“令和の米騒動”から半年近く経ちますが、事態は未だ収束していません。
さいたま市にある米店には、農家から、直接、仕入れたブランド米が並びます。
角田商店 白川和江代表
「これでも、ない。『つや姫』って山形のお米は、積んでいるだけで、今季、終わり。(収穫の)9月、10月まで、あと半年以上あるが、あそこに積んであるだけ。もう現地にもない。去年の今ごろよりもっと大変。うちも問屋さんから仕入れないといけない商品があるが、高くて手が出ない。消費者も訳がわからない値上げで困る」
農林水産省は、対策として、保有する備蓄米の放出に向けて動き出しました。1年以内に放出した分を買い戻すことを条件とし、今週中にもJAなどの集荷業者に、入札で売り渡す数量などを示す方針です。
政府は、備蓄米として毎年21万トン程度を買い入れ、最大5年間保管し、合計100万トンを目安に備蓄しています。これは国内需要の1.5カ月分~2カ月分にあたる量です。これまで放出の指針は、凶作や災害が起きた場合に限られていましたが、大きく変更した形です。ただ、対策の遅れを指摘する声も上がっています。
立憲民主党 神谷裕衆院議員(3日)
「備蓄以外の方策も含め考えておくべきだった。反省すべきだと思うがいかが」
江藤拓農林水産大臣(3日)
「反省がないのかと言われれば、おおいに反省があります」
スーパーの棚からコメが消えたのは、去年夏ごろ。2000円台半ばで安定していた1袋5キロの小売価格は、一気に3285円に跳ね上がりました。
坂本哲志農林水産大臣(当時・去年9月)
「今後、新米が順次供給され、円滑な米の流通が進めば、需給バランスの中で一定の価格水準に落ち着いてくるものと考えております」
しかし、その後も価格は上がり続け、先月は4185円。高騰に歯止めが掛かっていないのが実情です。
なぜ、対応は後手に回ったのでしょうか。
去年のコメの生産量は、前年より18万トン増えていました。しかし、年末に集荷業者が集めた量は、前年よりも21万トンも減っていたのです。
この“消えた21万トン”が、価格高騰の背景にあるとみられています。
江藤拓農林水産大臣(先月31日)
「米はあると。どこかにスタックしていると考えざるを得ない」
21万トンのコメはどこへ消えたのでしょうか。
日本有数の“米どころ”、新潟県魚沼市のコメ農家を訪ねました。
70ヘクタールの田んぼで、主食用の米や酒米を生産する小岩孝徳さん。去年10月後半から年末にかけて、卸業者からの電話が相次いだといいます。
うおぬま小岩農園 小岩孝徳代表
「『とにかくお米ないですか』と第一声で。(Q.これまで)ないですね、ないです。関東だけでなく、関西からも、結構、多かったですね、そういう声が。(Q.新規業者は良い条件を提示する)農協の価格よりは高い値段で提示はしてきます。そっちの方(新規事業者)に出した農家を、去年、話を聞きました」
生産者から集荷業者が買い取り、卸業者を通じて、外食産業や小売などに渡るのが、主なコメの流通ルートです。しかし“令和の米騒動”以降、生産者から、直接、市場に流れるケースが増えているといいます。
うおぬま小岩農園 小岩孝徳代表
「不思議ですね。ここまでないっていうのは、どこにいっているんだろう。疑問ですよね。(Q.考えられる可能性は)やっぱり、どこかの卸が大量に、1軒だけじゃなくて、みんなが大量に抱えているか、あるいは、海外に流れているとか」
政府は、調査を急いでいます。
江藤拓農林水産大臣(3日)
「今回は、今まで米を扱ったことがないような人が参入している気配がある。どこにどれだけあるか、いま、調査を一生懸命かけています」
◆備蓄米の放出で、コメの価格高騰に歯止めがかかるのでしょうか。2人の専門家に聞きました。
農業経済学が専門の宇都宮大学・小川真如助教は「価格が大きく下がることは難しい」と話します。理由は“売り渋る業者”がコメを手放さないためだといいます。
農業政策に詳しい日本総研・三輪泰史チーフスペシャリストは「価格は下がると思う」と話します。理由は、市場に備蓄米があふれれば、“売り渋る業者”もコメを放出するといいます。
2人の専門家が挙げる“売り渋る業者”とは何なのでしょうか。
コメは、一般的に【生産者】→コメを集める【集荷業者】→【卸・小売業者】→【消費者】というルートで流通します。
コメの高騰が続く背景には、一部の生産者や業者が、コメをより高く売れるタイミングまで市場に出さずいるとみられています。
そこで、農水省は、備蓄米をJAなどの集荷業者に販売。コメを抱える業者に「価格が下がるかもしれない」とけん制して、市場に出回るよう、促そうという狙いがあります。
「価格が下がるのは難しい」とした小川さんは、農水省は、「コメは足りている」というスタンスのため、備蓄米の放出は少量になるとみていて、コメを市場に回さない業者にとっては「価格は変わらない」と見込み、コメを手放さない。また、4~10月まで開催される大阪・関西万博など、インバウンドによるコメ需要が跳ね上がる可能性もあり、業者は、しばらく手放さないのではといいます。
一方、「価格は下がる」と予想する三輪さんは、仮に備蓄米を“大胆”に放出すれば、春ごろに市場にコメがあふれ、現在の価格から3~4割ほど下がる。備蓄米を“少量”で放出の場合、夏ごろまでに緩やかに価格が下がり、消費者が安さを実感するまでには時間がかかるといいます。
今後の懸念について、三輪さんの見解では、「備蓄米の放出の運用が見直されたことで、『儲かりそうだから』とコメを市場に出さない“投機的なプレーヤー”は、うまみがなくなる。今のような想定外の相場はなくなるだろう」といいます。
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