劇作家・末満健一がライフワークに掲げ、2009年より展開するオリジナル作品「TRUMPシリーズ」。
数々の過去シリーズ作品で音楽を担当している和田俊輔氏とタッグを組み、<繭期幻想樂団>始動!
コンセプトは“たった1曲で完結するミュージカル”。
TRUMPシリーズ独自の世界観と、公演から派生した物語を、歌に乗せてお届けいたします。
【概要】
TRUMPシリーズ『繭期幻想樂団』
作詞:末満健一 作曲:和田俊輔
Vol.2「銀の目と夜のように」
歌唱:新良エツ子 イラスト:問七
ひとりの少年は衝動のままに生きていた
胸の内に燻る獰猛な衝動を
抑えることができなかった
暴れる彼を止めようと
火掻き棒が彼の顔にめがけて振り下ろされた
片目を潰された繭期の少年
白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた
片目が銀色の目をした吸血種の物語
一度目の脱走は
嘘みたいに呆気なく失敗に終わった
二度目の脱走は
懲罰房から出てすぐのこと
このときの脱走は成功する
そのあとすぐに捕まって
二週間の懲罰房入り
三度目の脱走も成功する
毒の血のジュース事件を知ってるかしら?
クランの食堂で出された兎の血のジュースに
リコリスの毒が混入されていた
毒の血のジュースを飲んだ生徒で
医務室は溢れ返り クラン中が大騒ぎ
騒ぎが収まった頃 少年の姿はすでに消えていた
血盟警察が動き出す事態になったけれど
誰も彼を見つけることはできなかった
少年が向かったのは人間種の世界
互いの世界を侵犯してはならぬ
不可侵条約があればこそ
吸血種が身を隠すには打ってつけの場所
喉の渇きを潤すために少年は
夜道をひとり歩く少女を獲物に定めた
首筋に牙を突き立てようとした
少年の目は闇に吸い込まれる
まるで死んでいるかのような白い肌
まるで夜しかしらないような黒い瞳
夜のような少女は怯える様子もなく
心奪われた少年は一目で恋に落ちたのだった
人間種と吸血種 互いに世界を別つふたり
両親を亡くして孤独である少女は
自分を襲おうとした少年を匿った
彼が吸血種であることをわかりつつ
少女はどこからか手に入れた血液を
少年に施し与え その渇きを癒す
時を同じくして
その少女の住む村は恐怖に陥っていた
村の人間が次々と殺されていった
猟奇的連続殺人事件
誰の仕業かもわからずに
村中に疑心暗鬼が蔓延する
ある日少年は物音に気付く
真夜中に少女がどこかに出かける
後を追う少年
少女の歩みは迷いなく
そこは若い夫婦の住む家だった
少年が窓から覗くと
身重の妻が殺されていた
小さな村を震撼させた
猟奇的連続殺人事件
すべては彼女の仕業だった
夜のような少女 一目で恋に落ちた
夜のような少女 血を与えてくれた
夜のような少女 彼女は狂気の虜であった
気がつくと少年のその手は
少女の首を絞めつけていた
夜は恍惚とした笑みを浮かべながら
少年の手によって息絶えた
その光景を見ていた者がいた
妻を殺されたばかりの男だろう
少年はすぐさま逃げ出した
夜のような少女 彼女の犯した罪のすべては
少年のものとなるだろう
片目を潰された繭期の少年
白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた
片目が銀色の目をした吸血種の物語
[TRUMPシリーズ公式サイト]
https://trump10th.jp/
[X(旧Twitter):ワタナベ演劇公式]
@watanabe_engeki
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