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【双極性障害】双極性障害の原因は?【精神科医が9分で説明】躁うつ病|ゲノム|心療内科

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0:00 (1)はじめに
0:16 (2)双極性障害(躁うつ病)について
1:44 (3)双極性障害の原因は?
3:45 (4)リチウムなどが効く理由は?
4:55 (5)双極性障害は遺伝しますか?
6:22 (6)双極性障害を防ぐには?
7:58 (7)まとめ

双極性障害(躁うつ病)の原因は何でしょうか?遺伝子(ゲノム)等様々な分野で研究は進められていますが、治療薬(リチウム等)の効く理由も含め、まだ未解明な部分が多いです。

ご質問「双極性障害の原因は?」について、精神科医が9分で回答しています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)

こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
府中こころ診療所 https://fuchu-kokoro.com
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↓詳しい内容はこちらです。

【ご質問】 双極性障害の原因は?

(1)はじめに
今回は「双極性障害の原因は?」というご質問についてお答えします。結論から申し上げますと、様々な仮説はありますが、厳密には今も原因は不明です。

(2)双極性障害について
双極性障害(躁うつ病)は、うつ(落ち込み)とその逆の躁を周期的に繰り返す精神疾患です。うつ病とは異なる脳の不調のメカニズムが想定されており、脳の状態を整える気分安定薬を治療と再発予防のために継続使用します。

双極性障害には4つの状態があります:
1. 躁状態:気分の高揚が目立ち、トラブルの危険がある状態
2. 軽躁状態:軽めの躁状態で、過度の活動によりさらに悪化する可能性がある
3. 軽うつ状態:軽めのうつ状態で、安定時にはしばしばこの状態になる
4. うつ状態:落ち込みが強く、うつ病と同様の状態

主な治療法としては、以下が挙げられます:
1. 薬物療法:主に気分安定薬を継続使用し、症状改善と再発予防を図る
2. 生活面での対策:生活リズムの維持や行動量の調整などで気分の安定と再発予防を図る
3. 福祉資源の活用:治療後も残った障害を補うために必要な福祉資源の活用を検討する

主に使用される薬剤には、気分安定薬のリチウムやバルプロ酸、抗精神病薬のオランザピンなどがあります。

(3)双極性障害の原因は?
双極性障害の原因は、厳密には今でも不明です。遺伝子(ゲノム)解析をはじめ、様々な面での研究が進められていますが、明確な原因の解明には至っていません。

研究の方向性としては、以下が挙げられます:
1. 遺伝子(ゲノム)研究:AKAP11遺伝子が統合失調症と双極性障害の双方に関与する可能性が示唆されています。
2. 脳画像・死後脳の研究:脳画像や脳機能の画像から双極性障害の特定を図る研究や、死後脳の形態面や脳内物質、遺伝子面などを解析する研究が行われています。
3. 細胞レベルでの研究:患者由来の血液などの細胞からカルシウム濃度など様々な特徴を解析する研究や、iPS細胞を作成して解析する研究も行われています。

現段階では、うつ病とは異なるレベルでの脳の不調が想定されています。環境的要素も発症に関与すると言われていますが、基本的には脳の不調が主な要因と考えられています。単独の原因は示されておらず、様々な要素が絡む「多因子疾患」と見ることが現実的です。

(4)リチウムなどが効く理由は?
リチウムなどの薬剤の作用機序については、様々な角度で研究されていますが、これも厳密にはまだ不明です。

1. リチウム:効果は示されているものの、どのように効くかの「作用機序」は厳密には判明していません。イノシトールなど様々な物質の影響の可能性が研究されています。
2. バルプロ酸:神経の興奮を抑える作用が気分安定に作用している可能性が言われていますが、厳密な効くメカニズムは判明していません。
3. 抗精神病薬:躁状態を抑える作用に関しては、ドーパミンなど統合失調症の興奮への作用と共通点が言われています。しかし、うつへの効果や再発予防の関連については、まだ不明点が多いです。

(5)双極性障害は遺伝しますか?
双極性障害は厳密な意味での遺伝性疾患には該当しませんが、家族での発症率は一般より高いとされ、部分的な影響があるとされています。統合失調症と同じくらいかやや高く、うつ病よりは高いと言われます。

遺伝要素を支持する所見:
- 一般的な双極性障害の発症率は約1%に対し、一卵性双生児では片方が双極性障害なら40%以上で双極性障害になるとされます。
- 兄弟が双極性障害の場合、関係ない場合と比べて発症率が4倍から7倍に上がるとする論文があります。

一方で、リスクがあっても実際には発症しない場合の方が明らかに多いこと、近親者に双極性障害の人がいると調査して見つかりやすいというバイアスの可能性、環境など他の要素の影響も考えられることから、「リスクは想定しながらも心配しすぎない」というのが現実的な対応と言えます。

(6)双極性障害を防ぐには?
双極性障害の予防は困難ですが、現実的な対策は確実な診断と治療継続です。

1. 早目の確実な診断:遺伝要素や脳の形態などは介入が難しいですが、早めの確実な診断と治療開始で症状改善を期待できます。特に双極性障害Ⅱ型の場合、うつ病との識別が難しいため、慎重な診断が必要です。
2. 治療の継続:双極性障害は安定した後も気分安定薬の継続が必要です。中断すると再発など、療養に大きな悪影響があります。病状が安定すると薬の継続の動機が薄れがちですが、必要性の理解や心理面の整理を通じて治療を続けることが予後改善につながります。

(7)まとめ
双極性障害の原因については、遺伝子や細胞など様々な視点から研究が進んでいますが、まだ原因は不明です。現実的には「多因子疾患」と見るのが現状です。治療薬のメカニズムも研究が進む一方で、まだ未解明な部分があります。遺伝要素は部分的で、統合失調症と同程度の影響が示唆されています。

双極性障害の予防は困難ですが、早期の確実な診断と安定後も含めた治療の継続が予後改善の鍵となります。特に双極性障害Ⅱ型でのうつ病との識別が重要な要素となります。

こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
府中こころ診療所(東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
こころ診療所吉祥寺駅前(東京都武蔵野市吉祥寺南町1-4-3ニューセンタービル6階、☎0422-26-5695)

#双極性障害 #原因  #ゲノム  #躁うつ病  #精神科医 

【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。

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