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心地よさを決める「中間領域」を再考する

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今回は心地よさを決める「中間領域」について解説します。

家を建てようと考えたとき、さまざまなことが気になりますよね。気になって悩んで、不安を感じることも多いと思います。でも、そもそも何が欲しくて家を建てようとしているのかを考えると、一つは「心地よさ」ではないでしょうか。「暮らしの豊かさ」も大きな要素だと思います。家は大きなお金をかけて手に入れるものなので、とても大切です。

しかし、いざ家づくりを考え始めると、どうしても目先のことに意識が向いてしまい、さまざまな要素を気にしすぎてしまうことがあります。そんな中でも、これまで多くの家づくりに関わらせていただいた立場としてしっかり考えておいてほしいのが、「中間領域」です。

例えば、「この建物はすごいな」とか、「心地いい空間だな」と感じることがありますよね。そうした建築には、内と外の境界部に建築家の工夫や、その人ならではの魅力が凝縮されて表現されています。そして、内と外がほどよく混じり合うことで、「中間領域」が生まれています。間取りや性能ももちろん大切ですが、それと同じくらい「中間領域」を意識した家づくりをしてほしいです。だからこそ家の計画を立てる際には、この考え方を大事にしてほしいです。

先日、私の師匠である松尾先生から「堀部先生のお話を聞く機会があったんだけど、素晴らしい内容だったからお裾分けします」と言われました。

堀部安嗣先生は、カリスマ建築家の1人です。その堀部先生が、『断熱・気密がきちんとした空間と、「半戸外」(家の外にありながら、完全な屋外ではなく、少し曖昧な空間のこと)のような「非断熱空間」の組み合わせが大切』とおっしゃっていました。

どういうことかというと、人の生活の大半は、冬なら暖かく、夏なら涼しい快適な室内で過ごしますが、たまに外の空気を「気持ちいい」と感じるような半戸外の空間がないと、人間のバランスが崩れてしまうということです。

この話の例えが秀逸で、「サウナ」の話が出てきました。サウナに入るだけではなく、その後に水風呂に入りますよね。そして、最近よく言われる「整う」感覚が訪れます。これは、人間の自律神経や副交感神経のバランスを整える大切な行為です。つまり、サウナと水風呂の相反する環境を行き来することで心身がリフレッシュされ、心地よさを実感できるわけです。

これは建築においても同じことで、断熱・気密が確保された快適な空間と、半戸外のような非断熱空間とのバランスが重要なのです。私自身、寒い冬が意外と好きです。暖かい室内にいるのも快適ですが、たまに外に出て冷たい冬の風を浴びると、「気持ちいいな」と感じます。逆に、夏にキンキンに冷房が効いた室内にいても外に出て、日差しを浴びながら汗ばむのも悪くないです。そういう瞬間こそ、まさに「整っている」感覚があるのではないでしょうか。この感覚こそが、建築における「中間領域」がなぜ必要かという答えだと思います。つまり、飯塚先生が言われた「快適な内と外の境界の空間」という概念を、堀部先生は別の言葉で説明されたと思います。

また今日、この話を取り上げようと思ったのには、きっかけがあります。それは私の友人で、京丹後市で活躍する富田くんという素晴らしい工務店の若き社長です。彼は私にも懐いてくれて、いつも楽しく家づくりの話をしたり、時には家族の相談をし合ったりする間柄です。ある日、「高気密・高断熱の家って、本当に大事ですね」と言われました。彼自身もその大切さを実感しながら仕事をしているのですが、ある時、ある住宅の見学に行った際の話をしてくれました。「その家は窓がすごく少なかったんです。たぶん高性能な住宅を目指して、窓を減らして断熱性能を高めたかったんでしょう。でも、実際にその家に入ってみたら、20分と居られなかったんです」。

「寒かったの?」と聞くと、「まるでペットボトルの中にいるような感じがしたんです」と表現しました。京丹後は自然が豊かな地域です。彼は謙遜しながらも「僕は田舎育ちなので、朝日の光を浴びて目を覚ましたいんです。夏も、決して京丹後が涼しいわけではないけれど、窓を開けて眠りたいんです。そういう家じゃないと、僕は嫌だなと思いました」と言いました。

そう話す彼が実際に建てた家を見せてもらったのですが、それがまた素晴らしい家でした。彼の考えがしっかりと反映された、心地よい住まいでした。そんな若い世代の工務店仲間の仕事を見て、「負けていられない!」とメラメラと闘志が湧くような気持ちになりました。そして、改めて思ったのです。「確かに、性能は大事。でも、それにも勝るとも劣らない大切なことが、家にはある」。

その瞬間、堀部先生の話が一気に頭をよぎりました。「これは大事なことだ。だからこそ、何度でも動画で話させてもらおう」。家づくりを考えている方には、ぜひこのことを頭の片隅に置いておいてほしい。そんな思いで、今日はこの話をさせていただきました。

その時、堀部先生は同時にこんなこともおっしゃっていたそうです。「U値だC値だと、住宅性能を評価するばかりで、断熱や気密ばかりにフォーカスすると、たった1℃の気温の変化や1%の室内環境の違いすら許容できなくなってしまう。設計者も、住むお客様も、ものすごく神経質に気にしてしまう。それは弊害」という問題提起をされていたのです。

だからこそ、お客様に本当に良い住まいを提供したいと考える設計者や施工者は、もちろん断熱や気密の重要性を理解しつつ、それだけではない「本当に大切なもの」をプロとして考え、提供していくべきなのだと思います。こうして振り返ってみると、飯塚先生も堀部先生も、究極まで物事を突き詰めて考えた結果、たどり着いた結論は同じだったのではないかと感じます。お施主さんが本当に欲しいのは、スペックではなく「心地よさ」や「豊かさ」です。それが達成された先に、本当の意味での「豊かさ」があるのではないかと考えた時、まったくその通りだなと改めて思いました。

なのでもう一度、「中間領域」を重要なテーマとして考えたいと思います。現在、高性能住宅を売りにしている会社の中には、室内と屋外をまるで「敵」と「味方」のように完全に分断している家もあります。しかし、人間は自律神経と交感神経のバランスの中で生きています。だからこそ、「内と外が混じり合う空間とは何か?」を、ぜひ考えてみてほしいのです。特に、家づくりに関わるプロのみなさんには、それをお客様に伝えていく努力をしていただきたいと思います。

建物は、内側から外へと開いていくべきものです。では、どこに開けばいいのか?「うちは周囲が建て込んでいて開くところがないんです」と思われる方もいるかもしれません。でも、例えば隣の屋根の方向は開けているかもしれません。そこに視線を抜く工夫をしてもいいのです。また、中庭という形態を取り入れるのも一つの方法です。近くに桜がきれいな公園があるなら、西側でもそちらへ開くのも良いでしょう。北側に美しい山があるなら、その景色を取り込む設計を考えるのも一つの選択肢です。もちろん、太陽の光の恩恵は大きいので、南側に開くのも有効でしょう。

そして、最も大きな境界線となるのが開口部、つまり「窓」です。この窓を「窓」として強く意識させない設計をすることで、屋外と室内が自然につながり、開放的な空間を生み出すことができます。私が以前設計した宮前モデルハウスも、現在公開していますが、そこでも「内側にいながら、外の庭と一体になるような空間」を作りたいと考えました。もちろん、飯塚先生や堀部先生の設計のように洗練されたものではないかもしれません。しかし、実際に設計し、想定し、試行錯誤を重ねた結果、「内と外の連続性は非常に重要だ」と実感しました。

だからこそ、こうした視点をぜひ大切にしてほしいと思います。

また、「奥行きのある縁側」はとても素敵な空間です。飯塚先生も「縁側には家具が置ける」というお話をされていて、「なるほど」と思いました。日本では「縁側」と言いますが、これはアメリカにも存在しています。西部劇などを思い浮かべてみてください。玄関の前に大きな庇(ひさし)があり、柱が立ち、1.8m(6フィート)ほどの空間が広がっていますよね。そこには、少女が乗るブランコが吊るされていたり、U字型のベンチやクッションが置かれていたり、映画のワンシーンでもよく登場する光景です。あの空間は「半戸外」であり、「中間領域」なのです。そして、それは人間にとって本能的に心地よい、居心地の良い場所でもあります。

例えば、クリント・イーストウッドがあの空間に静かに佇み、晩年を過ごしているシーン。または姉妹が無邪気に遊び、楽しそうに笑い合う思い出の回想シーン。日本人にとっての「縁側」が持つノスタルジックな情景と同じように、アメリカ人にとってもあの空間は大切な場所なのです。こうした空間がある家、良くないですか?もちろんお金がかかる部分もありますが、工夫次第でコストを抑えながら実現することも十分に可能です。ぜひ、そうした視点を持って、家づくりを考えてみていただければと思います。

そして、4畳半ほどの中庭があるだけで、そこに自然と団欒が生まれ、いわゆる「たまり」の空間になります。ただし、よくある「コの字型の2階の間がポコッと凹んだような中庭」については、注意が必要だと伊藤先生は言います。「あれは井戸みたいな中庭なんだよ」と。その表現がまたおしゃれだなと思いました。確かに、井戸のように落ち込んでしまったような中庭ではなく、開放感のある中庭をつくることが大切です。

そのための黄金比があります。例えば、囲んでいる屋根の階高を「1」とするならば、中庭の広さは「1.5」くらいあると良いそうです。実際に、「この中庭、いいな」と思うものは、大体その比率になっていることが多いのです。この黄金比を知っているだけで、空間づくりに対する勇気が湧いてくる、そういうものだと思います。

また、「外を感じる土間を家の屋内に取り入れると良い」とも言われています。石やモルタル、タイルといった一般的に屋外で使用される床材を、あえて室内に使うだけで空間の雰囲気が変わります。さらに、室内と屋外で床仕上げを統一すれば、床が連続することで、より一層「内と外が混じり合う」感覚が生まれます。これは高級なリゾートホテルでもよく見られる設計手法です。決してカッコつけるためではなく、人間の自律神経や副交感神経のバランスを整え、心地よい空間をつくるための工夫なのです。

もし、家のリビングがそういった「整う空間」になったら、最高じゃないですか?まさにそういうことなんです。

ですから、「中間領域」という言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、これから本格的に家づくりを考える方や、既存の家をリフォームしようという方には、ぜひ一度、「我が家に中間領域をつくるとしたら?」という問いを立ててみてほしいと思います。そうすることで、家づくりにまた一つ深みが生まれるのではないでしょうか。

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