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【発達障害、ADHD治療編】メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチン、インチュニブ(グランファシン)について、全部説明し、比較検討します【精神科医益田/早稲田メンタルクリニック】

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早稲田メンタルクリニック院長として働く、現役精神科医益田裕介があなたの疑問に答えます!

アトモキセチンの動画
https://youtu.be/3cXOJY74MCM

インチュニブの動画
https://youtu.be/iW7w-e7qA3E


twitterでも質問に答えています。
https://twitter.com/wasedamental

HPはこちらです。
https://wasedamental.com/

ブログもこちらです。
http://wasedamental.hatenadiary.jp/

ADHDは脳の機能の発達、成熟に偏りがあり、症状が現れると考えられています。

脳の機能? 偏り? こんなことを言われると、困ってしまいますよね
脳はひとつの臓器ですが、部位によって機能が異なります。
例えば、脳をひとつの大きな組織だと想像してみてください。部位によって働きが異なるというのは、複数の部署があるようなイメージです。そして、1つの組織と言えど、大きな組織になると各部署が、奇妙で複雑な政治的駆け引きをしつつ、絶妙なバランスをとるように、脳というのも各部署で異なる主張をしつつ、なんとなく統合をとっているものです。

こころはひとつ? ドライブは複数ある? 
どうして心は矛盾を抱えているのでしょう。性欲、食欲、睡眠欲だけでなく、お金や様々な欲望が各々に主張し、よく分からないまま突き動かされるのは、このように複数の部署があり、かならずしも一枚岩ではないからです。
難しく、イメージできないと思いますが、最新の脳科学的には、自我はその動きをコントロールできているようで、できない。演劇をみている、観客のようなもののようです。

ADHDの場合、
物事を順序だてて行う、課題の優先順位をつける、などの実行機能が低下しています。これは前頭葉における、ドパミンとノルアドレナリンが不足しているためと考えられています。
また、将来の報酬を志向する力(遅延報酬系)と関連している、線条体や側頭葉におけるドパミンやノルアドレナリンも不足していると考えられています。

ちなみにストレスによって、ドパミンやノルアドレナリンは増えます。普段少ないと、それらが過剰に反応し、過覚醒となります。
これも、アルコール乱用や衝動性不注意、過覚醒からくる集中困難、不安の原因と考えられています。

薬の作用機序

○コンサータ(メチルフェニデート)の場合
線条体、側坐核におけるドパミンの再取り込みを阻害します。ドパミンが増え、神経系が活性化されます。
前頭葉におけるノルアドレナリン、ドパミンの再取り込みが阻害されます。ノルアドレナリン、ドパミンが増え、神経系が活性化されます。
(各脳の部位によって受容体の分布が異なったり、作用の仕方が違うので、「どうしてドパミンだけ?」とか疑問になると思いますが、そこはそういうものだと思ってください)

薬は飲んだその日から効きます。
偽薬との比較などの成績を加味すると、3剤の中で最も効果があると言われています。

コンサータは12時間かけて、ゆっくりと放出されます。最高血中濃度に達するのに7時間かかります。急激に血中濃度が高まると、快楽を伴い、依存になりやすいですが、コンサータの場合その心配はありません。

まずは外側にある薬の成分が溶け、その後、内部にある成分が徐々に出てくる構造です。

1日18㎎で開始し、18~72㎎で維持をする
価格は18㎎344円 27㎎381円 36㎎410円
資格のある医師でないと処方はできません。

副作用は食欲低下、動悸、寝つきが悪いなどです



○アトモキセチン(NRI)
前頭皮質における、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。ノルアドレナリンが増え、神経系が活性化されます。側坐核には作用しません(ノルアドレナリントランスポーターが少ないため)。
もともと抗うつ薬として開発された経緯もあり、同じように作用するまで2週間以上かかります。神経伝達物質の増量により、遺伝子発現が変化し、受容体合成が減少し(受容体が減り)、神経新生が促されると考えられています
(では、SNRIではどうしてADHDに効果がないのか? 臨床実験結果ではばらつきがあり、利用されるものの、詳しくは調べられていない。サインバルタの場合、セロトニンの作用が強く、ノルアドレナリンが弱い:うつ病では前頭前野だけではなく、偏桃体や海馬、視床下部、側坐核、線条体…と様々な部分での機能低下をおこしている)

効果はコンサータに劣るという報告がある一方、劣らないという研究報告もある。優れているという報告はほとんどないです。

コンサータと違い、24時間作用すること(効果が切れる実感がないこと)や資格がいらないこと、ジェネリックがあり値段が安いことなどが利点であります。
1日40㎎から開始し、80~120㎎で維持をする
10㎎ 112円、40㎎ 159円(いずれもジェネリック)

副作用
食欲低下、頭痛など

○インチュニブ(グアンファシン)
前頭前皮質に高密度に存在するアドレナリン受容体(α2A受容体)を刺激し、アドレナリン様の作用をすることで、神経系を活性化させます。
副作用として、
α2B受容体は視床に局在し、鎮静に関与している。これも刺激してしまうことがある
α2C受容体は鎮静や低血圧に関与し、これも刺激してしまうことがある

もともと血圧の薬として開発されていた経緯があり、この上記の副作用もイメージしやすいかもしれません。

効果は2剤に劣り、第3選択肢となることが多い。

1日2㎎で開始し、4~6㎎で維持する
1㎎411円、3㎎543円


副作用
低血圧、傾眠:使いにくい印象あり


参考文献
ストール精神薬理学エッセンシャルズ(第4版)510-542p 監訳:仙波純一
今日の治療薬2020 882-884p

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