倶知安駅は函館本線の長万部~小樽間、所謂山線に位置しています。山間の勾配を走る区間を抜けると倶知安町の盆地に出る形で、いかにも山線の真ん中に位置する駅です。函館-札幌間の鉄道利用は既に海側の室蘭本線利用が定着していて、主要幹線の整備がされて、特急「北斗」が走ります。
一方の山線の衰退は著しく定期優等列車の設定はなく、全て短編成のローカル列車です。地域移動はこれを使うか、或いは車を借りて乗るなどするしかありません。国道5号は素晴らしく快適な道ですが、広大な北海道の道を走りこなすのは楽ではありません。(訪問者の個人的な感想ですが)
また鉄道は便の少なさと、混雑度合いでJRを利用することには躊躇があります。
主要幹線からすっかり外れた感のある函館本線山線。
その中間駅である倶知安が新幹線駅となることを望む思いは、立地(地形)的に、また現状交通状況からも、切実で大きなものがあるでしょう。山間地帯で交通手段に課題があり、一方で世界的なリゾート地を周囲に要するのだから尚更です。新幹線を切望する声は特に大きいと言えましょう。
山線は廃止されることが決まっています。
一方の新幹線の開業めどは立っていません。(当初2030年度開業予定)
北海道新幹線新函館-札幌間の開業が2030年度予定とされたのは、2015年鉄道・運輸機構と政府との話合に於いてで、
それまでの想定開業時期である2035年度を5年間前倒しで2030年度となったものです。
並行在来線の廃止が事実上決まったのが2022年2月です。
(長万部-余市間の沿線町村がバス転換を容認)
同月に新幹線駅工事と新たな街づくりを進める利便性の観点から、
長万部、倶知安の2町は、鉄道(在来線)廃止の要望書を提出しています。
つまり、早期に新幹線工事に支障となる在来線廃止の意図を打ち出した訳です。特に倶知安の新幹線駅準備工事の動き出しは早く、
在来線既存ホームを撤去し新たなホームの供用を2021年10月早くも開始しています。駅周辺の新幹線高架となる予定の場所の更地化着手も早く、2022年には作業が進められていました。
ところが、トンネル部の工事が難航し工事完了時期も出せない状況というニュースが2024年5月に駆け巡ります。
(鉄道運輸機構が2030年度の開業は極めて困難と報告)
町をあげての歓迎ムードだった倶知安は梯子を外されたような思いはあるでしょう。
新幹線のことを少し離れて、倶知安地域の魅力を考えると、札幌からも新千歳からも交通手段に難あり交通の利便性に問題のあることが、逆にこの地域の魅力を高めているとも言えるような気もします。
在来線にシャトル特急が往き来するとすれば、また高速道が札幌から小樽・余市を抜け倶知安まで至るとすれば、今の倶知安地域の魅力は大分異なるものになっているように思われます。
果たして新幹線がこの街に来て、今のままの魅力でいられるかは分かりません。現状開業のめどが立たず、当初の想定開業時期である2035年度も微妙と言われています。急ぎ工事を進めて施設を錆びつかせるのではなく、今あるものを生かしてUPさせても良いかと考えます。
在来線廃止に向けて舵を切った街ではありますが、通学輸送、観光輸送とも貴重な鉄路です。山線全体の営業収支は依然厳しいもののUPの兆しはありますし、恐らくインバウンドの影響大と思われる列車の混雑も暫し話題になるところです。衰退に迎合して現況を維持するだけでなく、
快適な列車を走らせて活力を呼び込む発想があっても良いのでは。
臨時特急「ニセコ」は乗車率が高いようです。
それからローカル列車の座席の快適化を求めたいところです。
そして新幹線の来ない現状の倶知安界隈が当面そのまま続くことを、いくばくかの安堵で眺めても良いのではと思うところです。