Yoshikazu Kenjoh, Professor, Keio University
司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/34861/report
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記者による会見リポート
ラ・ラ・ランドに医師は“配置”されるか?
「国民会議の時はみんな明るかった。新たな財源で社会保障のアレをよくしよう、コレをよくしようとアイデアを出しあっていた。しかし今や、ラ・ラ・ランド状態だ」。権丈氏の言う洋画「ラ・ラ・ランド」は、今や別々の道を歩む2人が、偶然再会し、あり得たはずの2人の幸せな生活と現実とが、想い出の曲と共に交錯するという、切ないラストを迎える。消費増税の二度の先送りで、将来の財源のメドが立たない一体改革を振り返るのも、苦い思いは同じということだろう。
団塊の世代が全員、後期高齢者入りをする2025年、どうすれば医療・介護を維持できるのか? その青写真を描いたのが13年の社会保障制度改革国民会議の報告書であり、その医療・介護編の起草委員が権丈氏。慢性病が増える超高齢社会で、医療の目的をQOL=生活の質の向上とするのなら、医療と介護の違いはなくなる。両方を一体として切れ目なく提供しようという地域包括ケアは、この考えに基づく。
しかし、ここで懸念されるのが、いわゆる医師の偏在問題。医療や介護をどう提供するか決めても、そこに医師が存在しなければ、絵に描いた餅。医師が都市部に集中して、地方の医師不足が深刻化したり、一部の診療科に偏っている現状を是正する必要がある。
厚生労働省の専門部会は昨年、医師の開業には僻地での勤務を条件とするなど、一定の規制の検討が必要とする中間取りまとめを行った。ところが、大臣の肝いりでその後できた別の検討会は、規制に否定的な報告書をまとめた。さらに権丈氏によると、もともとの専門部会の委員は、後からできた検討会について正しい説明を受けておらず、手続き的に疑義があることも、会見で資料を提示しながら説明した。
内容が異なる2つの報告書をどうまとめるのか? 2025年、ラ・ラ・ランドに医師はちゃんと配置されているだろうか?
企画委員 NHK解説委員
竹田 忠