今回は若山牧水の秋と冬に詠まれた短歌をご紹介します。
・吾亦紅(われもこう) すすきかるかや 秋くさの さびしききはみ 君におくらむ
・とこしへに解けぬひとつの不可思議の 生きてうごくと自らをおもふ
・山奥にひとり獣(けもの)の 死ぬるよりさびしからずや恋の終りは
・かたはらに秋ぐさの花かたるらく ほろびしものはなつかしきかな
・秋、飛沫(しぶき)、岬の尖(とが)りあざやかにわが身刺せかし、旅をしぞ思ふ
・ふるさとの尾鈴の山のかなしさよ 秋もかすみのたなびきて居り
・石越ゆる水のまろみをながめつつ こころかなしも秋の渓間(たにま)に
・行(ゆ)き行(ゆ)くと冬日(ふゆび)の原にたちとまり 耳をすませば日の光きこゆ
・茂りあふ松の葉かげにこもりたる 日ざしは冬のむらさきにして
・この冬の夜(よ)に愛すべきもの、薔薇(ばら)あり、つめたき紅(くれない)の郵便切手あり
#若山牧水#短歌