レーザー科学研究所 https://www.ile.osaka-u.ac.jp/ja/index.html
高強度場科学グループ http://lf-lab.net
大阪大学レーザー科学研究所で博士号を取得した松尾一輝さん(研究当時 大阪大学大学院理学研究科物理専攻博士後期課程在籍),佐野孝好助教,長友英夫准教授,藤岡慎介教授らの研究チームは、同研究所の激光XIIレーザーで生成した高温なプラズマに強磁場を加えるとプラズマが変形するという,新しい機構を世界で初めて実験で観測し、理論・シミュレーションを駆使することで,この現象の詳細を明らかにしました。本成果はレーザー核融合によるエネルギー発生の効率化に資するものです.同時に,今回発見した機構は,宇宙で起こっている,超新星残骸から広がる衝撃波との衝突による星雲の崩壊現象との関連も指摘されています.
2021年8月に米国の国立点火施設(NIF: National Ignition Facility)において,レーザーのエネルギーの0.7倍に相当する1.3 MJ(メガジュール)の核融合出力に成功したという大きなニュースが世界中を駆け巡りました.近い将来,NIFにおいてレーザーのエネルギーを上回るエネルギーが核融合反応で発生することが期待され,究極のゼロエミッションエネルギーといえる核融合エネルギーの実現に向けた研究・開発がますます加速すると期待されています.今後,レーザー核融合研究の主題は,如何にして小さなレーザーエネルギーで核融合エネルギーを発生させるかという,核融合エネルギー発生の効率化へと移行していくと予測しています.核融合エネルギーの発生には,1億度にも達する超高温プラズマが必要です.非常に強い磁場を使って,レーザー核融合プラズマを保温するという手法は,効率的レーザー核融合の方法の一つです.本研究成果は,強磁場によってプラズマを保温することは可能だが,保温が強すぎるとプラズマが大きく変形してしまうことを示しました.この変形が起こる条件を理論的に考察し,保温の為の磁場の強さには最適値が存在することを明らかにしました.
本研究グループは、高出力レーザーで大電流を駆動しコイルに流すことで,ネオジム磁石の約200倍の200テスラに達する強磁場を発生させました.この強磁場下でプラズマを生成し,プラズマ中で時間発展するプラズマ崩壊現象を測定することに成功しました.本成果の発展研究は.フランス ボルドー市にある世界最大級のLMJ-PETALレーザー装置における学術研究枠の実験課題として,日本からの提案としては初めて採択されています.本研究成果の,レーザー核融合の点火,並びに,新しい実験室宇宙物理学への応用に向けた研究が進むと期待しています.本研究成果は、米国物理学会が発行する「Physical Review Letters」誌に掲載されます.
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Opening: Creative Minds