「加川夫人には昔から薊の花という仇名があったそうです」
青空文庫より『薊』(山本周五郎)を朗読しました。
いくつもの時間、場面が混在した不思議な印象の物語です。
人には誰も秘密があるもの。
ただその秘密が、「秘密にしたいもの」と「秘密にせざるを得ないもの」とでは重みが全然違いますね。
その重みに押しつぶされた時、人は破滅の道を辿ってしまうのかも知れません。
また妻<ゆきを>のことに目が行きがちですが、夫<銕太郎>の「本当のおまえを見、本当のおまえと語り、本当のおまえに触れたかった」という想いも形式ばかりに囚われたあの時代にあっては貴重な考え方でしょう。
時代小説でありながら、そしてこれだけ昔に書かれながら、現代にも通じる多様性の問題を取り上げた作品です。
#朗読 #山本周五郎 #時代小説
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