国産車からアメリカのメーカーまで幅広く電気自動車を扱っています。そしていま、販売に力を入れているのが・・・
Ｅv ＣＡrＳ 佐久間竜一社長
「ＥＶの充電と放電ができる装置になっています」
電気自動車の電池を充電できるだけでなく、その充電した電力を住宅や事務所に使うこともできる装置です。
Ｅv ＣＡrＳ 佐久間竜一社長
「一般家庭の消費の平均でいくと、約６日間は放電できる。電気自動車を電池として活用できるので、停電が怖くない家になる」
電気自動車は、原油の高騰で需要が高まり世界的な人気となっています。そうした中で懸念されているのが、電池の原材料不足です。
自動車やスマートフォンに使われているリチウムイオン電池には「レアメタル」と呼ばれる「希少金属」が多く使われています。
国内ではほとんど採れず、世界的にも埋蔵量が少なかったり、技術的に抽出が難しかったりすることから「レア」と呼ばれています。
リチウムイオン電池で使われるニッケルはロシアが生産量世界３位。ウクライナ情勢の悪化でいまなかなか手に入らなくなっているのです。
伊藤忠総研 深尾三四郎上席研究員
「レアメタルに関して言うと世界的な争奪戦の様相を呈してきている。いま日本の自動車メーカーもそうですけど半導体が不足して、いろんなところが止まっている。今後これに拍車をかけて電池の調達不足が始まる」
レアメタルを海外からの輸入に頼る日本。そこで必要になるのが再利用の技術です。
伊藤忠総研 深尾三四郎上席研究員
「電池のリユースと電池から取り出す材料のリサイクル。使用済み電池から取り出すレアメタルをリサイクルする」
その取り組みはすでに始まっています。国内でまだ数か所しかない“リサイクル施設”。その1つが秋田県にあります。今回初めてテレビカメラが入りました。
記者
「熱気を感じますね」
ＤＯＷＡエコシステム 田中規之 課長
「こちらがリチウムイオン蓄電池を
熱処理する炉となっています」
案内された場所にあったのは２機の巨大な加熱炉。その前に運ばれてきたのは四角い箱です。この中に使い終わった自動車用の電池が入っているのです。
ＤＯＷＡエコシステム 田中規之 課長
「この中に１つ ２つ 電池を入れて金属製の容器の中で熱をかけていく」
電池のリサイクルの流れは、まず、自動車の使用済み電池のほか生産過程で出た不良品などを回収します。
そして、電池からレアメタルなどを分離・抽出。原材料に戻した上で再度、生産ラインに送っているのです。
一番重要となるのが最初に行う、電池をまるごと炉に入れる加熱処理だといいます。
ＤＯＷＡエコシステム 田中規之 課長
「バッテリーは高いエネルギーを持ったものとなっております。事前に解体などしてしまうとショート、感電、火災のリスクがある。まるごと熱処理することでリスクを最小限にすることができる」
そして熱処理を終えた電池が、こちら。表面の樹脂がなくなっていました。およそ７５０度で数時間熱処理され、レアメタルなど必要な金属は残された状態になっています。
ＤＯＷＡエコシステム 田中規之 課長
「この部分がセルと言われる部分でして、この部分に弊社が回収のターゲットとしている、ニッケル、コバルト、リチウム、といった金属が粉状になって入っている」
その後、電池は特殊な機械によって破砕、選別。
最終的に回収したものが、「ブラックマス」と呼ばる、黒い粉状の物質となります。その中にレアメタルが多く含まれているのです。
記者
「鉄と比べても断然ブラックマスの方が重い」
ＤＯＷＡエコシステム 田中規之 課長
「やはり中に金属資源が含まれているので、ずっしりとした感触になっています。これら金属を回収して何度もリサイクルするというのは、今後の社会全体にとって必要になってくると考えている」
リサイクルされたレアメタルから新たな電池へ。エネルギー資源の少ない日本にとって欠かせないものとなりそうです。
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