森鴎外の『山椒大夫(さんしょうだゆう)』は、中世の日本を舞台にした悲劇的な物語で、親子の別離と再会、そして人間の罪と赦しをテーマにしています。
【あらすじ】
平安時代末期、安寿と厨子王という兄妹は、母とともに都を目指して旅をしていました。しかし、途中で人買いにだまされ、兄妹は**丹後国(現在の京都府北部)**の悪名高い豪農、山椒大夫のもとに売られてしまいます。母は一人佐渡へ流され、家族はバラバラになります。
山椒大夫のもとで、安寿と厨子王は奴隷のように酷使されます。成長した安寿は弟の厨子王を逃がすために自ら犠牲となる決意をします。安寿は山椒大夫の部下たちに捕まり、処刑されてしまいますが、その間に厨子王は脱出に成功します。
厨子王は逃亡後、都へ向かい、最終的には国司(地方を治める役人)としての地位を得ます。力を得た厨子王は山椒大夫のもとへ兵を送り、安寿の仇を討ち、奴隷となっていた人々を解放します。
その後、厨子王は母を探しに佐渡へ渡ります。母は長年の苦労で盲目になっていましたが、厨子王との再会によって幸せを取り戻します。物語は親子が再会し、新たな人生を歩むところで幕を閉じます。
■主題と意義
『山椒大夫』は、人間の苦しみや家族の絆、そして困難の中でも人間が持つ希望や正義感について深く描かれています。また、鴎外はこの物語を通じて、権力者の非道と庶民の苦難を批判しつつも、最終的には赦しや再生の可能性を示唆しています。
森鴎外の代表的な作品の一つで、古典的な語り口ながら、現代にも通じる普遍的なテーマを持つ物語です。
【森鴎外】
森鴎外(1862–1922)は、明治から大正時代に活躍した日本の文豪であり、医師でもありました。本名は**森林太郎**。島根県津和野に生まれ、幼少期から学問に秀で、東京大学医学部を首席で卒業。陸軍軍医としてドイツに留学し、最新の医学や西洋文化を学びました。
文学活動では翻訳をはじめ、小説、評論、歴史作品など幅広いジャンルで活躍しました。代表作に『舞姫』『山椒大夫』『高瀬舟』などがあり、人間の内面や社会問題を鋭く描きました。また、歴史を題材にした作品も多く、独特の視点で歴史解釈を示しました。
鴎外は文学だけでなく、陸軍軍医総監として医療界でも重要な役割を果たし、医学と文学を両立させた希有な人物です。その生涯は知性と人間性に満ちており、日本近代文学史において欠かせない存在です。
【チャンネル】
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