今回は今さら聞けない「1種換気」について解説します。
先日お客様から、「1種換気ってどうなんですか?」という、とても基本的な質問をいただきました。このテーマについては、いろいろな方がすでに語り尽くしているかもしれませんが、改めて、今さら聞けないと思われがちなポイントを整理しながら、家づくりに役立つ視点で解説したいと思います。
まず、1種換気・2種換気・3種換気についてですが、別の言い方をすると「24時間換気」というものになります。実は、この仕組みが話題になったのは比較的最近のことです。そのきっかけとなったのが、「シックハウス症候群」です。幼稚園で内装工事を行った際、壁にペンキか何かを塗った後、多くの子どもたちが気分を悪くしたというセンセーショナルなニュースがありました。これをきっかけに、住まいの環境が原因で健康に不調をきたすのではないかという問題意識が広がりました。そして2003年7月、この問題を受けて建築基準法が改正されました。この改正の主な内容としては、キッチンや浴室、トイレなど、もともと換気扇が設置されている場所だけでなく、人が暮らす居室にも24時間換気が可能な設備を設置することが義務付けられた点が挙げられます。
さらに、この改正では「内装仕上げの制限」も導入されました。それまでは、内装材の制限といえば、不燃や準不燃といった燃えやすさに関する規制が中心でした。しかし、ここで新たに注目されたのは、化学物質の揮発性に関する問題です。特にホルムアルデヒドのような揮発性有機化合物について、発生量の少ない素材を使用することが求められるようになりました。現在では「フォースター」と呼ばれる基準を満たした建材が一般的になり、内装材については健康被害を防ぐための制限が設けられたのです。
このように、換気設備の義務化とともに、室内環境の安全性を高めるための規制が施行されました。具体的には、換気回数という概念が導入され、例えば部屋の空気容量の半分程度が1時間で入れ替わるような換気能力を持つ設備を設置することが求められるようになりました。また、内装材だけでなく、天井裏や小屋裏、床下、壁の中といった人が直接触れることのない場所からも、有害な化学物質が室内に流入しないようにする対策が義務付けられました。そのような背景の中で、換気方法が確立され、現在では主に3つの種類の換気方式があります。今回はそのうちの1つである「1種換気」について解説いたします。
1種換気とは、実はとてもシンプルな仕組みです。換気とは、単に部屋の中の空気を外に出すだけではなく、同時に新鮮な外気を部屋の中に取り入れる必要があります。外気を部屋の中に引き込む「給気」と、部屋の中で増えた二酸化炭素や調理で発生した匂いなどの「排気」、これらの両方を機械(ファン)を使って行うのが1種換気です。この条件を満たせば、1種換気と呼ぶことができます。1種換気のメリットは、機械を使って強制的に空気を入れ替えるため、換気計画の狙いを確実に実現できる点です。一方でデメリットとして、機械を使用するためイニシャルコストがかかること、機械の寿命によるメンテナンス費用や動作に必要な電気代といったランニングコストが発生することが挙げられます。
では、なぜ一般的な住宅で1種換気が望まれるのかというと、その理由は「熱交換」にあります。1種換気では熱交換を行うため、「熱交換換気」とも呼ばれています。熱交換の性能は「熱交換率」という指標で表されます。例えば、熱交換率が90%の場合、外気温が0℃、室内温度が20℃であれば、外気を取り入れる際に熱交換装置を通じて温度を上げ、約18℃程度まで暖めて室内に給気することが可能です。また、室内の20℃の空気を外に排出する際には、熱を保持しながら約2℃くらいまで温度を下げて外へ放出します。これにより、室内のエネルギーを無駄にせず効率的な換気が実現します。
熱交換の仕組みは一見難しそうですが、実際はとてもシンプルです。熱交換を行う素子は、紙のような高性能の透湿膜で作られており、この膜を通じて熱や湿気が移動します。熱は高い温度から低い温度へ、湿度も同じように高い方から低い方へと自然に移動する性質を利用しています。この仕組みにより、外から取り入れる冷たい空気と室内から排出される暖かい空気が境界線(熱交換装置)を作り、交差しながらも直接混ざり合わないようにして、熱交換が行われます。
1種換気には「顕熱交換式」と「全熱交換式」という2つのタイプがあります。顕熱交換は主に室温(温度)だけを交換する方式で、全熱交換は室温だけでなく湿度も交換する方式です。顕熱交換では温度のみのやり取りを行いますが、全熱交換では湿気を含む空気中の水蒸気の熱も交換します。この2つの方式が1種換気の基本的な仕組みとなります。
さらに、1種換気の施工方法には「ダクトレス」と「ダクト式」の2種類があります。ダクトレスは、壁に直接設置する小型のユニットで、シンプルで施工が簡単です。在来木造住宅、2×4住宅、鉄筋コンクリート(RC)など、どの建築工法にも対応可能です。多くの場合、新築時に1種換気の導入を検討されることが多いですが、最近ではリフォームや大規模リノベーションの際にも注目されています。例えば、「家全体を換気システムでカバーしたいけれど、予算的に厳しい」「リビングダイニングだけ換気したい」といったケースでも、このダクトレス式は取り入れやすいと言われています。
一方、ダクト式について説明します。ダクト式では、熱交換ユニットという装置を天井や壁に設置し、各部屋からの排気をユニットに集めて熱交換を行い、その後に排気を外に出す仕組みです。顕熱交換式の場合、湿気の交換をしないため、トイレやお風呂などの排気をまとめて処理できます。しかし、全熱交換式の場合は湿気も交換するため、居室とお風呂やトイレの排気を一緒に処理することができません。そのため、全熱交換式ではトイレやお風呂の排気を分ける必要があります。
ダクトレス式とダクト式を比較すると、ダクト式のほうが導入コストが高くなる傾向があります。ただし、どちらの方式も熱交換率には製品ごとに違いがあり、それに応じたランニングコストが発生します。例えば、日本スティーベルというメーカーの熱交換システム(主に全熱交換タイプを使用)では、1か月の電気代が約450円程度とされています。このように初期費用はかかるものの、電気代が節約できるため、17年ほどで十分にコストを回収できるとされています。さらに、現在では資源不足や世界的な影響により効率が向上しており、回収期間が短くなっているとも言われています。
ただし、隙間が多い家では換気システムの効果が低下することがあります。そのため、ある程度の基本性能を持つ家でなければ、1種換気の導入は効果を十分に発揮できません。以前、大手ハウスメーカーの鉄骨系住宅でC値が管理されていないにもかかわらず、1種換気が2台も設置されていたことがありました。しかし、そのような環境では「宝の持ち腐れ」となり、期待した効果が得られません。そのため、性能が不十分な家では第3種換気を選ぶほうが良いという意見を述べたこともあります。このように、家の性能が換気システムの効果に大きく影響することを、ぜひ知っておいていただきたいです。
さらに、日本の夏は湿気が多く、冬は乾燥しています。換気を行うと、夏は湿気を含んだ空気が入り、冬は乾燥した空気が入ってきます。そのため、全熱交換タイプを導入したいと考えるのは自然なことです。実際、私自身も全熱交換タイプを採用したいと思います。しかし、一つ覚えておいていただきたいのは、1種換気の全熱交換を選ばれた住宅で後々問題が発生するケースがあることです。
例えば、2年ほど経過したお宅を点検した際、フィルターがひどく汚れている状況に遭遇することがあります。熱交換素子を取り出してみても、同様に汚れが蓄積していることが多いです。スイッチは入れているものの、実際には換気が十分に行われておらず、機械に負荷がかかっている可能性もあります。このような問題が起きる原因は、全熱交換式の熱交換素子が湿気と温度のやり取りを行うデリケートな素材(紙や膜)で作られているためです。そのため、水洗いが難しく、基本的には掃除機で吸い取る程度のメンテナンスしかできません。さらに、長期間使用すると素子の交換が必要になる場合もあります。
一方で、顕熱交換式の場合は湿気を通さず空気のみを移動させるため、フィルターが水洗いできることが多く、掃除が簡単です。全熱交換式は、熱交換素子の前に二重フィルターが設置されていることが多いですが、これも定期的に掃除を行わないと機能が低下します。掃除可能なフィルターと掃除が難しいフィルターがありますが、どちらの場合も定期的なメンテナンスが必要です。
最近では、ランニングコスト、特に電気代の回収スピードが速くなっていることから、1種換気を採用する方が増えています。しかし、掃除を怠らないことが非常に重要です。最低でも年に1回は熱交換素子の点検や交換などのメンテナンスを行う必要があります。工務店に依頼することも可能ですが、最終的には住む方自身が責任を持って管理する必要があります。また、熱交換素子の購入については、Amazonや楽天などで手軽に購入できるものか、もしくは特定のルートでしか購入できない特殊なものなのかを事前に調べておくことをおすすめします。
さらに、掃除のしやすい場所に熱交換ユニットを設置することも重要です。例えば、天井に設置した場合、掃除中にホコリが落ちてきて目に入るなどの理由で、苦手意識を持つ方が多いようです。実際、私のお客様の中にも「掃除中にホコリが落ちてくるのが嫌で掃除をしていない」という方がいらっしゃいました。そのため、壁や床に設置するほうが掃除しやすいです。特に2階の床に設置し、1階の天井ではなく2階の床に点検口を設けるような設計にすることで、メンテナンスが楽になる場合があります。この方法は、私が尊敬する大先輩である絹川さんから教わったものです。
このように、1種換気を導入したからといって、それで終わりではありません。掃除のしやすさを考慮した設計と定期的なメンテナンスを行うことで、大きなトラブルや失敗を防ぐことができます。ぜひ、これらの点を頭に入れた上で、1種換気の採用や運用を検討していただければと思います。
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