紹介した動画
https://youtu.be/cT5_9bjfHSI?si=dWMbQ-6bPcHFvIJG
https://youtu.be/_cHir5h1RA8?si=UghXs3WYFWaDfKJs
参考文献
https://onlineshop.treeoflife.co.jp/collections/single-essential-oil/products/082993410
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/12/58_58.1356/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/127/2/127_71/_pdf/-char/en
厚労省コロナ嗅覚障害報告
https://www.m3.com/clinical/news/1044328
https://www.m3.com/clinical/news/1044329
嗅覚刺激療法のレビュー
https://www.rhinologyjournal.com/Rhinology_issues/manuscript_1517.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD178BX0X10C22A5000000/
https://www.nationalgeographicla.com/ciencia/2022/05/como-recuperar-el-olfato-despues-del-covid-19-un-entrenamiento-te-ensena-a-hacerlo
においの6種類
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/lary.25245
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikohinbunka/2016/1/2016_06/_pdf/-char/ja
0:00 タイトル
1:09 目次
1:28 匂いのメカニズム
2:08 嗅覚障害2つの原因
2:24 原因を見分ける方法
3:13 コロナ後の嗅覚障害
3:59 治療①ステロイド点鼻
4:34 治療②漢方薬
6:36 治療③嗅覚刺激トレ
7:56 簡単な嗅覚刺激
8:55 認知症と嗅覚障害
9:47 まとめ
今日お話しする内容は、4つです。
①嗅覚が失われる2つの原因と関連する病気
②嗅覚障害を自分で診断し治す方法
③コロナや風邪の後の嗅覚障害に効く市販薬
④嗅覚を鍛えて認知機能を保つ方法
それでは順番に解説していきます。
①嗅覚が失われる2つの原因と関連する病気
匂いの元となる分子は数十万種類もあります。
この匂い分子の組み合わせが様々なにおいとなります。
例えばコーヒーには数百種類の匂い分子が含まれています。
この匂い分子が鼻の上部にある嗅粘膜に付着し、嗅神経が匂いを感じます。
この神経が壊れると、匂いがわからなくなります。
事故で頭をぶつけたりコロナウイルス感染症で神経が壊れると嗅覚障害になります。
嗅神経が壊れていなくても、鼻づまりや鼻水が邪魔をして匂い分子が嗅粘膜に届かない場合も、匂いを感じなくなります。
嗅覚障害の原因や治療は、嗅神経が生きているか壊れているかで大きく異なります。
嗅神経が生きている場合は、匂い分子が鼻の天井にある嗅粘膜に届かない、つまり鼻の問題で匂いがしなくなります。
一方、嗅神経が壊れている場合は、嗅神経から脳までの神経そのものの問題です。
嗅覚障害を引き起こす代表的な病気は、アレルギー性鼻炎、蓄膿症、そして風邪やコロナウイルス感染の3つです。
アレルギー性鼻炎と蓄膿症は鼻の問題、風邪やコロナ後の嗅覚障害は神経の問題となります。
②嗅覚障害を自分で診断し治す方法
これらの3つの病気を見分けるために、まず鼻水をよくかんで、納豆やニンニクなどの強い匂いをかいでみてください。
少しでも匂いを感じる場合は、嗅神経が保たれていて壊れていない証拠です。
この場合、嗅覚障害の原因は鼻の問題で、アレルギー性鼻炎や蓄膿症が疑われます。
どちらの鼻の病気か簡単に見分けるポイントは、鼻水です。
黄色の粘り気のある鼻水が2週間続き、頭が重い感じがあれば蓄膿症です。
一方、透明または白の鼻水なら、アレルギー性鼻炎の可能性が高いです。
治療は花粉症の薬と同じになります
鼻水もなく、鼻もよく通っているのに匂いが全く感じられない。
この場合、嗅神経が壊れている可能性があります。
特に風邪になったりコロナウイルスに感染して1週間後に匂いがしなくなった場合は、神経の問題です。
嗅神経が壊れるメカニズムはまだ解明されていませんが、ウイルスが脳に到達しないように嗅神経が積極的に壊れていると考えられています。
嗅神経は、鼻の嗅上皮から脳に直接つながっています。
そのためウイルスが嗅上皮粘膜から神経を通して脳に伝わりやすいのです。
ウイルスに感染したときは、先に嗅神経が積極的に壊れることで、神経を通ってウイルスが脳に行かないように守っています。
つまり嗅覚を犠牲にすることで脳を守っている可能性があるのです。
③コロナや風邪後の嗅覚障害に効く市販薬
それではウイルスで壊れた嗅神経を回復させるにはどうすればよいのでしょうか
オススメは、ステロイド点鼻薬です。
ウイルスによる嗅覚障害の原因は、ウイルスが直接神経を傷つけることと、ウイルスから神経を守ろうとする神経細胞の免疫応答による神経障害の2つが考えられています。
ステロイドは免疫応答を和らげ、感染初期の鼻粘膜の炎症やむくみも抑える効果があります。
市販薬ならフルナーゼ点鼻薬などを2から3週間使ってみてください。
コロナウイルスのオミクロン株による嗅覚障害では1か月で9割が回復すると報告されています。
あせらずに神経の回復を待ちましょう。
ただし、発症後3〜4週間経っても匂いが分からない場合、嗅神経が直接ウイルスで障害されている可能性があります。
これには、ステロイドの効果は期待できません。
なので1か月以上、ステロイド点鼻薬は、漫然と使い続けないでください。
代わりに漢方薬を飲みながら、嗅覚刺激治療を行ってください。
これら漢方薬と嗅覚刺激は、嗅神経に栄養と刺激を与えて、神経の再生をうながします。
嗅神経細胞は髪の毛や皮膚と同じように、古い細胞が死ぬと新しい細胞が生まれるサイクルがあります。
マウスやラットでは、嗅神経が壊れても4~6週間で見た目も機能も回復することが分かっています。
この神経が回復するために重要なのが「神経成長因子」といわれるものです。
これは、神経を再生させる「肥料」のようなもので、特に脳の下部にある嗅球に多く存在します。
動物実験では、これを投与すると、嗅球から嗅神経細胞までの神経線維が次々に伸びることがわかっています。
この肥料である、神経成長因子を活性化させる成分が漢方薬に入っているのです。
代表的な漢方薬は、当帰芍薬散、加味帰脾湯、人参養栄湯です。
これらの漢方薬は、市販されているので、容易に手に入れることができます。
これらにふくまれる3つの成分が神経再生に有効と考えられています。
蒼朮は神経成長因子を作るのを助け、人参は神経の突起を伸ばす作用、芍薬も中枢神経の記憶障害を改善する効果があるそうです。
しかし現在、神経成長因子そのものを含む薬はありません。
なぜなら、神経成長因子が消化管から吸収されにくく、脳に到達しないからです。
紹介した漢方薬は、脳にある神経成長因子の働きを高め、嗅覚障害を改善すると言われています。
直接神経を再生する薬ではないため、効果が出るまでに少なくとも3から6か月はかかります。
これらの漢方薬をのんだ人の6割で風邪による嗅覚障害が改善したそうです。
コロナウイルスの嗅覚障害への効果は不明ですが、ほかに有用な薬がないので、漢方薬を試してみると良いでしょう。
漢方薬がない海外では「嗅覚刺激療法」が行われています。
良いにおいを、毎日定期的に嗅ぐことで神経を再生させる治療です。
2009年の研究では、4種類の匂いエキスを1日2回、10分間、12週間嗅いでもらったところ、何もしなかった患者より嗅覚の回復が早かったことが分かりました。
臭い分子が神経細胞を刺激し、嗅神経の神経線維が伸びると考えられています。
この嗅覚刺激は、脳の臭いを感じる部分の血液の流れも良くすることが分かっています。
それではどんなにおいを嗅げば良いのでしょうか
研究では、嫌な臭いでなく、4種類の良い匂いが選ばれています。
一般的に匂いは、おおきく6種類の系統に分けられます。
この6種類から、焦げた匂いと腐った匂い以外の4つの良い匂いを嗅ぎます。
それは果物、お花、樹木、薬味の匂いの4つです。
海外では、レモン、バラ、ユーカリ、クローブの匂いが使われています。
ネットの通販で嗅覚刺激療法用の4つのエキスも販売されていますので、気になる方は購入して試してみてください。
ちなみに、日本人にはユーカリなどの匂いになじみがないので、パイナップル、バニラ、ココナッツ、湿布の4つの匂いエキスで嗅覚刺激治療の研究がされています。
このようなエキスを手にいれられない場合は、身近な良い匂いを意識して嗅ぐことを行いましょう。
ご自身に、なじみのある匂いであれば良いです。
ただし、腐った匂いや焦げた匂いなどの嫌な臭いは避けましょう。
これらは「異臭症」を引き起こす可能性があるからです。
嗅覚の異常の一つで、本来の匂いと違って嫌な匂いに感じる病気です。
良い匂いの4系統を、特にえらんで嗅ぐようにしてください。
例えば、なじみのある①お花や②果物、③ヒノキの柱や焚火に使う蒔きなどの木材の匂い、そして④わさびや生姜、メントールなどのツンとする薬味の匂いの4種類を選んで嗅ぐと良いでしょう。
強い匂いである必要はありません、1日10秒以上、1日に3回は匂いを嗅ぐようにしてください。
動物実験では、嗅覚障害後1週間で新しい神経が出現し、2週間目から脳の嗅球が反応することが分かっています。
したがって、嗅覚刺激療法は1ヶ月以内に始め匂いがするまで3ヶ月間はするのが良いと考えられます。
最後に認知症と嗅覚障害についてお話しします。
認知症の人は、認知機能が低下する前から嗅覚障害を起こしていることが分かっています。
嗅覚障害のある人は認知症が重症化しやすいともいわれています
ただし、嗅覚障害を予防すれば認知症も防げるかというと、そうではありません。
認知症の有る無しに関係なく、年齢とともに嗅覚は衰えることがわかっています。
60歳以上の25%に、80歳以上では50%で嗅覚の低下が認められます。
加齢による嗅覚障害に対する治療法は確立されていません。
風邪の後の嗅覚障害に有効な嗅覚刺激療法も、高齢者には効果が限定的であることが分かっています。
しかし嗅覚トレーニングは、低コストで安全性が高い非常に魅力的な治療法です。
予防効果があるかは不明ですが、日頃から匂いを意識して嗅ぐことは、嗅覚障害の早期発見につながります。
認知機能の低下に早く気づくためにも、匂いを意識した生活を送りましょう。