脇阪寿一監督(52)名門チームの浮上、モータースポーツの興隆を求めて もがき続ける奮闘の舞台裏【スーパーGT2024】
9月22日(日)、宮城県スポーツランドSUGO。
降りしきる、強い雨。最悪のコンディションの中で行われた、スーパーGT第6戦。上位浮上へ。そのチームは、我慢強く戦っていた。
1972年に設立された名門、「TGR TEAM サード」。ドライバーは関口雄飛と中山雄一。第4戦終了時点でGT500クラスでのランキングは11位。
なかなか結果を出せずにいた。
チームを率いるのが、脇阪寿一(わきさかじゅいち)監督、52歳。
レース前のグリッド上、取材カメラに向かって。
「さあ、張り切っていこう!」
そんな彼には、モータースポーツへのひとつの強い想いがある。
「本当は我々監督とかドライバーって成績だけ出せばいいんですけど、まだまだ我々の業界が盛り上がっていない。自分たちにできることを見つけてプラスアルファをやっていかないと、なかなかモータースポーツはもっと盛んにならない」
その想いと、サーキットで戦う姿を撮らせてほしい。
「おはようございます」
今回の密着取材を脇阪は、快く引き受けてくれた。
「プロとしての仕事を自分のためやない誰かのためにやる。それがまわりまわって一つのチーム力になりますので」
自らも元・プロレーシングドライバー。
2002年全日本GT選手権シリーズチャンピオン、2006・2009・2019年スーパーGTシリーズチャンピオンを獲得するなど、輝かしいキャリアを築き、「ミスターGT」の愛称でその名を馳せた。また軽妙な語り口で多くのメディアにも取り上げられた。
先月の第4戦、静岡県の富士スピードウェイ。午後に決勝を控えたこの日。
『レースの前に見てほしい』
そう誘われて取材陣が車に同乗すると、スマートフォンで“自撮り”をする脇阪の姿が。
「TGRステージにお待ちの皆さん、すぐ行きますのでお待ちいただけますように。よろしくお願いします」
――(映像は)どこに上げられるんですか?
これね、インスタグラムのストーリーに上げたら、待っている人たち、暑い中待っているでしょ?それがね、「今から来る!」って喜んでくれるんですよ。
監督自ら、レース前のトークショーに出演するため、向かっていたのだ。
会場のアナウンサーに名前を呼ばれると、今度はスマホのカメラを観客席に向けながら登壇。マイクを握ると…。
「関口雄飛のモノマネ。(※シフトアップするエンジン擬音を出しながら)ウィーン、ウィーン、ウィーンン……『チッ!』」
レース中の監督の顔とは違った明るいキャラクターで、観客を沸かせる姿があった。その理由を聞くと。
「とにかくお客さんの“温度”を上げるということで、そのテンションが最高潮になった時点で(レースの)スタートを迎えてもらうと、いきなり盛り上がるじゃないですか。そういうちょっと空気を作りたいなって」
けれど、現役当時は、とがって自分を見せていたこともあったと言う。
「面倒くさい難しいドライバー。自分が勝つために『脇阪寿一』というものをどういう風に演じるかっていう、それをずっとやり続けていたのが若い頃。そこからある程度年齢を重ねるうちに業界全体を盛り上げることを考えて」
「どう喜んで帰ってもらえるか、精一杯自分なりの、こんなやり方しかできないですけど、サーキットでお客さんが求めている自分を演じているみたいな感じです」
だから今、脇阪の魅力に惹きつけられて、多くの観客が彼の周りに集まる。
――すごいですね、最後まで対応されて
暑いのに来てくれるからね。ちょっとでも喜んでくれたら、また来てくれるんです。
迎えた9月22日の決勝。
雨は上がり、脇阪率いるTEAMサードは予選8番手からの巻き返しを狙う。
レース中、ドライバー・スタッフを鼓舞する。
「我々がいま手を持っているからね、逆転出来るからね!」
果敢に攻め続け、一時は4位に浮上。
しかし、結果は11位。長いトンネルから抜け出すことはできなかった。
「モータースポーツに来ているファンの方々は、それぞれの“推し”に対して感情を入れて応援いただく。我々は(成績が)悪いですけど、悪い時も一生懸命頑張っていれば這い上がれる、という姿をお見せすることによって、ファンの方々全てが良い状態ではないと思う。苦しいこともあるし嫌なこともあるし、でも『あのチーム、あのスーパーGTが頑張っているから』という風に思ってもらえると、我々一生懸命もがいているのもひとつ生きてくると思います」
2024シーズンも終盤、第7戦は10月20日(日)大分県オートポリス。
チームの浮上、そしてモータースポーツの興隆を求めて、脇阪はもがき続ける。
(映像提供:GTA)
「MONDAY MOTOR SPORT」
フジテレビ系「FNN Live News α」内で放送
毎週月曜23時40分~
スーパーGT2024
10月19日(土)~20日(日)
第7戦 オートポリス
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